ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー



「瑠璃・・・!」

彼女が歩き出すのを見たマネージャーは一安心し、

(ええええ~~~!?)

キョーコはそれが信じられなかった。

(どうして~~!?どうして『皆さんが待ってる』じゃ駄目で鶴レンガ・・・じゃない『敦賀蓮が待ってる』だと動いちゃうの!?イヤー!!もっと粘ろうよー!!瑠璃子ちゃんが『敦賀蓮』主演の映画に出る事になってただんて・・・知ってたら、こんなお仕事受けなかったのに・・・。)

どうやら、彼女は瑠璃子が蓮主演の映画に出ることは知らなかったらしい。彼が映画に出ることは知っていたが。
それに久遠が自分を芸能界では嫌うことを選んだのを知ったキョーコはできるだけ『敦賀蓮』には会いたくなかった。

意地悪されるのが目にみえてるし、それにキョーコも『敦賀蓮』を嫌うことを選んだから。

(ああ・・・会ったら絶対に嫌味言われるわ・・・。)

先のことを考えると身が重くなったキョーコ。すると瑠璃子が急に持っていた鞄を落として

「もうヤぁ~!!疲れた!!足が痛くて歩けない~~!!」

思い切りにお尻を地面につけて泣き出した。

(え・・・疲れたって・・・確かに坂道ではあるけど・・・五分も歩いてないじゃん!!どうして!?)

さすがにそれをキョーコは不思議で仕方なかったが、

「私・・・子供の頃から、激しい運動できないのよね・・・。」

瑠璃子が涙を浮かべながら言ったその言葉に胸を撃たれ、キョーコが起こした行動は

「あはははは、快適快適~~!!」

おんぶだった。だが、身長158センチ、体重45キロの少女と巨大な傘と鞄をおんぶするのはキョーコにはとても重く

(お・・・お・・・重い~~人、一人背負っての坂道・・・!!ああ・・・!!腕がしびれる・・・足が震える・・・!!腰が、腰が外れそう・・・!!)

全てが石のように思えるのだ。まさに地獄。

(でも、踏ん張るのよ!!私が、私が、私が瑠璃子ちゃんを守らなきゃ・・・!!)

「!!」

(私・・・今・・・)

そう思って進むなか、キョーコはあることに気づいた・・・。


「始めまして、松内瑠璃子です。お待たせしてすみませんでした。今日からよろしくお願いします。」

ロケ場についた瑠璃子はある男性に頭を下げる。

その男性は34歳という歳で名監督と呼ばれている新開誠士監督。

「ああ・・・よろしく。」

そっけなく答える新開。

「それじゃあ瑠璃子ちゃん、こっちへどうぞ。衣装に着替えてください。」

「あ、はい。」

女性スタッフにそう言われて瑠璃子は

「失礼します。」

新開にもう一度頭を下げてからそのスタッフと一緒に歩き出した。

「なんだ・・・話に聞くよりいい子じゃないですか、ねぇ監督。」

「・・・。」

その側にいた男性スッタフはそう言うものの、新開は黙ったままだった。

(げーー!!外も古くて汚かったけど、中もモーレツに古くて汚~~い!!こんなトコでロケすんの!?嫌だ、冗談でしょ!?

なんか世に知られていない新しい生命体とか芽生えてないでしょうね!!)

ロケの建物をみながら、瑠璃子は心の中で文句をつける。

「そういえば、瑠璃子ちゃん。」

「は、はい!?」

文句をつけてる途中に話しかけられて瑠璃子は慌てて返事する。

「今日、変なパラソルさして一人で歩いてきたけど、まさか下からずっと歩いて来たの?マネージャーさんは?」

そう彼女の言うとおり、瑠璃子は一人であの巨大な傘をさしながらここについたのだ。

スタッフの質問に瑠璃子は数十分前のできことを思い出す。

『うう・・・っ』

ついに耐え切れなくなったキョーコはその場に前へと倒れこみ

『きゃああ!!』

おんぶ状態の瑠璃子も当然に倒れた。だた、キョーコがクッションになってるから痛くはないだろう。

『ちょっと!!何よ、いきなり!危ないでしょーー!!』

『ご、ごめんなさい・・・あ、足をくじいて・・・い、今、立つから・・・』

息を切らしながらキョーコはそう言うが、

(亀・・・。)

瑠璃子がそう思うぐらい、のろく動いている。そのため瑠璃子は坂の上をみて

(きっと、あの坂を上がったくらいね・・・ロケ現場・・・。しょうがないわね・・・。)

そう考えると立ち上がって

『いいわ・・・ここからは私、自分で歩く。』

歩く事を決めたがそれを聞いたキョーコは

『駄目よ~~!!瑠璃子ちゃんは病気なんだから~~!!』

そう言いながら必死に立つといっているが立てそうではない。

(誰がいつ病気だなんていったのよ・・・。)

キョーコの言葉に瑠璃子はつっこみながら、

『いいから、あなたはそこにいてよ。上行って誰か呼んであげるから。』

(私は早く現場について休みたいのよ!)

本音ではこう思いながらも、キョーコにそう言い、

『瑠璃子ちゃん・・・ごめんね・・・。』

キョーコは本当にすまなそうに謝った。

(まったくよ・・・。おかげでかかなくてもいい汗かいちゃったじゃない。役に立たないんだから!!)

だが、瑠璃子はその思いを踏みにじるように、

「そっかー途中で車がエンコしちゃったんだー。それでも歩いて来ちゃうなんてえらいわねー。」

「え~~そんなの当たり前ですよ~~だってものすごい使用で昨日の『入り』を延ばしてもらっちゃってるんだもの~~。」

「ああ、さっきのパラソルね。」

「ええ、特注なんです。だって私って美白で売れてるトコもあるでしょ?ちょっとでも日焼けしようもんなら今のスター生命、絶たれちゃう気がして~~。私にとって紫外線より恐いもの、この世にないんですよね~~。」

「まあ・・・大変ね~~。あんな大きなパラソルもって歩くの重いでしょう?」

「ええ、でも自分のスター生命、守るためのものですから!!」

「偉いわね~まだ若いのに~。やっぱりそれくらい努力しなきゃ売れっ子アイドルにはなれないのね~~。」

(そうよ・・・だから、才能もないくせに事務所にかじりついて、おまけに人に媚びを売ってお情けでデビューしようなんて、私

そんな、あさましい人間大っ嫌い!!身の程知って早く消えればいいんだわ!!)

キョーコが消えてしまえばいいと思っていた