ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
そんなこの世で一番憎い馬鹿男、ショータローとは言うと
「尚、お疲れ様。車回してくるから待ってて。」
「あいよ。」
マネージャーと思われる美人なお姉さんから、缶ジュースを受け取る。
「早く戻ってきてな、祥子さん。」
「はいはい。」
じゃあねと祥子と呼ばれた女性は彼から離れていき、
(あ~~やれやれ、次はどこに行くんだったけ・・・参るよな~~プライベートの時間、全然無くて・・・。)
缶ジュースをあけると
「あ、見てみて。不破君よ!!」
「あーうそっ。こっち向かないかな~~。」
女の子たちの視線を感じながら
(たく・・・・辛ぇよな、人気者は。)
なんて思いながら、もっと奥のほうでざわざわと声がしたため、耳を澄ますと
(・・・ん?なんだなんだ?はるか向こうまで俺の噂か・・・?)
そう思ってそっちを見たが、誰もショータローなんて見てない。
(って・・・あれ?)
「あの俺、こっ・・・ち・・・。」
そのため、自分を指差して言い始めたが、ある人物に目がいく。
(・・・!!あ、あれは・・・つ・・・敦賀蓮!!)
その人物とは、今や日本で抱かれたい男ナンバーワン!!誰もが認める日本一「いい男」の『敦賀蓮』だ。
ちなみにショータローは若きながら7位に入っているが、ナルシストの彼にとってはそれが納得できなくて、『敦賀蓮』を
一方的にライバル視している。
(来たぁーーー!!ついにこの時がーー!!同じ業界に居ればいつか遭遇する時が来ると思っていたんだ!!そして俺は
決めていた!!奴に出会ったその時には・・・!!)
「てめーの時代はもう終わった!!これからは俺の時代だ、敦賀蓮ーー!!てめーより、俺のほうが若くてカッコイイことを思い知るがいいーー!!」
《本当だ、君みたいな絶世の美少年がいたなんて!!》
(と・・・奴に俺のすばらしさを見せつけ、奴のプライドをうち砕いてやると!!)
想像を膨らませ、ショータローはそう考えるも、実際そう上手くいくわけがなく、
蓮はテレビでみるより圧倒的で、靴抜きで身長190センチ。トップモデルも歯切りする脚の長さ。そして超自然的に漂う、
ゴージャスオーラ。それに気圧されるショータロー。ちなみに彼の身長は靴抜きで177.8センチであり、8の部分はプライドである。
(はっ・・・!!な、何を気圧されてるんだ俺・・・!!しっかりしろ!!俺は天下の不破尚だぞ!!俺は今に奴を越える男だ!!大丈夫!!俺はカッコイイ!!)
その自信はどこにくるのやら、ガシャーンと何かを倒し、その音と共に周囲の人間は唖然した。
なぜなら、ショータローによって倒れた灰皿が蓮の前を邪魔たてをしたからだ。
ショータローを視界に入れる蓮。そのマネージャーもショータローを見る。
「・・・悪い・・・俺、脚が長いからよ、あんたの存在に気付いてたら、もっと注意を払ったんだけど。」
軽く睨みながら言うショータロー。その瞬間、空気が凍てつく。
(ケ・・・ケンカ売ってる・・・!!)
(不破が蓮に喧嘩売ってるぞ!!)
(こ、これは・・・いくら敦賀君でもつかみ合いにはなるんじゃ・・・。)
(私達、なんてデンジャラスなシーンに遭遇してしまったの・・・!?)
その場に居合わせた人たちは己がこの場にいたのを呪ったが、次の瞬間、蓮が柔らかく笑って
「わかるよ。よくやるんだよな。予想外に予想外のものをひっかけたり、ぶつけたりする事。」
にっこりと笑ってショータローにいい、
(こいつ・・・!!マジか・・・!?)
ショータローはそう思ってると蓮が灰皿のポールのほうを足のつま先を使ってちょっと蹴り上げ、
「!!ふぬっ!」
灰皿を立たせるとショータローのほうに倒れてきそうだったために慌てて受け止める。
「散らばったゴミ、ちゃんと拾っとけよ。」
そう言い、目で制してから、蓮は歩き出し、
(く・・・っ。くっそおおおおおーーー!!余裕ぶっこきやがってーー!!)
ショータローは敗北感を味わう。その場面をみた女性たちは蓮の大人の余裕にくらくらと酔った。
「・・・しかし・・・この業界であんな大胆に蓮に売ってきた奴、初めてだよ。よくああ軽く流したな。俺でもムっとしたのに流石というか、なんと言うか・・・。」
蓮のとなりを歩くマネージャーが彼にそういうと
「そりゃ、俺は『温和』だし。それにもう、売られた喧嘩をいちいち買う歳でもないからな。」
蓮はすましていうが、マネージャーは
「本当に『温和』な人間は歳関係なく、いちいち喧嘩も買わないし、喧嘩を売られる生活もしないよ。お前、実は芸能界入る前は手のつけられない荒くれ者だっただろう。会った時からそんな気がしてたんだ。」
彼の過去を予想したものを話すが蓮はちょっと怒ったように
「失礼な。意外に真面目でしたよ。」
と言うとマネージャーは諦めたのか、
「まあ、あえて追求しないけどさ。」
そう言い、それを聞きながら、蓮はちょっと後ろを振り返って
(不破尚・・・ね。)
少し前のことを思い出していた。