高校生のうちの息子。

 

赤ちゃんの時に、

この子は、

これからどんな子に成長するのかな?

なんて、

あれこれ思い描いた夢は、

 

喋らないし、

空気読めないしで、

 

成長とともに、

ぽろぽろ手のひらからこぼれ落ちて、

 

不安いっぱい。

悩みいっぱい。

 

とにかく元気でいてくれれば良い。

毎日、無事に学校に通っていれば良い。

 

そう思うところで

なんとか母親としてのバランスをとって、

今に至る。

 

 

親の心配はさておき、

良くも悪くも前向きな息子は、

自分がそんなに心配されているなんて、

夢にも思わない。

 

清く正しく思いやりを持って、

毎日頑張って生きている自分の将来が、

暗いはずはないって信じてる。

 

人のために動ける行動力はピカイチ。

 

良いところはちゃんとあるんだから、

誰かに認められて、

彼に居場所ができたら良いな。

 

それが、親としての切なる願い。

 

 

 

人の助けになることが好きな息子に、

軽い気持ちで持ちかけたこと。

 

それは、

妹と一緒に今年の市民ミュージカルに出ないか?

ということ。

 

昨年の作品を見ていて思ったのが、

 

出演者に女の子が多くて、

男の子が少ないな。

 

中学生の娘が大人として、

軍服着て軍隊の隊列シーンに駆り出されている。

 

これだったら、

男の子ってだけで、

1人でも多くウエルカムなんじゃない?

 

思春期の気恥ずかしさもあって、

なかなか首を、

縦に振ってくれなかった息子だけど、

 

応募〆切のギリギリになって、

人助けの気持ちが少しだけ上回って、

「分かったよ、やるよ」

って、ぽろっと言ったから、

 

あら、良いのね。

って申し込んだ。

 

 

 

配役を決めるオーディションがあって、

 

そして、

配役発表の日。

 

なんと、

うちの息子がやることになったのが、

 

主役。

 

なんか、

演出の先生曰く、

今年の物語の主人公のイメージに、

ぴったりだったらしい。

 

その年の作品がどんななのかなんて、

こればっかりはタイミングと縁だ。

 

それと、

歌が上手いって、

オーディションで先生方が、

前のめりになっていた、って聞いたけど、

それは、

本当なら、

親も気づかなかった、

隠れた才能だ。

 

 

初心者だから、

通行人とか、群衆の一部に

あれこれ多用されるだろう、

くらいにしか思っていなかったので、

 

配役発表を聞いて、

びっくりしすぎて、

天地がひっくり返るんじゃないか、

って思った。

 

まぁ、

 

どんな形であれ、

これまで、

劇という劇で、

みんなが嫌がる、

悪役ばかり引き受けてきたうちの息子が、

 

認められて、

選ばれて、

 

活躍のチャンスをもらえた。

ということは、

紛れもない事実。

 

こうなったら、

指導者たちはみんなプロなので、

この子でいけると感じてくれた、

勘を信じて預けるのみ。

 

きちんとやり遂げることができれば、

滅多にできる経験じゃないのだから、

大きな自信になって、

彼の人生にとって、

大きな財産になってくれるかもしれない。

 

そんな風に思えてならない。

 

 

もちろん、

実際にやるとなれば、

 

どんな役の子だって、

本番が近づくと、

プレッシャーを感じて、

ピリピリになってくる。

 

それが主人公だなんて、

どれほどのプレッシャーになるのやら。

 

本人はきっとそこのところまでは、

まだ、分かっていなくて、

 

妹と私だけ、

大丈夫かなぁ?

って、

心配をしている状態。

 

きっと、

本番までの数ヶ月、

わが家は、

地獄を見ることになる。

 

今のところ、

自分はできるって、

自信を持っている子だから、

 

頑張って長台詞を覚えたり、

練習の日程を何度も確認して、

準備してって張り切っているから。

 

できるだけ、

このテンションが続きますようにって、

見守っている。

 

 

親がこれまで、

いろいろなことを諦めて、

とにかく無事に大人になれば良いと、

 

それでいて、

元々持っている良いところは、

せめて失くさないようにと、

思いながら育ててきた子が、

 

見る人が見れば、

選んでもらえるようなこともあるのだと、

奇跡に近い可能性を、

経験することができた。

 

ずっと、

そんな日が来ないか、

期待しないで待っていたので、

 

こんなことあるんだね。

って、

家族みんなで、

このチャンスを喜んでいる。

 

 

偉いのが妹。

 

自分がライフワークとしているところに、

ひょいっと入ってきた兄が、

主役を手にすることになって、

 

自分はずっと努力してきているのにって、

拗ねたりしないのかな?

って、

心配して見守ってきたけど、

 

この作品の良し悪しを決める、

主人公の兄を、

一番サポートできるのは自分だって、

すぐに切り替えて、

 

アドバイスやら練習相手やら、

実に良く動いてる。

 

本当に気持ちのいい子たちに育っているのが、

私の自慢だ。

 

 

今までの公演以上に、

神経をすり減らすことになりそうだけど、

 

後に、

この子の人生にこんなことがあったと、

楽しく語れる日のために、

 

感じられること、

できるだけ感じながら、

過ごしてゆきたい。