「ウツミ急いでくれ!弾が切れたら死ぬ!」

 「戦車隊ミナミより報告、第三小隊が壊滅状態です」

 「こちら空中よりツバサ、敵部の戦車隊が九時の方向より接近中。遊撃隊、応戦願う。」

 戦場での生活が始まって三週間。初めて前線に立った第二師団の面々はなんとか毎日を乗り切っていた。

 現在戦っているのは、学生軍の中でも第二師団が所属する部に次いで勢いのある部だ。つい数日前に伊吹上官から会敵を告げられてすぐ、戦闘が始まった。向こうの部は数はこちらに劣るものの、戦略的に優れている。さらにその中でも優秀な兵士ばかりが集まる麒麟隊の襲撃とあっては、いくら誇り高き第二師団とは言え苦戦を強いられるのは無理もなかった。もともと自身のホームであるというのに、数日前からずっと押されているのは第二師団のほうだ。当然彼らも苦々しく顔をしかめていた。

 「これはよくないな…ハルヤ、全隊長に通信を繋いで!」

 「了解。」

 カレンがハルヤから渡された通信機に呼びかける。

 「こちらカレン。わかってると思うけど、戦況は芳しくない。これ以上の被害を避けるため、一時退却する。まだ動けそうな戦車隊と遊撃隊は後方を守りつつ退却、それ以外はすぐに空母艦に引き上げて。繰り返す、こちらカレン…」

 通信機の声を聴いた兵士たちは痛む足をひきずり、友人と支えあいながらゆっくりと後退していった。

 戦場。まだこの地獄は始まりでしかなかった。

 

 「では諜報部、報告を」

 数時間後。空母艦の艦長室で隊長格九人は会議をしていた。依然として外では敵と味方の巡洋艦同士がにらみ合っている。こちらの退却により一時的に戦況は落ち着いたものの、緊張はぬけていなかった。いつもよりも張り詰めた表情のカレンが、ユウジに報告を促す。

 「はい。敵戦力はおよそ二十五、それに対しこちらはすぐに動けるものが三十ほど。敵は巡洋艦二隻、四機の航空隊一つ、八台構成の戦車隊二つ、それから巡洋艦内に非戦闘員が十名ほどいるっぽいです。また、航空隊より山の中腹ほどに数名ずつで構成されたゲリラ隊を確認したとのこと。」

 手元の報告書を眺めながら、ツバサが口を開いた。

 「戦力ではわずかにこっちのほうが勝ってるけど、戦闘が始まってからの被害がな…すでにこっちは戦車小隊が一つ壊滅、巡洋艦も一隻被害が甚大で動けない。対して向こうはいくつか戦車を壊しただけだ。…団長、どうする?」

 カレンはそれには明確な答えを返さず、ただうなるだけだった。どれだけ実力が優れていても、それは『高校との闘い』での実力であり、このようなケースでは発揮しづらい。この師団自体もカレンと同じだった。好き勝手暴れまわって気づいたら敵がいなくなっていました、というのが第二師団の戦い方だ。戦略でじわじわ追い詰めてくる麒麟隊とは相性が悪すぎた。

 「あの、一つ俺気づいたことあるんだけど…」

 重苦しい空気の中、リョータが恐る恐る手を挙げた。

 「敵は戦車隊でも艦隊でも、先読みしたように回り込んでくる。たどり着いて戦闘を始めるころには大体いつも敵の手の中だ。たぶんそれは航空隊が見た、ゲリラ隊がうまく情報を回してるんだと思う。そうでなければ説明がつかない。」

 「なるほど。では、ゲリラ隊を真っ先に叩こうか?」

 「いや、少数で行動してる彼らを狙うのは難しい。ここは一度、彼らを一つの場所に集める必要があるだろう。そしたら航空隊で攻撃し、敵の情報網を麻痺させる。そこまですれば後は俺たちの得意な戦い方に持ち込めるはずだ。」

 ユウジが広げた地図と報告書を指さしながら言うと、「さっすが作戦参謀、やるじゃないの」とキラスケが茶々をいれた。その軽い声にほんの少しだけ空気が和らぐ。ナイスアシスト、助かった、とカレンは心の中で親指を立てた。話してはいけない、というような流れが少し薄くなり、誰でも自分の意見を言いやすくなる。そのような空気が今は必要だった。

 「問題はどうやって一か所に集めるかだよな…。向こうは相当統率が取れてる。こちらから浅はかな作戦で挑んでも返り討ちにされるだけだ。」

 「うちの隊による陽動は?」

 ミナミが手を挙げた。確かに戦車隊は小隊を一個失ったとはいえ、まだまだ多くの戦力が残っている。相手に先回りされることを覚悟しての陽動なら、敵の動きも読めるようになりそうだった。

 「いや、リスクが大きいな。戦車隊は大きい分機動力が少し劣る。万が一失敗したときの火力ロスもなかなか洒落にならない。だが、陽動で敵の動きをある程度絞り込むのは良さそうだな。ほかには何かある?」

 次に手を挙げたのはハルヤだった。

 「陽動に加えて偽の情報を流せば、一か所に集められそうじゃないかな?ただ、すぐにばれそうではあるんだけど…」

 ハルヤのその自信なさげな様子に、ツバサが笑顔で肩を叩く。

 「いーや少しの時間だけでも十分だ。俺の航空隊の機動力と戦力、知ってるだろ?あっという間に片づけてやるから、そこのところは任せてくれ!」

 自身の率いる隊の実力に少しも謙遜なく、少しも脚色のないその様子はまさにエースたる貫禄だった。それでいて少しも嫌味にならないのだから、天才というほかない。こいつはきっと受験戦争など無くてもひとかどの人物になったのだろうな、とキラスケはその横顔を見ながら考えた。

 「じゃあ陽動は私のところで請け負うよ。派手に動いて見せるから。」

 カレンが大きくうなずき、にっこりと笑う。「やっと笑ったー、そうじゃないともうマジおぶすだよ君ー」ミナミが茶化すように言ってほほ笑む。言われてみればカレンはここ数日いつもの笑顔を見せていなかった。団長に笑顔が戻ったことで、いつもの第二師団らしい雰囲気がやっと戻ってきたようだ。つられるようにして全員の表情がふっと崩れる。戦争なんて無いような、友人と撃ち合うことなんてあり得ないような、そんな普通の日々のような一瞬だった。ただしそれは一瞬だけだ。すぐに顔を引き締めたユウジが作戦の説明を始める。

 「それでは団長率いる艦隊による陽動で敵の動きを絞り込み、ハルヤが偽の情報を流してゲリラ隊を一か所に集める。それをツバサの航空隊が叩く、でいこう。そのためにまずは敵の通信コードを解析するための時間稼ぎ、陽動の初期段階を行う必要がある。ハルヤ通信兵、どのくらいあれば通信コードが解析できそう?」

 「三日で…なんとかカタをつける。できるかちょっと不安だけど」

 ハルヤとユウジが互いにうなずき合う。まだ隊として活動し始めて一か月にも満たない第二師団だが、少しずつ信頼関係が芽生えていることが感じられる様子だった。カレンもそれを見てうなずき、全員に向きなおった。

 「それでは作戦を開始する。とはいえ、作戦シナリオが出来上がるまではしばらく現状維持になるけど。各隊長は自身の隊に作戦を周知徹底。あくまで目的は敵を退けることにあるから、殲滅に走るものが出ないようによく知らせてね。それでは解散!」

 各隊長が順番に艦長室を出ていく。最後に残ったカレンは一人、外の敵巡洋艦をにらみつけた。

 

 「うえーーーーっ!眠い…もう無理…」

 その日の真夜中。諜報部室兼作戦参謀室でキラスケはうなっていた。隣にはモンスターエナジーの三本目を開けるユウジと仮眠をとっているハルヤ。いずれも疲れた表情でパソコンや書類とにらめっこをしている。外は静かで、空母艦内も今は夢の中であった。しかしここだけはいつまでも明かりがつきっぱなしである。ユウジをはじめとする諜報部のメンバーは各部への指示を、キラスケはその妄想力もといシナリオ作成能力を買われどのような設定の下陽動を行うのかというシナリオを作りつつ作戦の手伝いをしているところであった。第二師団は総勢四十名強の師団である。一般的な軍隊…比較対象とはならないが…と比べると、かなりの人手不足だ。受験戦争の隊としては平均的、むしろ多いほうだが、遂行しなくてはいけない作戦の規模が大きすぎる。そのため今回は暇なキラスケが潜水艦長ながら作戦担当に駆り出されるのも仕方のないことだった。

 受験戦争は戦争だが、その前に受験だ。あくまでメインは高校での試験であり、そのために訓練と演習、模擬試験を繰り返すのが受験戦争の王道である。模擬試験の結果により他の部と競うことはあっても直接戦闘するのはそうそうあることではない。ましてや開戦から一か月を待たずに交戦など、十数年に一度の異常事態だ。去年第二師団として戦った先輩軍人も、「もう交戦か?…早いな」と驚いていた。同じ部のほかの師団からも、今年はやけに敵の部が好戦的だという報告が上がっている。

 「こんなことになってるのって、やっぱりあれが原因なのかな」

 「一本化か?」

 「うん。でもさー、わざわざ僕らにしかけなくても、自分の実力さえ磨けば大丈夫なのにね。浅はかなやつらー」

会敵の際に敵の麒麟隊から出された声明はたった一言。「落とす」。なんつー縁起の悪い言葉を叩きつけてくれているのだ、と殺気立った第二師団が先に攻撃を仕掛けたのだが、結果はこのざまだ。それでも士気があまり落ちないのは流石というべきか。だが、仕掛けてきた相手にも応戦したこちらにもあきれたような顔でキラスケは机に突っ伏している。もうあきた、あーきたー、と変な調子で歌うキラスケを見ずにユウジは言葉を発した。

 「そんなこと言えるのはお前が『潜水艦長』だからだよ。それだけじゃない、エースパイロットのツバサに、空母艦なんてデケえのを任される団長に…お前らは良いよな。唯一無二のスキル持ちだ。俺には向こうの気持ちも、痛いぐらいよくわかる。」

 そこまで言うと、ユウジははっとしたようにキラスケのほうを見た。マズイことを口にしてしまったというような顔だった。気が緩んでいた、こんなこと言うなんてらしくない、取り消すべきか…と焦るが、キラスケは何も考えていないようなとぼけた目でまっすぐ空を見つめていた。

 「そっか、そりゃ君も大変だよな、僕にはあんまわかんないけど。」

 「イヤホント、スゴイスゴイ、オマエスゴイ」

 「棒読みだぞ諜報部長」

 思えばユウジとキラスケはこの第二師団の中でも最古参のメンバーだが、話したことは全くなかった。互いに何を考えているかよくわからない気まずさを振り払うように、キラスケはパソコンを追いやっていつものノートを開いた。

 


2020/07/23
ヒャッハー!地獄の夏期講習スタートだぜ!
今日の数学の授業で聞かれてアホキモイ数字言ってたから何かと思ったら先生めっちゃ計算苦戦しててワラタ
ヒルメッシはメロンパンでした
うめぇ
バンメッシは鮭おにぎり、チャーハンおにぎり、唐揚げひとつ、サラダ。ちょいと食いすぎた感あるので明日からはおにぎり系は1個にする(戒め)
なーんもやりたくないので日記なぞ付けてる。ノートの方に書きゃァ良いのに。

2020/07/24
リゼロのエキドナの声、「ああ」の言い方がロリンチちゃんに似てるなと思ったらほんとに坂本真綾だった
ヒルメッシはおべんと。熟語テスト練習が間に合わんかった。後は気合いだ。

左右で飯の色違うの草
と思ってたら左はしそだった
わかめだと思って食ったらシャキシャキだった時の衝撃が貴様にわかるか?
ちょっと味付けが濃い
1番左上の得体の知れない揚げ物、何かわからんくて食ってない
バンメッシはマフィンとコールスローサラダ。マフィンあんま美味くなかった。明日はポテサラ食う。
いーきていることがたのしくなったらいーのになー

2020/07/25
ヒルメッシ

炭やん
こんな無惨な姿になった鯖見たことないし見たくなかったよ 味は普通
まーた味付けが濃いねんて
量明日から減らしてもらお
弁当の残りはバンメッシ行きです
バンメッシは昼の残りとトリタツタ ななからのほうがうめぇ
ユウジ毎日からあげ棒食ってんな?
今日は四コマのネタ全然思いつかんかった
つか数学の授業の進み早すぎ…無理ゲーだよ?
一瞬でも気を抜くと話進んでるし。わかんない公式次から次へと出てくるし。

2020/07/26
今日になって急に疲れがどっと出てきたー。オロナミンCとか飲む。
ヒルメッシはキムチャーおにぎりとしゃけおにぎり。キムチャー辛すぎる。
また理科のレビューやんの忘れてた、詰んだ、、、
雑種が!!
カレンちゃんがアビィみたいなワンピース着ててかわうぃい
色合いがアビゲイルっぽい
国語で一休和尚の話やったんだけど見開き1ページにも満たない文章で4つも5つもとんちきかせてて笑う
バンメッシはふわふわチョコちぎりパンとななから2つ。サラダ食うの忘れた。

2020/07/27
父上さ、「理数が出来ないで文系に行くのはただのバカ」って言うけど東大工学部に言われるのなんかほんとに納得いかないなこれ
でも文系が就職に不利なのはマジだろうな つれぇぜ へっ
叔父さんが急性アルコール中毒で深夜病院に担ぎ込まれた時、診るのを渋る病院におじいちゃんが「当直に繋げ」って電話させて「お前一緒にテニスしただろ」っつって無理やり説得した話聞いてわらってる

2020/07/28
バンメッシ食えんかったぜ!ぴえん!!!!
ミュウのぬいぐるみ持っててミュウのストラップつけてるの、めっちゃミュウのオタクみたいになっててわらう、、、いや正にその通りなんだけど、、、
ユウジbadapple聞いてんのね 道理で東方の曲を知ってるわけだ
マイクの鼻はお父さん(本人)に似ていますとか笑い止まらん
聞いてームズい問題正解して鉛筆もらっちゃった 嬉しくねぇ

2020/07/29
とぅでいも元気です。立ち幅跳びやり過ぎて足が死んでる以外は。
TSU少年が米津玄師のことを「糖津」って書いてて草生え散らかしたよ
いつも心にアシュヴァッターマン
勉強だァ?馬鹿言え、今からやるのはただの作業だ!

2020/07/30
あがぁぁぁぁぁ足が痛い腰も痛い
筋肉バッキバキやぞお前 家帰ったら湿布貼ったるわボケ
5時に塾に来てから少しでも勉強しようと思ったけどだめむり めいよのてった〜い!
うるせ〜〜〜!しらね〜〜〜!かえらずのじ〜〜〜〜ん!!
ふぅ この5分、10分、15分の分差がついてるんやぞ?とは思えど動かぬ手。起こらぬやる気。そういう日もある。
腰が痛い。ハイパー痛い。ウルトラ痛い。
今日はAmazonミュージックにリンネとclocklockworksが入った記念日ね
Y姉さんが自律神経壊しちゃったって。心配。早く治りますように。
数学の課題やれ!!!
ネイヴァーまとめを見ない(戒め)
気になるアプリ プリ画像
O少年が塾でバナナ食ってた案件草

 

 三日後。燃え尽きたハルヤが真っ白になりながら通信コードの解析を終えたことを報告し、全員が再び艦長室に集まった。

 『陸での戦闘ではらちが明かなくなったため、得意な海上戦に持ち込む。空母艦、巡洋艦による動きながらの総攻撃に転じる予定。第二師団はここで麒麟隊のと今回の交戦の決着をつける。』というシナリオのもと、二日前からすでに陽動の下準備は終わっている。もともと空母に引き上げていってからのこの動きはさほど違和感がない。実際、敵部はそれに伴った動きをしていることも諜報部から報告されている。ここまで作戦はおよそ想定通りだった。

 「敵の通信コードに流す情報も準備はできたね?」

 「ああ、大丈夫。」

 ハルヤがなんとか笑顔を作りながら手元の紙をぱたぱたと叩いた。ここ数日あまり休めていないことが作戦に影響しないといいが、とカレンは心の底で思った。

 「それでは全員持ち場に戻るように。一時間後、作戦を開始する。」

 カレンはそう言った後、普段とはまた違った不敵な笑みを浮かべた。出た、とミナミは息をのんだ。この幼いながらも獰猛な彼女が勝ちを確信したときに見せる表情。カレンがこの顔をしたときに立っていた敵を、第二師団は未だ見たことが無かった。

 「じゃあ、派手に行こうか!」