前回、「女は引っ込んでろ」というように振る舞う男が好きな女も、また性癖のひとつなのか、と書きました。
その方が「燃える」という、性癖には違いないとは思うのですが、
少し付け加えますと、私は差別的な人が好きな訳ではないのです。
陰陽というのか、「女は引っ込んでろ」という表現に、男性性の弱さや、逆に女性性を庇う意味が含まれている、と解っていて振る舞う男に惹かれます。
松田優作を、私はアクション俳優のようには始めから見て来なくて、映画『嵐が丘』や『家族ゲーム』、『それから』のような役柄が好きでした。
テレビドラマならば、吉永小百合と共演した『夢千代日記』。
素に近いのは、文学青年のような人だったような気がしていました。
初めて、松田優作を意識した際、私は小学校低学年でしたが、「ラブシーン、ベッドシーンがこれ程似合わない俳優は居ない」「女を抱いているのに、泣いているみたいに見える」……と感じました。そんな風に感じた俳優は、私にとって松田優作ただ一人です。
松田優作の元妻で、元女優で、現在は作家の松田美智子が、同棲時代を回顧して語り、
そこには確か、ビルの屋上等で、優作に美智子は、フェンスに腰掛けさせられ「俺に全てを委ねられるか」とよく訊かれた、といったエピソードがありました。
屋上のフェンスに腰掛け、バランスを崩したら、背後には何もなく、落ちてしまうのです。支えは目の前に居る優作だけ……。
そんな行為に、優作の弱さも不安も感じ、また愛おしくもあり、辛くもあった、と松田美智子は正直に語っていたと思います。
いまは、松田美智子の著書『越境者 松田優作』を読んでみたいですね。