商業はおのれの万能を誇示するように 華美や便利を飾りたて
その服装にならえとばかりに ひとの心を剥ぎとってゆく
ひとはこの領主の怒りに触れて仲間はずれになるのを恐れ
水やみどりのあった所を 小さな財貨で埋めてゆく
その報酬はじっとするだけの場所であり
それを大きくしたければ さらに高価な血を売らねばならず
よりよい土地へゆこうとすれば 厖大な戦場が待ちうけている ー
公害のほかにはなんの持ち合わせもない狂気の尖兵たちが 貪欲なあつかましさで追いたてるまで その場所にも
都電はのどかに走っていたのだ
石橋千濤詩集「ひとつの場所から」より抜粋
わたしたちはもう充分に知りすぎた
人のつくった戦場で 昨日の勝利が意味もなく
今日は敗北とならなければならない塵労の明け暮れを ー
そしてまた あらゆるものからの被害者が
同時にあらゆるものへの加害者となる物質界の因果律を
そして勝者のときも敗者のときも
そこで得たものの あまりのおなじさと小ささとに驚いている
それらはほんとうに存在する塵ひとつよりも軽いのだ
「旅のしたくを」より抜粋