りゅうちぇるさんが亡くなって、彼のホロスコープを見て何か書きたいと思っているうちに、時間ばかりが経ってしまいました。

なぜ自ら命を絶ってしまったのか? SNSによる執拗な中傷のせい、ホルモン投与による精神不安、男性との恋愛がうまくいかなかったこと…ご本人に聞いてみなければ本当の理由は分かりませんし、「そのとき」に及んでしまった瞬間に何を強く考えていたのかは、もしかしたら本人も理解できないかも知れません。ただ「やっちまった!」という感覚かも知れません。

7月は磁場が狂いやすい。三浦春馬さんが亡くなったのもこの月でした。あの世とこの世の被膜が極端に薄くなる、異常な月です。

 

 

ほぼ女性になったりゅうちぇるさんと、「だけどかわいいねん」と元夫を慈しむぺこさん。ぺこさんのチャートにはグランドトラインの一辺に幸運の小三角形が出来る「カイト」が顕れています。カイトを持つ女性は、男性を引き込む力が強力で、ケネディ元大統領夫人で、未亡人になったのちに海運王アリストテレス・オナシスの妻になったジャクリーン・ケネディがこのカイトを持っています。カイトそのものは自閉的な兆候も示すのですが、その人の内部にある大聖堂の時計のようなリズムに、近づく人は魅了され、引力に囚われて衛星になります。りゅうちぇるさんにとってぺこさんは「初めて唯一好きになった女性」なそうですが、人生の最も若い時期にそのようなカリスマ的女性に出会ってしまったら、深い絆を結ばないわけにはいかない。大恋愛結婚だったと思います。

 

りゅうちぇるさんのチャートには、オポジションがひとつもなく、太陽とキロンがオーブ3度で重なっているのが痛々しい。月は冥王星と接近し、木星とも近いので母親との縁が深く、マザコン傾向も。月は射手座で、かなりやんちゃ坊主。子供っぽい無邪気で無鉄砲なキャラクターは、もっと年を重ねていったら円熟したものに変わっていったかも知れません。悪ガキの印象しか残せなかった相手も多かったのではないでしょうか。太陽のいる天秤座には、金星・水星・ドラゴンヘッド、キロンが勢ぞろいし、どのみち彼の人生のテーマは「愛すること」だったと思います。

 

ぺこさんのグランドトラインは月・土星・冥王星の水サインの終わり近い度数で出来ていて、カイトの矢の先端は月。蟹座のぺこさんの支配星は月なので、この月は二倍にも三倍にも大きな意味を持ちます。ぺこさんの人生の目的は「母になること」です。それは、会社経営やリーダーシップの面で象徴的な母になる、という方向でも実現可能だし、家族をもって母となる、という選択でもありです。りゅうちぇるさんという夫を得たぺこさんは、チャートが示す通り、母になるというファーストの目的を果たしました。母性の月は天王星・海王星のコンジャンクションと衝で、安定性を感じさせません。また、夫を表す太陽は、蟹座にあるのですがメジャーアスペクトが一つもなく、孤立した感じ。夫それは「?」という謎の暗示を示してきます。忍耐力と精神力の塊で、なおかつ人の何倍もの母性をもつぺこさんですから、女性化したりゅうちぇるさんを息子のように感じていたのも理解できます。

 

スクエアカップルというのは、独特の安定感があります。夫の太陽星座を1ハウスとしたとき、MCに太陽星座のある妻は、旦那を尻の下に敷きますし、旦那も妻に頭が上がりません。蟹座のぺこさんと天秤座のりゅうちぇるさんの相性では、ぺこさんが圧倒的優位で、りゅうちぇるさんがそこに従うことで充実感を得ていたと予想されます。

りゅうちぇるさんとぺこさんは同学年で誕生日も3か月違いですから、木星以遠の天体は皆同じサインです。二人とも、この3月からサターンリターンに入っていて、これまでに茂りすぎた枝葉を切り落とす時期に入っていました。人生最初の禊というか、私サターンリターン期には「もう生きていけるか分からない」というほどの試練を経験したので、この痛みは分かります。好きだったけど、愛していたけど、それすらも切り離して本質に近づかなければならない…りゅうちぇるさんも辛かったと思います。

 

 

亡くなった日の前日は、和暦でいう「受死日」で、この日にりゅうちぇるさんはぺこさんと息子さんと楽しく最後の時間を過ごしていたのです。何か、狂おしく切ないものが胸に渦巻いていたのかも知れません。可愛い息子さんを見守ってあげられない姿になりつつある自分、どういう姿になっても自分を愛してくれる女神のような元妻、素晴らしい南の島の空の下で、色々な思いが巡っていたと思います。

結婚してから自分の性的アイデンティティに気づく、というパターンは少なくない。オスカー・ワイルドも妻子をもった後に、本格的に同性愛に目覚めた人です。ジェンダーに対しての理解が不安定な今、何か誰かがりゅうちぇるさんを守ってあげられなかったのかと、悔しい気持ちになります。まだ彼にはやりたいことがあったはず。

 

この宇宙は奇跡で、地球のような惑星が存在するのも奇跡です。宇宙というものが成立していること自体がミラクルで、宇宙になりかけの「ベイビーユニバース」が生まれかけては死んでいくのを繰り返す中、われわれの宇宙は何億分の一かで生成することが出来ました。人類のような知的存在が大宇宙にはあっておかしくない…という説もありますが、人類がいるこのような地球は他にあり得ない、という説もあります。生まれてきたことも凄い確率の奇跡です。宇宙と、誕生のすごい奇跡によって私たちはこの地球で太陽や月の光を浴びて生きているわけです。

りゅうちぇるさんにも、もっとこの世界を味わってほしかった。新しい時代が来るのを待って、愛する息子さんが成長するのを見守ってほしかった。真の恋人が登場するのを待っていてほしかった。
ぺこさんがりゅうちぇるさんの死後に出した声明は、女神の言葉のようでした。若いのに、すごいものを知っている。宇宙的な愛の持ち主です。りゅうちぇるさんの火星は蠍座で、遺伝子を遺すことは本能的な使命だった。
星空の彼方に向かって「もっとここにいてほしかった。でも、君はじゅうぶん頑張ったよ」と褒めてあげたいです。