亡国のイージス(小説版) | ある意味、恋してるⅡ

ある意味、恋してるⅡ

北村一輝さんと米米CLUB(石井竜也含む)についての追っかけ記事だったはずが、最近記事内容に脈絡がなくなりました(今は真田広之さんや世良公則さんにも傾倒中)。
というわけで、今後は思いのままに津々浦々・・・笑




【講談社出版公式サイトより】
よく見ろ、日本人。
これが戦争だ。
現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏に設定されている。海上自衛隊護衛艦《いそかぜ》。その弾頭、通常に非ず。
江戸川乱歩賞受賞第1作、戦慄の書下ろし巨編。

自らの掟に従い、15歳で父親を手にかけた少年。
1人息子を国家に惨殺され、それまでの人生をなげうち鬼となった男。
祖国に絶望して叛逆の牙をむく、孤独な北朝鮮工作員。
男たちの底深い情念が最新のシステム護衛艦を暴走させ、
1億2千万の民を擁する国家がなす術もなく立ちつくす。
圧倒的筆力が描き出す、慟哭する魂の航路。


👆真田広之主演映画
「亡国のイージス」
の原作本を読了致しました📖
文庫本上下巻で、2巻合わせて1100頁を超える大作なので、若干時間は掛かりましたが、読み出したら頁を繰る手が止まらず、一気に読み終えてしまいたくなるだけの内容の面白さがありました照れ

海上自衛官を主役に、最新鋭のイージス護衛艦(1999年当時)の中で繰り広げられるテロとの戦いを描いたエンタメ作品なので、自衛隊や護衛艦装備、兵器等に関する難しい専門用語が出てくる部分には、少し読みにくさがあるものの、ストーリーそのものに難解さはありません。
それに、映画やアニメ作品を彷彿とさせる劇的な描写が多いので、読みながらキャラクター達の行動が映像として頭に浮かんでくるような臨場感を味わうことも出来ますアップ

その辺りの描写力は、
「機動戦士ガンダムUC」
等の原作小説を手掛けたこともある福井晴敏氏ならではの力量が感じられますねウインク

それだけに、改めて2005年公開の映画版と比べた時に、
「あ~・・・やっぱりあの映画は、小説の映像化作品としては、不出来なんだよなぁ~ダウン
と認識せずにはいられませんでした🤦

あの映画は映画で、ヒロユキのファンとしては独自に楽しめるポイントもあるから、あまり悪く言いたくはないんですけどね・・・。
ヒロユキ演じる仙石恒史先任伍長って、ノンキャリ叩き上げなので、エリート士官ではないものの、情に厚く、若い隊士からも慕われている。
つまり、理想的な頼れる上司という感じに設定されていて、特に内面に屈託を抱えているという描写はないじゃないですか?←いや、観てない人はわからんがな😅
なので、ヒロユキ先任伍長は、どこか爽やかで、一点の曇りもなく正しい・・・って感じさせるわかりやすさと格好良さがある。

でも、原作の先任伍長は、護衛艦「いそかぜ」の主的な存在として上官・下士官共に信頼は厚いものの、仕事ばかりを優先してきたツケから、長年連れ添った妻には見限られ、航海の直前に別居を言い渡されてしまう・・・。
そういう、ちょっと一家の主人としては情けない部分を持った人物として描かれている。
それに、そもそも自衛官になった動機には、子供の頃から優秀だった兄への強いコンプレックスがあり、その屈折した感情から、実家や家族と一日も早く離れたかった・・・とありますからね。
そして、何よりの最大の違いは、
「腹回りに肉がたっぷりついてきた巨漢」
という如何にも中年男な体型ですよね(笑)
ヒロユキも原作の設定に合わせて体重を10㎏程増量したそうですが、
そこは元のルックスの良さが災いして、
「肉付きの良い、ドタドタ走る中年のオヤジ」
の再現には至っていない😓

良いんですけどね?
小説は小説、映画は映画で別物と捉えれば・・・・。
ただ、
「亡国のイージス」
の場合、せっかく原作の中には映像化したらさぞかし映えるだろうな~という場面が満載なのにも関わらず、全くそれを映画化された作品の中で生かせていない点が際立つわけですよショボーン

  • いや・・・何故その説明を省いた?意味わからんだろ!?
  • 何であの泣ける場面やら台詞を簡略化・・・あるいはスルーした!?そここそが見せ場やん!?
ってな、下手くそな演出、脚本、編集があまりにも目に付いてしまう・・・。
原作読むと、そこが尚更浮き彫りになっちゃうわけですよ🤔

例えば、仙石先任伍長が杉浦砲雷長の説得に成功しかけた瞬間に如月行が踏み込んできて、反射的に銃を向けた砲雷長を射殺してしまう場面。
その後、映画では先任伍長が激昂する場面はあるものの、短く
「お前は人間をわかっていないビックリマーク撃つ前に、少しでも何か考えたり、迷ったりするのが人間だろう!
と説くだけでした。
だけど、原作では、もっと深いメッセージを発しているんですよね。

ちょっと長いから写メで失礼しますが、ここの部分の先任伍長のセリフにこそ、作者の一番訴えたかったメッセージが込められていると思うんですよね?
そういう、
「そこを省いたら(あるいは変えたら)この作品の最も大切なメッセージが何も伝わらない❎」
っていう、駄目な見本みたいな切り取り方をあの映画はしている🚫
尺の問題とか、国防をテーマにしたことからの表現の制約とか色々事情はあったと推察出来ますが、それにしても、もう少し原作の最大の見せ場をそのまま生かすような演出は出来なかったものかなぁ??と、いまさらながら残念に感じました_| ̄|○

せめて、北朝鮮工作員(映画ではそれさえも某国工作員と濁されていたアセアセ)のヨンファとジョンヒが義兄妹であることや、ジョンヒが一言も喋らないのは、韓国に対する工作活動中に地雷に引っかかって、喉が潰れたからであること、ヨンファの最終目的は北朝鮮の現政権を倒して新政府を樹立し、ジョンヒを新しい王国の女王に据えることだった・・・くらいの情報はきちんと伝えるべきだったんじゃないかな?と思いました。
簡単な説明セリフでも良いからさ?

あと、例の海中での如月行とジョンヒのキスシーンもさ💏
ジョンヒは、ヨンファに対して、
「義妹である自分の為には、リスクを取っても絶対に目的を果たす、誰よりも強い兄」
であることを求めていた。
しかし、先任伍長と如月の抵抗にあって、当初の計画を変更せざるを得なくなったヨンファが弱気を見せた為に、彼女は失望し、兄を見限ったわけです。
そして、兄に代わる強い男の象徴として、如月の存在を求めた・・・。
彼女の行動は、それ故の行為だった、ってことを説明しないと、観ている観客は完全に置いてけぼりですよね・・・😒
だって、さすがにエスパーでもなけりゃ、誰だってあのシーンだけで、そんな事情を推察出来るわけないじゃん!?


何か、原作小説の感想というより、それと比較した映画へのダメ出しになっちゃったけどさアセアセガーン
やはり、あの映画は、せめて前後編の2部作位に分けて、もっと登場人物の心情や、出来事の経緯をじっくりと描くべきだったと思うよ?

そうすれば、仙石と如月の心の交流、ヨンファ達の背景、宮津達叛乱分子の国及び自衛隊のあり方への怨念と、その心情の変化、ダイス内事本部長=渥美の宮津の妻=芳恵への贖罪等の描写がきっちりと組み込めてたはずうーん
そうしたら、映画版も原作同様、もっと心に響く 内容になったのではないかと、色々残念でしたうーんダウン