ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
「いや・・・どうも、送還してくれてありがとう。いや~~帰ってこなければ、どうしようかと思いあぐねていた所だったんだよ。」
(そんな風には見えなかったけど・・・それに困ってたなら探せばいいのに・・・。)
笑って礼をいう新開にキョーコは心の中でそうつっこむとその後ろにいる蓮に気付いて、彼が何か口パクで言っているため、
「『病菌以下、なかなか異常』?」
口元読んでキョーコは言うと
「違う、『病院行かなかったな亀少女』といったんだ。」
蓮はちゃんと言い直す。
「亀じゃありません!左足を直にガンガン使わなければ歩けます!!」
未だに亀扱いされてるキョーコは蓮に言った。その瞬間、桂をまた被った瑠璃子に後ろから押され
「何よ!!たいした怪我でもないくせに!!敦賀さんに気遣ってほしいから大げさにしてるんでしょ!!いやらしい!!」
瑠璃子は大いに大きな声でいう。一方キョーコはいきなり押されたから、左足を思い切りに床に打ち付けた。
「おい、大丈夫か?」
蓮はそう聞き、キョーコが痛さで震えてるために新開はあたふたしている。そこに社もきた。
「本当は坂道で転んだのも計算ね!あなた、敦賀さんが好きなのよ!!」
その瑠璃子の言葉にキョーコは
「それは・・・貴方のほうでしょう・・・?それに私が・・・いつ『敦賀蓮』が好きだなんていったのよ・・・。」
〔『敦賀さんが待ってる』って聞いて手のひら返すようにいそいそ動き出したくせにーー!!〕
本当は口で言ってしまいたいが、かわりに怨念キョーコ二匹が言ってくれ、
【だめよ~~!!落ち着いて静まって~~!!せっかく欠けた感情を取り戻しかけてるのに~~!!】
どこからか、純粋キョーコ二匹がきて、その怨念キョーコ二匹を元の場所にへと戻した。
「瑠璃・・・やりすぎだぞ、謝りなさい。」
社と蓮から事情を聞いた新開は瑠璃子を見て言う。蓮も瑠璃子をみた。『やりすぎだ』と言うような目で。
震える瑠璃子。だから、目を反らしたくて違うところを見たがみんな同じような目で見ていた。
(何よ・・・みんなであの子の味方な訳・・・・!?)
そのため、瑠璃子はぷんっと後ろへと顔をキョーコたちから逸らした。
「・・・すまなかったね。」
瑠璃子の態度に新開が変わりに彼女に謝る。
「いえ・・・」
(一先ず、ブラックな私は落ち着いたし・・・でも、次なにかあったら無理かも・・・。)
疲労困憊でぐったりしながらもキョーコは答える。
「・・・。」
そんな様子を見ながら新開は黙り込んで何かを考えているようだった・・・。
そして、ようやく撮影は始まり、今は瑠璃子の役である、蝶子の登場シーンの撮影中。
(でも・・・それだって仕方ないわよね・・・。だって理想のプリンセスだと思ってたら、とんだ傲慢クイーンだったんだもの・・・。
やっぱり御伽噺のお姫様は御伽噺の中でしか生きられないのよ・・・。)
瑠璃子の本性を知ってしょんぼりと落ち込んで、立てるキョーコ。
「お嬢さん・・・お座りになりませんか。」
すると蓮がパイプ椅子を持ち、キョーコの隣に立つ。
「座りません・・・。」
でも、キョーコはそれを断り、
「どうして優しくするんですか!?」
(私のこと嫌ってるくせに!!)
蓮にそう言うと
「おや・・・?人間、怪我人と病人には無条件に優しくできないのか?」
(・・・なるほど・・・そういわれると・・・。)
彼の言葉に一瞬納得しそうになったがすぐに首を振って
「あなたが私のそばにいると瑠璃子ちゃんがヒステリー起こすでしょう。離れてくださ「もーーーーー!!」
蓮から離れようとした時、瑠璃子の大声が響いてキョーコは大げさに驚いた。
「またやり直し・・・!?登場するだけなのに!!何回やり直すの!?」
だから、瑠璃子のほうを見ると瑠璃子は新開に訴えていた。
「ちゃんと俺の理想どおりにできるまで。言っただろ、君は旧家のお嬢様だ。指先までそれを意識して立ち振る舞ってくれないと。」
「だから、いわれたとおりに遣ってるわ!!」
「違うね。まだ素の君が着物きて歩いてるだけだ。」
瑠璃子は言われてるとおりにやってると言うが新開は駄目だしする。
「もう一度始めから。立つときは背筋を伸ばして、顎を少し引く。体の重心が頭の天頂部と足の真ん中を通るように。」
新開の言葉にキョーコは女将の言葉を思い出す。
『そう・・・それが基本姿勢やで、キョーコちゃん。』
思い出して、背筋に力が入って、より綺麗な姿勢なる。そんなキョーコを蓮はちらっと少し見ていたが
瑠璃子と新開の会話は続き、
「もーー嫌ーー!!何度やっても監督はOK出してくれる気なんかないくせに!」
「何・・・!?」
「監督は私が嫌いだから、そうやって私をいじめてるのよ!!」
(監督あの子の味方したくせに・・・!!スタッフだって!!敦賀さんだって!!)
瑠璃子はついにある言葉を言ってしまう。
「私は演技なんて素人なのよ!俳優みたいにできるわけないじゃない!!私、こんな仕事降りる!!」
その言葉を耳にしたキョーコはどこかの糸が切れた気がした。
(私がいなくなってみんな困ればいいのよ。困って直にお願いしてくれれば考え直してあげる!!)
瑠璃子はそんなこと知らずにそう思いながら、
「同じ素人でいいなら、私じゃなくてもいいじゃない!!そうね・・・『あの子』なんかいんじゃない?ポイント稼ぐためなら何でもするわよ!!」
そう言ったとき、みんな目を思い切りに開けて唖然とした。
何故なら、蓮のとなりにいたはずのキョーコが瑠璃子の前にいて、見えない天狗の鼻を切ったから。
「・・・そんなこと言って・・・どうなってもしらないわよ・・・?あのくらいなら、私は楽にできるんだから・・・。」
低い声でキョーコはそう言い、
「・・・な!」
「折角、あなたがくれたデビューのチャンス・・・その芸能界への招待状・・・私いただくわ。」
くすっ・・・と自信に満ちた笑い方をしていって、その周りには5~6匹の怨念キョーコがいた。