『エデンの東』(エデンのひがし、East of Eden)は、1955年公開のアメリカ映画。監督はエリア・カザン。ジョン・スタインベックの同名小説をポール・オズボーンが脚色した。
主演は、映画出演自体初めてだったジェームズ・ディーンで、名実ともに一躍スターの地位を不動のものとした作品としても名高い。
第13回ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)、第8回カンヌ国際映画祭劇映画賞を受賞。また、出演者では母親役のジョー・ヴァン・フリートが第28回アカデミー賞でアカデミー助演女優賞を受賞した[1]。
ストーリー
1917年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サリナス。当地トラスク家の次男ケイレブ(愛称キャル)は、秘密を探っていた。無賃乗車して、モントレーの港町でいかがわしい酒場を経営しているケートを尾行していた。彼女が死んだと聞かされていた自分の母かもしれない人物だったからである。 キャルは父アダムの企画していたレタスの冷凍保存に使用された氷を砕き、そのことで聖書の一説を引用した叱責を受ける中、「自分のことを知りたい、そのためには母のことを知らなければ」と母のことを問い質す。アダムは母との不和を話したが、彼女は死んだということは揺るがない。 キャルはケートの店に向かい、彼女と直接対面するも話には応じられず追い返されてしまう。その後、キャルはアダムの旧友である保安官のサム・クーパーから誰にも見せなかったという両親が結婚した時の写真を見せられ、ケートが自分の母だと確信する。
ある日、キャルは「父から愛されていないのではないか」という自分の悩みを兄アロンの恋人アブラに打ち明ける。すると、彼女も同じ悩みを抱えていたことがあったことを語り、二人の心が近づく。
やがてアダムが冷凍保存したレタスを東海岸に運び大商いをして大儲けすることを狙って、貨物列車で東部の市場へ輸送したが、その途中で峠が雪崩で通行不能となり、列車内で氷が溶けて野菜が腐ってしまい大損害を蒙る。キャルは損失額を取り戻すべく、取引の先見の明を持つウィル・ハミルトンのもとを訪れ、彼に認められて戦争に伴う景気変動から豆が高騰するという話を聞くが、投資額は彼に工面できるものではない。そこで彼はケートのもとへ向かい、資金を求めるが一度は断られてしまう。しかし、そこでケートが家を出た理由は自由を求めていたからということ、アダムがインディアンとの戦いで負ったと言っていた傷はケートが家を出るときに彼女に撃たれて負ったということ、ケートも息子キャルと同じようにアダムから聖書を引用した叱責と清廉であることへの束縛を嫌っていたことが語られ、話の後には資金の提供を受けることに成功する。
第一次世界大戦が始まり、景気変動によってキャルは利益を上げるが、アロンは自分は戦争に反対しているとキャルに語る。その一方、ドイツ系移民である靴屋のグスタフ・オルブレヒトは戦禍の煽りを受けることとなる。 祭りの日、キャルはアロンと待ち合わせしていたアブラと出会う。アロンとの待ち合わせまでの時間、早く来ていたアブラと共に行動するキャル。二人は観覧車に乗り、キャルはアブラからアロンとの間には何か違和感を感じること、母のいないアロンが自分に求める母親の像と自分とは違っているということを打ち明けられ、そしてやがてアブラはキャルに唇を許す。
一方その観覧車の下では、靴屋のグスタフ・オルブレヒトが反ドイツ感情の強い人々に小突かれて、その中にアロンが巻き込まれたことを目撃したキャルは彼を助けるべく騒ぎの中へと飛び込み乱闘騒ぎとなる。保安官のサム・クーパーがその場を収め騒ぎは静まったが、キャルとアロンは誤解から殴り合いを始める。
豆の取引によってキャルが得た利益が父アダムの損失額を補填できる金額になり、アダムの誕生日にそれを渡すキャル。しかし、戦争に良い感情を持たず、戦争を利用して大金を得たことをアダムは叱責して金を受け取らず、アロンとアブラが婚約を伝えたように清らかなものが欲しかったと語る。キャルは大声で泣き「父さんが憎い」と叫んで出て行く。 その日、嘆くキャルをアブラが慰めているのを目撃したアロンは激昂。アブラにキャルのところに行くなと厳しい口調で伝える。それに対してキャルは父への憎しみが何時しか兄への憎しみに変わり、母であるケートの酒場にアロンを連れていき初めて彼に母と対面させる。その直後、アロンの行方をアダムに問われた際に「知らないね、僕は兄さんの子守りじゃないんだ」[2]と返し、ケートが家を出た理由にも触れ、父との決別を告げる。アロンにとって最も軽蔑する女が自分の母であったことを知って激しいショックを受け、自暴自棄になって、その日のうちに出兵する。
アダムは知らせを受けて駅に行くと出兵する若者を乗せた列車の窓からアロンは頭でガラスを破って父を笑い、列車は動き出す。アダムにとっては余りの衝撃であった。そしてそのショックで列車が出た直後脳出血で倒れ、身動きも出来ない重病人となった。体が麻痺して寝たきりの状態になって看護婦が付きっきりに看病することとなった。キャルは自分がやったことで起きた事態に良心の呵責に苦しむ。皆が見舞いに来る中で保安官のサムがキャルに「アダムとイヴの子カインは、嫉妬の余りその弟アベルを殺す。やがてカインは立ち去りて、エデンの東ノドの地に住みにけり」と旧約聖書の一節を語って、取りあえずお前はこの家から出て行った方がいいと諭す。自分も去らねばならないと決意したキャルは病床にあるアダムに許しを乞うがアダムはもはや虚ろな目で何の反応も示さない。キャルは絶望の淵に立つこととなった。
アブラは自分の心の中にキャルがいることに気づき、病身のアダムのベッドの傍で一人必死に、彼が父の愛を求めていたことを語り、アダムがキャルを愛していることを伝えてほしい、そうでないと彼は一生ダメになってしまうと訴え、絶望して部屋に入りたがらないキャルを説得して父のベッドで再び許しを請うように促す。何かにつけて煩い看護婦に「GO OUT」とキャルが叫んだ直後、アダムの目が訴えるようになり、キャルがアダムの口元に耳を寄せる。微かな声で「あの看護婦を辞めさせて、お前が付き添ってくれ」と告げるアダム。確かな言葉で父の愛を知ったキャルとアブラは涙する。そしてキャルはずっと父のベッドに佇むのであった。
キャスト
ケイレブ(キャル)・トラスク
ジェームズ・ディーン、日本語吹替 - 野沢那智
主人公。アダムの次男でアロンの弟。アダムより聖書にちなんでケイレブと名付けられるが、劇中ではほとんど愛称のキャルと呼ばれている。粗暴でひねくれた性格で、アダムから愛されず、父の愛に飢えている。
アブラ
ジュリー・ハリス、日本語吹替 - 香野百合子
アロンの恋人で、キャルやアダムへも気配りを忘れない優しい娘。実はキャルの抱える悩みと同じ思いをしたことがあるのだが、今は親との仲は良好。
アダム・トラスク
レイモンド・マッセイ、日本語吹替 - 鈴木瑞穂
キャルとアロンの父。かつては東部で農場を経営していたが、1年前に東部からサリナスへと移住し、レタスの栽培と冷凍輸送を考え始める。敬虔なクリスチャンで、キャルが問題を起こしたときには聖書を取り出し、聖書の一節から教えを説く。モデルは日本からの移民・田島隆之(ユキコ・ルシール・デービスの父)との説がある[3]。
ケート
ジョー・ヴァン・フリート、日本語吹替 - 鳳八千代
モントレーでいかがわしい酒場を経営している。
アロン・トラスク
リチャード・ダヴァロス、日本語吹替 - 富山敬
アダムの長男でキャルの兄。アダムに従順で礼儀正しい性格から、アダムの期待を一身に受けている。
ウィル・ハミルトン
アルバート・デッカー、日本語吹替 - 石田太郎
サリナス在住の資産家で、商売における目の付け所においては抜け目の無い人物。アメリカの第1次世界大戦参戦に伴う、穀物の値上がりを狙っている。
グスタフ・オルブレヒト
ハロルド・ゴードン
サリナスで靴屋を経営しているドイツ系移民。アダムのチェス仲間で、キャルやアロンとも親しい。心情的にはドイツ寄りで、アメリカの大戦参戦後はドイツの非道さが喧伝されるに対して「嘘だ、でたらめだ」と主張する。
ジョー
ティモシー・ケイリー、日本語吹替 - 青野武
ケートの用心棒。映画の冒頭でケートを尾行していたキャルを追い払う。
アン
ロイス・スミス、日本語吹替 - 小山茉美
ケートの家と酒場で働く女性。
サム・クーパー
バール・アイヴス、日本語吹替 - 富田耕生
保安官。アダムとは古くからの友人。最後にキャルに立ち去るように、旧約聖書の一節「エデンの東」を語る。
原作との相違点
本作は、原作の後半におけるキャルを軸にした、1917年のサリナスを舞台としている。そのため、原作前半でのエピソードの大半や、サミュエル・ハミルトンやアダムの父サイラス、弟チャールズ、料理人リーといった人物は登場しない。ただし、エピソードの一部は当事者が過去を語るという形で登場する。しかし必ずしも父と母の過去が全て明らかになることはない。
原作ではキャルとアロンは双子の兄弟だが、映画では歳違いの普通の兄弟になっている。
原作のキャシーの名前が、本作ではケートに変えられている。
原作ではアダムはサリナスに移住した後、結婚して2人の子供にも恵まれるが、本作ではずっと東部で農場を経営しており、1年前にキャルとアロンを連れてサリナスへと移住してきたことになっている。
