ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー


その頃、キョーコはまさかショータローが恋人に喧嘩を売ったことなど知らずに

「ん~~~・・・。」

唸っており、その手には雑巾があって、ガムがあった場所がきれいになっていた。

「憎きガムを跡形なく始末したのはいいけど・・・なんか不細工・・・。」

だが、そこだけ以上に綺麗になっていているため、納得してない様子。

「・・・せめて、もうちょっと形になるように磨いてみよう・・・。」

そう思って磨いてみたが、キョーコは驚愕した。

形になるどころか、一人が入れるぐらいの円ができてしまって、みっともなくなってしまった。

最早、言葉を失うキョーコ。そのせいで周りの声などまったく聞こえなくなって、ふん!闘牛もうに鼻を鳴らすと

猛烈に磨き始めた。それから二時間後が経ち、キョーコは額を腕で拭いて

「はぅーーー我ながら綺麗に磨けた!!」

スッキリ爽快したような晴れた顔をした。その結果、廊下の一通りがすごく綺麗になっている。

だが、そうなると凝り始めるととことん凝りだすB型のためか、

「う~ん・・・でも、ここまでやると、艶がほしいな・・・。」

そう考え始めて、ちょうどそこに一人の男性が通りかかる。

「あ。あの、すみません~~。」

男性に話しかけ、あるものを借りる。

「うふっふぅ~~よかったワックスあって~~!!」

借りたのはどうやらワックスらしく、キョーコはモップでワックスをかけている。

「ビューリヒォーって気持ちい~~い。」

鼻歌を歌いながらキョーコはしていたが、ついに問題が起こる。

「ぐおっ!!」

後ろでズゴンと鈍い音がして、キョーコは振り返ると男性が倒れている。

「え・・・?」

何が起こったのかわからないキョーコ。だが、すぐに分かる事になる。

「きゃああああ!!」

女性が叫んで座り込み、

「!!え・・・あ・・・大」

キョーコは大丈夫かと女性に聞こうとすると後ろで

「うお!!なんだ後藤、一体どうしたあああ!?

どうたら、倒れた男性は後藤というならしく、それを心配した社員が近寄ろうとすると彼は滑ったように倒れた。

「ああ!!」

驚くキョーコ。

「こっ腰があああああ!!」

腰を強く打った男性。

「足首があぁ!」

こっちは女性が足首をひねって

「あ!?どうしたお前ら、何があああああああああああああ!!

騒ぎに気付いた中澤がきたが、彼も廊下へと踏み入れて被害者となる。

「ああーー!!主任しっかりーー!!」

被害者となった中澤をみて、足首ひねった女性が叫ぶ。

そんな様子にキョーコは顔を青くさせ、口を大きくあけて、頬に手を当てている状態。

「な・・・なんだこの廊下は・・・!魔の廊下かぁーー!!

思わず、感想を述べる中澤。

そして、廊下には『危険!足元注意!!すべります!!』の看板が置かれた。

「なにこれ。」

「魔の廊下なんだって。」

「なんでも後藤さんと岩下さんが病院送りになったとか。」

「むうっ。なんて恐ろしい・・・。」

それから、しばらくその廊下は魔の廊下として恐れられたというーー。


「頼んでもいない君の仕事のおかげで怪我人多数、その一帯だけすべりがよかったら誰だって不意をつかれて転ぶだろう。

と・・・君はカケラにも考えなかったのかね。」

そう言って怒る中澤。キョーコが魔の廊下を作り出したために、中澤の頭の後頭部にはタンコブができてしまっている。

「すみません・・・」

(・・・だって・・・ちょっと綺麗になったから、もっと綺麗にしたい欲望に駆られて・・・。)

中澤に怒られて、キョーコはしょんぼりと落ち込んでいるが、はっきりいって自己満足で動いたためなので自業自得である。

「その廊下を歩く人の身になって考えてたら、こんな事にはならなかったと思うが。」

中澤はキョーコからスタンプケースをかり、スタンプの押す準備をする。

「はぁ・・・。」

(考えたんだけどな・・・綺麗になったらみんな気持ちいいかなって・・・。)

キョーコらしく、考えた結果がこれなのだが、結局アウトとなってしまった。

「君はラブミー部としての趣旨がまだよくわかってないみたいだね。」

そう言って中澤は『もーっと頑張りましょう 10点』と書かれたスタンプをスタンプ帳に押した。