八宮の一周忌になりました。薫の君は募る思いを姉の

大君おおいきみに伝えますが、大君は妹の中の君

を薫の君にすすめ自分はその後見になりたいと望みます。

 

天空で源氏と柏木が言い合っています。

「それ見たことか薫も男よ。初めから大君目当てじゃった。

俗聖も何もあったもんじゃない。むっつりスケベじゃ」

 

「何ということを。理性的にすべてが円満になるように心を込めて

対処しようとする結果の自然な成り行きでしょうが?」

 

「大君にてこずったのが失敗じゃな。力ずくでもよかったのにな。

柏木のように。な?かしわぎ?」

 

「なんということを?自らも周りもすべて納得させて事を運ぶ、

誰人たりとも傷つけてはならぬという慈悲の表れです!」

 

「慈悲が大君の我に負けたのじゃ。臆病な女のわがままに負けたのじゃ」

「姫の誇りを守るためです。でなければそこらの女どもと一緒です」

「どうせもてあそばれて捨てられる。面倒見てもらえるだけでも幸せと思え!」

 

「おんながわるい?」

「薫もわるい!人は変わる。変わるには勇気がいる。大君には勇気がなかった

んじゃ。死ぬ気になれば何でもできたはず、意気地なし!薫もじゃ!」

 

「薫は思いやりのあるやさしい子です」

「そうかな?今に見ていろ、自分の勇気のなさを変な策を用いて望みを達成

しようとする。賢者ぶった小賢しい本性があからさまになっていくぞ」

 

薫の君が廊下の欄干に寄り添って匂宮と話をしています。

今は住まいが近くでよくこうして話しに来ます。

 

「近いうちに置き去りにせず、連れて行っておくれよ。薫の君」

「ええ、それはもう。しかしそう簡単ではございませんよ」

「そんな。君だけが頼りなんだ。この身分じゃそう簡単には出かけられない

ことは君もよく知ってるだろう。うらやましい」

 

「わかりました何とかしましょう。人里離れた山里に」

「みめ麗しき姫二人。ふふふふふふ」

 

二人は意味ありげに笑います。

天空で源氏と柏木が渋い表情で顔を見合わせます。

 

「それみたことか」

「いえいえ・・・・ふーむ?」