書道教室とコンプライアンス | 日本習字教育財団 上海支部

日本習字教育財団 上海支部

上海で活動を始めて11年目の日本式書道教室のブログです。
お知らせ、教室の様子、上海の教育事情、子ども達を取り巻く環境、書道史豆知識などについて書く予定です。

中国で日本人(外国人)が仕事をするためには、就労ビザが必要です。

もし、就労ビザを持たず仕事をして当局に摘発されると、5000元以上20000元以下の罰金となります。

駐在員の家族が、この規定を守らない場合は、配偶者の所属する企業にも罰金が課せられます。

 

<違法な教室の実態>

2012年からこの11年間で、就労ビザを持たずに上海市で書道教室を行っていたのは3つありました。

私がそれら3つの教室の状況をある程度知っているのは、そこに通っていた子ども達が教室の閉鎖と共に私の教室へやって来て、私がそれらの教室の内情を知ったからです。

 

1つは古北で大規模に夫婦で教室を営んでいました。

彼らは就労ビザを持っていませんでした。

彼らの教室が存在していた2012年頃は、現在よりビザの規制が緩く、6カ月毎にビザが延長出来ましたので、彼らは教室が運営出来たのです。

 

父兄からすると、彼らが書道教師として当然資格を持っていると考えたかもしれませんが、主に教えている妻の方は師範資格が無く、書道の経験が無い夫がアシスタントとして教室で働いていました。

そこでは、妻が書いたお手本を生徒達が共有して使う方式で、お手本は生徒一人一人に渡されず、みんなで共有していたと私の教室へ来た子どもが話していました。

また、級段位も夫婦が独自で作り添削して、自宅のプリンターで賞状を印刷して生徒に渡していたようです。

この教室で付けられた級段位は、公の権威はありませんでした。

この教室は突然閉鎖になり、その知らせも閉鎖直前に突然生徒へ知らされて、行き場を失った生徒達は私の教室へやってきました。

一人の母親は、支払った月謝の返金も無かったと嘆いていました。

 

2つ目は、駐在員妻が自宅で生徒を集めて行っていました。

この教室の生徒も、後に私の教室へやってきました。

ここで教えていた駐在員妻は、私の教室で使用しているお手本の日本習字教育財団の師範資格を持っていながら、この方が取得していない別の書道団体のお手本で生徒を指導していました。

つまり無資格というわけです。

 

3つ目も駐在員妻です。

この教室は、2つ目の駐在員妻が日本へ本帰国が決まり、その生徒を全部引き受ける形で、自宅での教室が始まりました。

3つ目の方も、日本習字教育財団の師範資格で、指導資格を持たない別の書道団体のお手本で教えるという形でしたが、やはり夫の任期が終わり、生徒を残して教室も終わりました。

ここで習っていた3名の生徒は、私の教室へやって来て教室の様子を色々話してくれました。

教室を営んでいる自宅へ父兄は立ち入らないので、親の目が無いことをいいことに、この方は子どもを指導しながら料理をしていたといういい加減な態度だったそうです。

また、生徒の下着の色を聞くセクハラも行われていたと、小学3年生の女の子が嘆いていました。

 

2つ目の方と3つ目の方が、日本習字教育財団の資格で別の書道団体のお手本で教えていた理由を察するとするなら、もし日本習字教育財団のお手本を使用するなら、いずれ私の方にその情報が必ず入り、違法就労という事が明かるみになるのでそれを恐れた為でしょう・・・。

 

<低いコンプライアンス意識の弊害>

上記の3つの教室を指導した方々は、就労ビザを持っていませんでした。

また、3つの教室では、子どもや親御さんに対して、指導者としての正式な指導資格が無いままか、あるいはそれを隠していました。就労ビザも持たず指導資格が無い方が書道教室を営むのは、生徒と親御さんへの不誠実な態度であると感じます。

 

教育基本第2条には、教育の目的として、

「幅広い知識と教諭を身に付け、真理と正義を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと」とあります。

 

教育には崇高な目的があります。

教育の仕事をするなら、教育者は正直であり真実に基づいて行動すべきです。

指導資格を偽ったり、就労ビザ無しに非合法で書道教室を行うことは論外に感じます。

 

しかし、書道教育を違法に始められる厚顔な思いがある人達は、生徒より自分の利得や欲求を優先します。

3つの教室は収益が有りながら、当然当局へ納税することもせず、ただただ私腹を肥やしていました。

考えても見てください。もし、駐在員妻が自宅で週に数回書道を教えて毎月数万元(2万元なら40万円相当)のお小遣いが得られるなら、笑いが止まらないことでしょう・・・。

2014年当時、上海の日本人は10万人以上いましたので、駐在員妻はこのような違法な方法でも簡単に数万元の収入が得られました。

 

またそれら違法に教えられた子ども達は、通った年数に見合う実力はありませんでした。

私の教室へやってきた子ども達の様子から、その教室へ通っていた年数からすると、毛筆の基本点画や基本筆法も十分に教えられていない状況でした。

それら3つの教室で教えられた子ども達の実力から、指導力の低さも感じました。

 

<現在の上海の書道教室事情>

コロナ禍で、子どもの習い事や塾関係も大きな打撃を受けたこの数年でした。

しかし、今年から少し上向きになることでしょう・・・。

現在、上海で合法的に書道教室を運営しているのは、当教室一つだけです。

 

昨日、ある親御さんからメールをいただきました。

明後日の体験のキャンセルを知らせる内容でしたが、その文面には、自宅へ教えに来てくれる書道の先生が見つかったとのことでした。

 

しかし、この先生が「セイセツ」と名乗る方なら、要注意です。

この「セイセツ」という方は、親御さんに本名を決して教えません。

WeChat IDが有るにも関わらず、親御さんには無いと嘘を言います。

たかが書道の先生の分際で、親御さんに本名とWeChatを教えられないというのは、何かを隠していると思われませんか?

そのような怪しい人に、ご自身の大切なお子さんの教育を任せられるでしょうか・・・?

 

まるで、中国で禁令のカルト宗教活動家のようですね・・・。

 

5月にも多くの日本人が上海へやってきます。

子ども達の習い事でコンプライアンス意識高めの教室を探すためには、

指導者に「就労ビザはお持ちですか?」「正式な指導資格が有りますか?」と、最初にお尋ねになってください。

本名やWeChat IDを教えない人には、要注意です。(何か隠しています・・・)

もし、「セイセツ」と名乗る方に教わるご予定があるのでしたら、就労ビザを持って合法的に仕事をしているのかどうか?

本名は何なのか?尋ねてみては如何でしょうか。

 

これから上海にも益々日本人が増えて、コンプライアンス低めで、就労ビザを持たない書道の先生が増えない事を祈るばかりです・・・。