単なる思い出話である。
もう20年以上前の話。
当時、仲の良かった友達が、ある時
ミクシーやらない?
と言ってきた。
ミクシーって何?
と私が尋ねると、彼女は
SNSだよ
と言った。
当時、mixiというSNSの
プラットフォームが
出始めたばかりだった。
私は、ミクシーもSNSも
どのようなものか知らなかった。
友達を誘って入会させる
のだというから
ねずみ講
みたいなこと?
彼女は何か困っているのかな?
もしかしたら、
何かのノルマを課せられているのかも
と私は考えた。
しかし、高額な商品を買わされるとか
怪しい契約をさせられるとか、
そういうことではなさそう
もし、私がそのミクシーとやらに
入会することで、彼女が助かるなら
ここはひとつ協力してあげよう!
と考えた。
変な宗教団体だったら
すぐに撤収するつもりだった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/0e/d2/j/o0409060015456941939.jpg?caw=800)
ところがmixiは、始めてみると
デジタル上で書いた日記を
不特定多数に公開するというもので、
(つまりはブログ)
その日記を見た人は
見た痕跡(足あと👣)が残るので
書いた方も、誰に見られたかを
確認することができる。
コメントを残すこともできた。
そこで誰かとお友達になると、
その誰かのブログの表紙の友達欄に、
お友達になった人の
アイコンがずらりと並んだ
どういうものかはだいたい分かったが
何が楽しいのかは分からなかった。
私はしばらく、私を誘った友達が
どんな風に楽しんでいるのか眺めた。
ブログに書かれていた彼女の生活は
彼女の実態よりも、やや大げさに
楽しいことだけが書かれていた。
彼女を知らずにブログだけを読んだら
毎日が楽しい!
キラキラ女子
に見えたことだろう。
そして、お友達欄に
お友達アイコンをどんどん増やして、
毎日、順番に、
そのお友達のページを訪問し、
内容をチェックし、
ちょっとしたコメントを残していた。
それは彼女の毎日の
ルーティンワーク
のようだった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/a8/8c/j/o0809037915456941940.jpg?caw=800)
私は、その様子を見ていて
牛舎
を思い浮かべた。
酪農場で、牛がずらりと並んだ牛舎に
おじさんが、毎日、順繰りに
エサを与えていく。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/ec/82/j/o0639048015456941942.jpg?caw=800)
おぉ~ウシ子、いっぱい
乳を出すんだぞ~
ウシ江、もっと食って
もっと太れよ~
ウシ美~、おめぇは
最近、毛艶がいいな~
こんな風に、
一頭一頭に声をかけて。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/28/4e/j/o0735041715456941943.jpg?caw=800)
mixiという名の友達牧場。
そして、私も彼女の
友達牧場の
家畜のひとり
なんだと気づいた。
見渡せば、mixiの参加者は
それぞれ、みんな牧場主で、
自分の牛を世話したり、
あちこち出向いて新しい牛を
スカウトしたり、
いかに自分が素晴らしい牧場主であるか
をアピールしていた。
みんな誰かの飼い主で
みんな誰かの家畜だった。
私は本当に心の底から
深い深い深い溜息がでた
私は、だんだん
mixiにログインしなくなった。
誘ってくれた友達が
最近mixiやってないじゃん
どうしたの?
と言ってきた。
私は
飼われたくないの。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/d9/d3/j/o0473034615456941949.jpg?caw=800)
その友達は、小学校、中学校で
いじめられていて、
友達がひとりもいなかったと
ずっと前に話していた。
だから、彼女なりに
必死で
友達を大事にしている
つもりだったのだろう。
責めるつもりなんてないよ。
誰だって寂しい。
誰だって自分を認めて欲しい。
SNSは、寂しさと承認欲を
同時に満たせる便利なツールだ。
私は家畜扱いされて不愉快だけど
何も感じてない人の方が多いし、
日本人は飼われるのが好きだよね。
でも私は誰からも
飼われたくないし
誰も飼わないし。
私、めんどくさい人間なんでね、
私なんかとはつき合わない方がいいよ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/36/e2/j/o0223020615456941950.jpg?caw=800)
あれから、Facebookや
TwitterやInstagramや
色んなSNSプラットフォームができた。
彼女は今どうしているかな?
とたまに思う。
きっと今も何処かの友達牧場で
所有する家畜の数を
誇っていることだろう。
幸せならそれでいいんじゃないかな
単なる思い出話である。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240628/17/kirinomeisai/27/3a/j/o0538042215456941952.jpg?caw=800)