ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー


<現在、おかけになった電話番号は電波の悪いところにあるか、電源が入っていないためかかりません。>

「ちょ・・・ちょっとーー!!どうなってるのよ!!マネージャー!!」

あれから、電話をかけていたのは瑠璃子で携帯に向かって怒り、

「荷物まとめたら、すぐ追っかけてくるんじゃなかったのーー!?一体いつまでかかってるのよーー!!」

軽めに暴れてイライラしている。それを影で隠れてみてる新開は

(無駄だな・・・彼女は来ないよ。我々、宝田一味のグルだから・・・)

自分が宝田一味その二のため、絶対にそんなことを瑠璃子には言えない。

「監督・・・。」

瑠璃子をのぞき見してる新開の後ろから呼ぶのは蓮で、

「おお、宝田一味その一。」

彼をみると新開は蓮をそう呼ぶ。

「・・・。」

黙り込む蓮だったが、場所を移動し、新開と一緒に椅子に座ると

「本気なんですか・・・?松内瑠璃子と『あの子』、役を競わせて監督のイメージに会うほうを起用するって。」

「本気だよ。」

本気なのかどうかと聞くと新開は本気だとあっさりと答える。

「そんなあっさり・・・しかも勝手に。制作発表でだって、松内瑠璃子の出演、大きく取り上げられてたんですよ。」

「ああ~~大丈夫大丈夫!監督と役者のソリがあわなくて、役者が途中降板するなんてよくあることだから!!」

笑って気にしないとのんきに言う新開に蓮は

「そんな・・・じゃあ、社長に頼まれた事はどうするんですか・・・?あの子の自分の思い通りにならなきゃなんでも放り出す癖を

改善するのに協力してほしいって頼まれたんでしょう?」

そう話すと新開は

「だぁ~~~ってあの子使ったって俺、得することな~~んにもないだも~~ん。」

「だも~~んって、あなた子供みたいに・・・」

子供のようなことをいうので蓮は困った顔をした。

(おかしいわ・・・今まではプロデューサーだってなんだって、私が『やめる』って切り札を出したら誰だって私のご機嫌を取りにきたのよ!?それが何!?あの監督は!!)

その頃、自分のマネージャーと電話が繋がらない瑠璃子はかなりの動揺をしていた。

『まーまー瑠璃子ちゃん。わかったよ、じゃあできるだけ君の気にいるようにしてあげるから。』

彼女がやめればみんながこういったのに、新開は

『そうだね、背格好もよく似合ってるし、衣装が合わないこともなさそうだし、ひとつやってみるか!!』

『本当ですか!?』

うーんと唸った後、笑顔でそう言ったため、キョーコもその言葉に嬉しそうに言った。

思い出して、顔を青くしながら瑠璃子はみんなのところに行こうとすると偶然にスタッフの会話を聞く。

「なんか、面白くなってきたなー、お前、どっちにつく?」

「俺はツナギの子かな。だって松内むかつかねー?我がまま放題でさー。それにあれだろ?昨日来なかった理由も『特注、日除けパラソル』ができてこなかったからだろ?馬鹿にしてるよなー。」

「まあ、確かにくだらねー理由だよな。そんな理由でさんざん待たせといて詫びいれるのは監督にだけ。俺達ぺーぺースタッフなら、ともかく、主演の蓮や他の共演者にもなしだよ。何様だつーの。この業界、必ずしも売れてる人間が強いわけじゃねー

って一度思いしらせてやったほうがよくねー?」

「おっ、サンセー。」

そんな会話を聞き瑠璃子は

(・・・もしかして、今私ってすごく、すごく、すごくやばくない・・・!?)

ようやく自分の危機感を覚えた。

一方、キョーコはメイクさん二人と着替えるために部屋に案内されていた。

「すごいわよね。このチャンス本当に『モノ』したら、あなた、とんでもないシンデレラガールよ。」

案内されている途中、メイクさん一人がそう言うと

「シンデレラ。」

その言葉にキョーコはどきゅんと胸をときめかせる。

「だって、すでに配役が決まってた瑠璃子ちゃんから役を奪うんだもん。それだけでかなりマスコミのいいネタ。あなた、いきなり一躍有名人よ。」

そして、それを聞いたキョーコは

(な、なんてこと・・・!?瑠璃子ちゃんの挑戦を受けた事にそんな特典が!!キレた勢いで受けただけなのに・・・!!と言う事は・・・本気で食わせていただくわ!文字通り、ハイエナのようにね・・・!!今やブラックサイドの私が野放しになったからにはもう、誰にも止められないわ!!

〔瑠璃子ちゃんなんて意地悪だーー!!〕

〔わがままだー!!〕

〔人の純情ふみにじっといてーー!!〕

〔明日のオテントー様が拝めると思うんじゃないよーー!!〕

そう考えると怨念キョーコが好き勝手にいい始め、

(私、やるわ!!このチャンス、絶対に『モノ』にしてみせる!!)

キョーコはそう決意した。