町が滅びる日? イオンを拒んだ町 人口減ニッポンの現実 | ヤサグレもんの戯言

町が滅びる日? イオンを拒んだ町 人口減ニッポンの現実

◼️買い物は好きですか?

全国で唯一、イオンの大型店がない町がある。福井県だ。昨年、隣接する石川県小松市に全国150カ所目となる大型のイオンが開業すると客が流出。福井県内の地元商店業者は異例の連携に踏み切った。イオンを拒んだ町と受け入れた町。両者の綱引きが象徴するのは、人口減少ニッポンの各地で起きている都市間の生き残り競争だ。

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「福井にだまされた」


「福井にはだまされた」。イオン社長の岡田元也はそう話す。その真意は詳しく語らないが、連結売上高8兆円を超える巨大グループのトップが福井に感情的なしこりをもつことがうかがえる。

「イオン」「イオンスタイル」「イオンモール」「イオンショッピングセンター」「イオンタウン」。イオンの大型店は国内に810店。千葉県のように60店を超える県もあるなか、福井県だけには1店もない。もちろんこれは偶然ではない。

「ここができて、エルパには行かなくなった」。2月末、福井市に住む大学4年の女子学生は、隣の石川県に1年ほど前にできた「イオンモール新小松」(小松市)を訪れた。クルマで1時間強かかるが「流行の店も多いし、距離は気にならない」という。


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「エルパ」というのは福井市最大のショッピングセンターのこと。地元の商業組合とスーパー大手のユニーが共同運営する。同組合で理事長をする竹内邦夫はイオンモール新小松について「目に見えるほどの影響はない」と強調するが、同店の客のうち約2割は福井県からの客とされる。


「やっぱりふくいがおもしろい!」。イオンが開業して半年足らずの87日。地元の福井新聞に見開きカラーの全段広告が載った。エルパやJR福井駅前にある百貨店の西武、ショッピングシティ・ベル(福井市)、パリオシティ(同)などの共同広告だ。

西武福井店長の大野仁志は「敵の敵は味方」と苦笑する。県外のイオンの新店に客が流出する危機感を強め、客を奪い合っていたライバル同士が手を組んだ。昨年10月には、これに商店街連合会が加わる形で「オールフクイ実行委員会」が設立された。

あるオールフクイの関係者は、地元の福井新聞に出稿する広告について「通常料金の4割前後、割引を受けている」と打ち明ける。イオンの出店を機にエルパは福井市や県から補助金も獲得している。行政、メディア、商業連合とまさに福井が一丸となってイオンに対抗する全国でも異例の事態となった。


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訴訟と反対運動


「イオンVS福井」。対立の構図が生まれたのは15年前だ。2003年、イオンの前身であるジャスコと地元の商業組合が共同運営していた福井市のショッピングセンター「ピア」が閉店した。当初は老朽化が激しい施設をリニューアルして開業する名目だったが、ほどなく共同運営の商業組合が自己破産を申請。再開発計画は宙に浮き、共同所有の建物やそれぞれが持つ土地の活用を巡って対立した。

「建物を解体し、更地にして明け渡せ」。両者の対立は、07年、商業組合側がイオンを提訴し裁判に発展する。イオン側は「建物の解体に合意していない」などとしてこれに対抗した。09年に和解したが、商業組合側が保有していた土地の上には11年に、別のドラッグストアが開業した。


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イオンの鯖江出店計画の当時の資料に目を落とす鯖江市の牧野百男市長


 自社保有の土地を含め、新たな大型施設の開発を目指していたイオンからすれば不本意な結果だったに違いない。


実はこの裁判と前後して0607年ごろ持ち上がったのが、福井県鯖江市へのイオン出店計画だ。市長の牧野百男は誘致に動いたが、頓挫した。反対したのは県や福井市などの周辺市、周囲のショッピングセンターだった。

「あれほどのチャンスはなかった。今からでも、もう一度イオンに出ると言ってもらいたい」と牧野は言う。北陸新幹線の敦賀開通に伴い、鯖江には特急が停車しなくなる見通し。牧野は「3年ほど前から、再開発計画がなにも持ち込まれなくなった。まちづくりの核とすべき打つ手がない」と話す。

当のイオンは「ビジネスだから過去の経緯で意図的に出店を控えることはない」(イオンモール広報)と言う。過去の訴訟ざたと、鯖江の出店取りやめに直接の因果関係はないとの主張だ。

だが大型ショッピングセンターの開発は計画から開業まで5年程度、長ければ10年かかる。土地の用途転換のような行政手続きや、まわりの道路整備も必要。周辺自治体の協力が得られない出店は事実上不可能だ。だからこそ、地元との協議が難航しそうな地域は店舗開発の優先度が下がる。

むしろ、と話すのは鯖江への出店交渉の経緯を知る元イオン幹部だ。「何がなんでもやれという案件ではなかった」。福井から他県への人口流出は当時から明らかだった。「今はさらに厳しく、出すとしても食品スーパーか、10店舗ほどの小型ショッピングセンターがせいぜいだ」(同元幹部)。出店にかかる労力と、人口が全国43位という市場としての魅力をてんびんにかけた結果が「唯一イオンがない県」というわけだ。


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イオンモール新小松(石川県小松市)には、県境を越えて福井ナンバーの車が多く来店する。


反対派から誘致に転向


一方、イオンを受け入れた石川県小松市。県内に大型イオンは16店ある。当初イオンの進出に反対していたが、後に賛成に回り誘致を推し進めた石川県議会議員がいる。自身も小松市の商店街出身で県議会議長などの要職も務めた福村章だ。

「最初はイオンの出店を遅らせ、その間に駅前商店街などの活性化をしようと考えていた」。福村の支持基盤の多くは地元の商業者。反対派の先鋒(せんぽう)となるのに当初疑問はなかった。


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「当初はイオン誘致に反対だった」と話す石川県議会の福村章議員


だが後継者難や空き物件など、様々な問題で、商店街の再開発は思うように進まなかった。そのうちイオンの出店取りやめが噂され始めると、福村は考えた。「うちが拒んでも、他所にイオンができれば消費が流出するだけだ」


福村はそれから、商工会や住民との集まりで根気よく出店の意義を説いて回った。今から56年前のことだ。

「映画館ひとつもない町に若者が住むか。東京に行った娘が、家族と一緒に戻ってきてくれるのか」。次第に賛同者は増え、最後まで強硬に反対する人もいたが「おおむね理解を得られたと思っている」と振り返る。

 「イオンの出店を怖がりすぎていた」。そう話すのは、JR小松駅前で花屋を営み、小松商店会連盟の会長も務める浜本哲成だ。イオンモール新小松の開業から1年が過ぎるが、商売に大きな影響を受けたという地元商店はない。「むしろ外部から来た人がお金を落としてくれる」という。


「もっとビジネスをしろ」


「都市間競争」。福井で見たのは、かつての「イオン対地元」ではなく、地域対地域の生き残り競争だ。2015年の国勢調査では、全国1719の市町村のうち82.4%が前回調査から人口が減少。5%以上減少した市町村は48.5%と半数に迫った。地方都市には「隣の都市に負ければおらが町はなくなる」という危機感が強まっている。

その危機感は全国に150を超える大型ショッピングセンターを持つイオンも同じだ。一度出店すれば、不採算だといって簡単に撤退はできない。イオンのショッピングセンターは町のインフラであり、道路や住宅、他の商業地の開発を呼び込む要にもなっている。

173月、千葉・幕張のイオン本社16階会議室。社長の岡田は経営陣が居並ぶ社内の会議で声を張り上げた。「ある県の知事に『イオンさん、こんなに商売のことを考えないでいいんですか』と言われた。本当の話だ。地域貢献は大事だが、もっと真剣にもうけることも考えろ」。別の経営陣の一人も同社の社外取締役から「もっとビジネスをしろ」と言われたという。

イオンの20182月期の連結売上高見込みは8兆円超と、この5年で1.5倍に増えた。だが営業利益は2000億円で当時とほぼ変わらない。

イオンの飽くなき店舗拡大は、地元の商業者との対立とセットで語られてきた。だがそれは過去のものだ。人口減がすすめば、全ての自治体が生き残ることはできない。地域同士が魅力ある器を取り合う時代に、イオンは競争力をもたらす存在でありつづけられるか。

=敬称略

(中川雅之)


◼️どれが、正しいビジネスモデルか?


売り上げが、いくら伸びていても、利益率が下がればビジネスの成功ではない。


利益率が高ければ、平均給与は上がり、会社も人もWIN WINが成立するのだ。そして、大型ショッピングセンターも大きな課題を抱えている。地方においての商圏とは、車で一時間以内で行けるかどうか?であるが、その時間は短ければ、短い方がいい。また、ショッピングセンター内では、滞在時間が長ければ長いほどいい。滞在時間が長ければ、お金は、自然とお客が、その場で落として行く確率が高いのだ。そして、商圏において競合店が過密化しない事である。


それは、地方都市における家電量販店も同じである。


家電量販店の最大手であるヤマダ電機も、売り上げ高は高いものの、利益率は、ヨドバシカメラに大きく差を開けられている。


コンビニの商圏は半径の500メートル以内。徒歩15分以内であり、もっとも強い範囲は半径150メートル、徒歩5分圏内である。


一時的には、大型ショッピングセンターにより、地域活性化に繋がるが、家電量販店も、ネットという見えざる敵により、将来的には、淘汰されて行くことであろう。


街の魅力が無くなる、過疎化が進む。それは、地方都市の全てが抱える問題であるのだ。