仲間が三人に増えて、まるで頃合いを見計らったかのようにそれはやってきた。
「なんなんだいきなり・・・!」
先程まで通行人も少なく静かだった道にモンスターが現れ、初めは一匹だったそれがあっという間に増えて、何匹ものモンスターがマリー達に襲い掛かって来たのだ。
黒魔道士の青年はマリーの前に立ち彼女を庇いながら戦うが、倒しても次から次へと現れる敵に彼のMPも限界寸前だ。
「おい、ケン!そっちは平気か!?」
敵から目を逸らす訳にはいかないのでケンが見えないが、マリーの前方を自分が守っているので、おそらく後方を守っているであろうケンに話しかける。
「あとちょっとだ!もう少しで焼ける!」
「そうか!」
と返事をして青年はモンスターと向き合ったが、あれとケンの言葉をもう一度頭の中で繰り返してみる。
もう少しで焼ける。おかしい、彼は剣士の筈なのに。それとも魔術も使えるのか?しかし、なんだか後ろから良い香りがしてきた。
「・・・ケン、この匂いは何だ?」
「ああ、レバーだ」
「そうか、レバーか」
それを聞いた途端、MPが減るのを心配して攻撃力の弱い魔法ばかりを使っていた黒魔道士の青年は、突然破壊光線とも言える強力な魔法で前方の魔物を蹴散らした。
そして自分の後ろに居るマリー、いやその奥のケンに力の限り思い切り怒鳴った。
「君は一体何をしているんだ!マリーの後ろを守っていたんじゃないのか!?」
「いや、レバー焼いてたんだよ」
「ああ全く、君という奴は・・・!」
「まあまあ、黒魔道士さん」
黒魔道士がケンに殴り掛かりそうになるのを、マリーが優しい口調で止めた。
「モンスターを倒してはいませんが、ケンも私達からモンスターを遠ざけてくれたんですよ」
マリーの話によれば、ケンはレバーを焼いてモンスターを引き付けて、その肉を遠くへ投げて敵をこちらから引き離したのだという。
「戦わずに解決するやり方か。・・・悪かったな、ケン」
黒魔道士はケンを攻めた自分を恥ずかしく思い、そしてケンの平和的な姿勢に関心していた。
「いいってー、モンスター寄せ付けちゃったのも俺だし」
「・・・・・・うん?」
一瞬、ケンが何を言っているのかわからなかった。
「いやなんかさ、最初にモンスターが出てきたときに戦い終わるまでしばらくかかるかなと思ってレバー焼き始めたんだよ。そしたら匂いにつられて次々に敵が来ちゃってさあー」
まいったね、と笑うケン。しかし黒魔道士の青年は笑ってはいなかった。
だがケンは更に蛇に足をつけるように、自分はいつもは平和的な戦いなどしないが、今回は剣を取り出すのが面倒くさかっただけだなどと話す。
それだけで、黒魔道士が怒鳴るには充分条件がそろっていた。
「つまり君が原因だったのか!いらないことばかりして・・・!」
「なんだよ新入りのくせに!お前に迷惑かけたってのかよ!?」
「その通りだから言っているんだ!だいたい、マリーから聞いたが君も今日仲間になったそうじゃないか!何が新入りか!」
黒魔道士は一度でもケンに関心してしまったことを後悔していた。
MPもHPも限界ギリギリだというのに、彼への怒りで青年は今なら世界をも破壊できそうだった。
「何だよ!名乗りもしねえくせに同期ヅラかよ!」
「あ、私もお名前知りたいです」
急に話題が変わり、今まで黙って見守っていたマリーも話に参加してきた。
特に聞かれもしなかったので黒魔道士の青年は忘れていたが、二人ともまだ彼の名前を知らなかったのだ。
「え、ああ・・・シロウだ」
「シロウですね。改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ」
先程と同じ様ににっこり笑うマリーに、シロウは顔が熱くなるのを感じた。
だがその和やかな雰囲気をぶち壊したのが問題児、ケンだ。
「ぷっ!こんなに真っ黒な服着てるくせにシロウかよ!?お前なんてクロで充分だよ!」
「さっきから君はなんなんだ!僕に恨みでもあるのか!?」
「マリーに近づく男はみんな大嫌いってだけだよ!」
とケンがいきなりシロウの頬にパンチをいれると、お返しにシロウもケンを殴る。そうして殴り合いが始まってしまうかのように思われたが、マリーの一声でそれは治まることとなった。
「あちらの村に宿があるみたいですよ。今日はそこで休みましょう」
「はい!」
「ケン!?・・・あ、いや僕も賛成だ」
日も暮れかかっていたので、宿に着いた三人は早速寝ることにした。
「二部屋しか借りられませんでしたね・・・」
宿に着いた時間が遅かったため、この二部屋を除いてあとは全て満室だった。
「いいよ、俺達が二人で寝ればいいし」
「そうですか?」
ケンの優しい言葉にマリーは嬉しくてぴょんと跳びはね、その拍子に彼女の白いフードが脱げてふわふわした可愛らしい髪が現れた。
「ぶふう!」
間近でそれを見たケンはとっさに後ろを向いたが、それでもマリーの顔が頭から離れなくて、まるで滝のような鼻血をボタボタと垂らしてしまった。
「おい・・・」
さすがにこれはマリーには見せられないと思ったシロウが、すぐさまハンカチを渡す。
そしてそのハンカチを鼻にあてたまま、再びケンはマリーと向き合った。
「ごめんごめん。じゃあ行こうか、マリー」
「ちょっと待て」
そのままマリーの肩を掴もうとしたケンを、シロウが止める。
「君は僕とだ」
「えー、俺男に興味無いし・・・」
「僕だってない!だから君がマリーと同室だったら危ないんだよ!」
そんな言い合いをしているうちに、マリーは小さな声で「おやすみなさい」と言って片方の部屋に入って行ってしまった。
マリーが居なくなったことにケンとシロウが気付いたのは、宿主が二人に騒ぐなと怒りに来たときだった。
1日目 終わり
お久しぶりで、すいません。
1→1日のつもりで書いていきます。
詩人が出るのはいつになるのか・・・



