ある教会音楽家の死 | さいちゃんの教会音楽な日々

ある教会音楽家の死

 数週間前に、定期的に発行される教会音楽マガジンを牧師からもらって、目を通していた時のこと。

 ある教会音楽家の募集広告が私の目を引いた。大きな枠を使っている。読んでみると、シュトゥットガルトに近いニュルティンゲン教区の、トップの教会音楽家を募集しているとのこと。条件のいい職である。

 それ自体は何の問題もないのだが……私は血の気が引くのを感じた。


 「まさか……」


 私は前任の教会音楽家S氏と面識があった。一度、一緒にお昼を食べたことがある。まだ若い、気さくだが実力もある男性だった。

 去年心臓病で倒れ、仕事を休んでいた話は聞いた。かなり心配していたのだが、今年の初めから少しずつ仕事に復帰したらしい…とも風の便りに聞いていた。

 しかし、この広告である。募集がこの時期に出るのは、どう考えてもおかしかった。病気で静養するからその間の代理を探しているのであれば、そう広告に書いてあるはずであるだが、それもない。病気がひどくなって、職をやめざるを得ない状況になったのか、それとも…?


 その後忙しさにかまけて、調べてみる暇がなかったのだが、やっと今日思い切ってネットで調べてみることにした。

 フルネームがうろ覚えだったので、「ニュルティンゲン」「教区トップの教会音楽家(Bezirkskantor)」で検索をかけ、まず名前を調べ、それから何か情報がないか探した。グーグルに出てきた記事の中に、"trauert"(悲しむ、悔やむ)の単語を見つけたときに、最悪の事態が頭の中をよぎった。

 嫌だ、信じたくない。記事をクリックする指が震えた。ニュルティンゲン教区のホームページが開いた。




 私の時は、あなたの手の中にあります。詩篇31編16節


 シュタット教会は、主によって37歳で故郷へ召された教区トップの教会音楽家S氏のことを悔やみます。


 痛みから開放されて主の顔を見ることが出来るなら、それがただ一つの素晴らしいこととなるでしょう。




 オルガンの側に立って微笑むS氏の写真…




 Nei----------n!! (英語のNo)




 亡くなったのは6月とあった。原因はやはり、心臓病。PCの前で愕然として、しばらく動くことも出来ないまま記事を見つめた。





 どうして…。



 どうして、彼のような実力のある人が、37歳の若さで召されなければならなかったのであろう。


 

 まだいくらでも、良い働きが出来ただろうに…






 神様はやっぱりちょっと不公平だ、と思いつつ、ショックは深かった…。