ファースト・ラブ
ー無性に与えられる愛を君へ・・・ー
その頃キョーコは、ちらっと自分の前に特技を披露していた受験者をチラ見する。
60番の受験者はクラシックバレエをやっていたために、専用の靴を解いていた。
「・・・。」
(・・・みんな・・・おしゃれな特技ばかりだな~~。)
そう思っているとキョーコの頭の中に浮かんだ言葉が
『所帯臭いのよーー!!』
奏江の言葉で
(何よ・・・そう言うモー子さんだって大してお金のかからない特技だったじゃない・・・っ。)
そう思ったが、
「・・・。」
(まあ・・・すごくはあったけど・・・。)
「61番の方、までですか!?」
「あっ・・・!は、はい!!今行きます!!」
(悔しいけど・・・私と同じで女優になるのが夢って言っていた人に相応しい特技だよね・・・。)
彼女の実力は認め、
(・・・私はどこまで通用するだろう。何人もの人がため息つくような特技を披露したその一番最後で。)
そう考えながら、舞台へと出た。
(お、最上君、出てきた。)
キョーコが出てきたのを見て、ローリィは彼女を見たが、皆、え・・・とある意味目を奪われた。
「な・・・っ。何あれ・・・!!」
顔を引きつかせる奏江。
何故なら・・・キョーコは右手に包丁を左手には何故か大根を持っていたからだ。そして何故か裸足で仁王立ちで。
そのため、すぐに受験者たちに笑われるキョーコ。
「・・・っ。ま・・・また・・・」
それをみた奏江は震えだし、
(・・・なんであの子はああ所帯臭いのよ・・・!)
キョーコに怒りを覚える。
「八百屋の真似でもするのかな。」
「そうなんじゃないか?」
主任二人はキョーコをみてそう言い、椹は混乱していた。
(な、なんで包丁と大根なんだ・・・!?)
と・・・。あの社長もどう反応していいのか困った表情をしている。
笑われているキョーコは顔が真っ赤だが、
(お・・・おちつけ、おちつけ。もうしばらくこんな大技してないんだから・・・これ以上動揺なんかしたら失敗・・・。)
そう思ったところで大将がこの包丁を貸してくれたことを思い出す。
「・・・。」
包丁を見つめ、
(そうだ・・・失敗なんかするもんか・・・。大将のお守りだ・・・!!よし!)
<61番、最上キョーコ。>
自分の名前を言うと大根を投げてから、包丁を横にスパスパと動かし、
見えない速さで大根を三等分にし、中心部分の大根を掴んで
<大根で薔薇を作ります!!>
宣言をして、皆がえ・・・と思った瞬間、キョーコは包丁を使い、
「ぅやああああああああああああああああああ!!」
すごい速さで大根を薄く剥いていく。
「こ・・・これは!!」
「桂剥きっ。桂剥きだーーー!!」
それを見てる主任はそう言いながら、机から立ち上がる。
「一人前の板前にならないとできないと言われる、あの桂剥きをやってのけているーー!!」
(そうよ、その通り。これができる板前は一人前だと言われるわ!!だから私は小さい頃から人知れず、血の滲むような特訓をしていのよ!!痛んで捨てられた大根使ったりして!!別に板前になりたいからじゃないわ!!一年の殆どをショータローの家に預けられていた私。ショータローの両親に厄介者扱いされたくなかったからよーー!!)
そして、桂剥きは終わったのだが、薔薇というより葉牡丹になってしまった。
「す、すみません。薔薇じゃなくて葉牡丹になってしまいました・・・。」
(意地になって剥きすぎちゃった・・・。)
顔を真っ赤にし、座り込んで、キョーコは剥きすぎに反省する。
だが、ローリィたちは拍手をして、すばらしいといってくれる。
(もしかして・・・私、インパクト残せてる?)
それにキョーコは期待して、なんとく椹をみると椹は親指を立て、それをみたキョーコは表情を明るくさせた。