その小包は、

いつも、

何の前触れもなく届く。

 

親戚のおばさまが、

庭などに、

たわわに季節の実りがなると、

わが家の事を思い出すようで、

 

箱にぎっしり詰め込んで、

送ってくれるのだ。

 

それは、

枇杷だったり、

ブドウだったり、

紫蘇だったり、

蕗のとうだったり……。

 

その季節折々の、

自然の恵。

 

せっかく送っていただいたものを、

無駄にはしたくないと思うのもあるし、

 

ありきたりの日常に、

変化をくれるので、

 

毎回、

送っていただいたものは、

有り難く、

余すことなくいただいている。

 

 

春の便りで、

蕗のとうを天ぷらにしたら、

お皿に山盛りできて、

 

子どもたちは、

一口かじって、

苦いって驚いて、

 

お箸を付けたものは、

食べるには食べたけど、

二つ目に箸が伸びず、

 

残りの山は、

親が一生懸命食べることに……。

 

翌日の朝食に、

パパと頬張って、

 

その日の昼食に、

私が一人で頑張って、

 

やっとの思いで、

全部たいらげたなんて記憶は、

忘れられない思い出だ。

 

 

別の春に、

蕗のとうが届いたときは、

全部を天ぷらにしないで、

 

刻んで他の食材と混ぜて、

かき揚げにしてみたり、

 

蕗のとう味噌などの、

メニューのレパートリーを、

増やしてみたり、

 

あれやこれやと、

新しいことにチャレンジしては、

子どもたちに、

味見をさせて反応を見て……。

 

なんてことも。

 

 

そうこうしているうちに、

 

ある春に、

「春の味だね」

「これを食べると、春って感じするわぁ」

なんて、

 

急に、

一丁前のことを言い出して、

 

大人と同じ量を、

ぺろっと食べたから驚いた。

 

 

一回食べて嫌がった時点で、

嫌いなものと、

遠ざけていたら、

 

こういうことには、

ならなかったと思うので、

 

何か届いた!!

わーい♪

 

ってノリで、

何度も味わうチャンスが、

できた結果じゃないかと思う。

 

 

 

毎年、

その季節になると、

欠かさず送られてくる。

 

という感じでもなくて、

 

おばさまの気まぐれで、

届くので、

 

こちらも、

あてにせず、

待ちもせず。

 

届いた時に、

有り難くいただいて、

お礼状を送る。

 

そのお礼状も、

次第に、

ありきたりの文面に飽きてきて、

 

どうやっていただいたとか、

子どもたちの反応なんかを、

 

思ったままに、

あれこれ書くようになってきたら、

 

面白い!!

本を出したら?

 

なんて、

とっても喜んでくださって、

今に至る。

 

 

あるとき、

渋柿送るから、

干し柿にチャレンジしてみない?

って、言われて、

 

干し柿の作り方を、

ネット検索しながら、

チャレンジしたこともあった。

 

カビないように、

風通しの良いところに吊るしたり、

度数の高いお酒を吹きかけたり、

 

手間暇かけて作ってみたら絶品で、

とっても良い経験をさせてもらった。

 

渋柿から、

干すことで、

どんな風に変化してゆくのか?

 

作業をしながら、

子どもたちと、

実験魂がむくむくと湧いてきて、

 

渋いとわかっている時期から、

定期的に家族で味見して、

味の変化を楽しめたのも、

作ってみたからこそできた体験だ。

 

 

不意に届いた小包を開けながら、

何日ぐらいで食べ切らなくちゃいけないか?

何にしていただこうか?

 

なんて、

あれこれ思いを巡らせるのは、

なかなか楽しい。

 

 

お店に並んでいるのみたいに、

キレイなものじゃないから、

若い人には合わないかしら?

 

なんて、

心配されていることもあるようだけど、

 

季節の便りとして、

味わう分には、

何の問題もないし、

 

加えて、

 

無農薬の安心ほど、

ありがたいことはない。

 

子どもたちにとっても、

実るもの全てが、

お店に並んでいるような、

整ったものばかりじゃない。

と、理解することは、

とても大切なことで、

 

これ以上に学べるチャンスはない。

と思えてならないので、

 

本心から、

全く気にすることなく、

有り難く、

楽しんで、

味わわせていただいている。

 

日々のやりくりに追われて、

わざわざ買わないようなものが、

送られてきたりもするので、

食卓の彩りにもなって、

助かっていることもある。

 

 

たくさん実ったものを前にして、

 

うちじゃぁ食べきれない。

あの家は食べ盛りを含めて、

5人で食べてくれる!

送ってあげよう!!

 

と思い出してくれる、

おばさまの期待には応えられているのかな?

 

 

猫の手も借りたい、

歳近い3人子育て。

 

だったからこそ、

いただける愛情には、

存分に甘えさせていただいた。

 

お礼の気持ちを伝えに、

近くに行った際に、

ご挨拶に寄らせていただいたら、

 

子どもたちに、

庭になっているものを、

あれもこれもと、

収穫させてくれて、

持たせてくれる。

 

そんな体験をさせてもらったからこそ、

送られてくる小包の中身にも、

愛着が持てる。

 

子どもに季節を感じさせてくれて、

自然の味を、

たっぷりと味わう機会を与えてくれた。

 

 

目には見えないものかもしれないけれど、

確実に、

わが家の子どもたちの、

心の豊かさの、

肥やしとなってくれている。

 

本当にありがたい限り。

感謝の気持ちでいっぱいだ。