性欲について考えることはあるだろうか。昨今では多様性、価値観などを耳にする機会も増え、何かと理解している気分になっているだろう。この本はそんな考えを一蹴するような内容であった。性欲には様々な種類があり、「ストレート」、「ホモ」、「レズ」などが一般的だ。そのような者にとって世の中は暮らしやすいと言える。私たちは異性を愛するものが多く、それが普通として世の中に罷り通っているからだ。何不自由なく性を堪能することができる。罪に問われることもなく。そんなことは至極当たり前のこととして私たちの前に鎮座している。しかし、性の対象がそれ以外の人に対して今の世の中は生きやすいと言えるのか。「小児性愛者」は小児でしか興奮できない。私が女性にしか興奮できないように。そんな他とは異なる性癖をもった人の世の中での生きづらさを切実に書き記したのが「正欲」だ。社会に上手く馴染めず、生きづらさを持った彼らが向かう先に何があるのか。作品を是非読んで旧態依然な考えをアップデートしてほしい。