中国の犬となったジャッキー・チェン
刑事事件の容疑者を中国に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正への反発から、香港では大規模なデモに発展しているが、芸能界も揺れている。大陸との関わりも少なくない彼らにとって、大っぴらにはデモを支持しづらい状況にあるが、SNSで「香港加油(頑張れ)」のハッシュタグを付ける等して支持を表明する芸能人も少なくない。さらにはデモに参加する芸能人もおり、現地メディア「852郵報」(6月9日付)によると、歌手のアンソニー・ウォン(黃耀明)やデニス・ホー(何韻詩)は9日、香港政府総部前でBEYONDの「抗戦二十年」 を熱唱した。
一方で、香港が生んだ大スター、ジャッキー・チェン(成龍)は一連の騒動に対して冷淡で、その言動に批判が集まっている。「晴報(SKY POST)」(同13日付)によると、ジャッキーは同日、台湾・台北市で12日にリリースしたアルバムをPRする為の記者会見に臨んでいた。前日には香港で大規模デモが行われた事から、記者からそれに関する質問があったのだ が、ジャッキーは「昨日初めて香港で大きなデモがあった事を知った。どんな事情があったのか、全く知らない」と答えた。
故郷・香港を突き放す様な発言に対し、SNS上では「失望した」「共産党の手先め」「過去のジャッキー出演作のDVDは全て廃棄する事に決めた」等、批判が相次いだ。
また同日、台湾の人気歌手、ジェイ・チョウ(周杰倫)が、自身のインスタグラムでジャッキーと杯を交わす写真を投稿したが、これにもファンからは「ジェイ、香港で彼を好きな人は一人もいない。彼は人民元の為に魂を売った」「なぜジャッキー何ていうゴミと一緒にいるの?」といった厳しいコメントが寄せられた。
さらに11日には、X JAPANのYOSHIKIがジャッキーと会食した事がYOSHIKIのインスタへの投稿で明らかになったが、そこでも炎上し、YOSHIKIが謝罪する事態に陥っている。
これだけの批判を浴びつつも、今までのところ当のジャッキーは、自身のSNSでデモについても一切触れていない。デモに賛同したと見なされれば、彼にとって重要な市場である中国大陸からバッシングを受ける事になりかねないだけに、沈黙を貫いている部分もあるだろうが、それだけではない。
中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は話す。
「ジャッキーは現在、中国人民政治協商会議(いわゆる上院)の委員を務めていますし、過去には、中国からの模造品持ち出し禁止を呼びかける政府広報ビデオにも出演した事がある等、中国共産党との関わりは深い。2014年に息子のジェイシー・チャンが北京で大麻使用で逮捕された一件では、押収された乾燥大麻が100g以上と大量で、第三者に大麻を使用する場所も提供していた為に、薬物犯罪が重罪とされている中国では、極刑の可能性もありといわれていた。しかし、実際は懲役6カ月と数万円の罰金で済んだのですが、ジャッキーが党上層部に減刑を嘆願した為といわれている」
無敵のカンフーマスターも、中国共産党には頭が上がらないという事か……。
(文=大橋史彦)