大好きな友人が、とっても好きだという劇団さん「デス電所」さん。
3月21日~4月1日まで下北沢で公演されていた最新作、「ジョギリ婦人」を観てまいりました。

元々関西で旗揚げされた劇団で大阪を拠点にされていたということですが、昨年いよいよ満を持して東京へ舞台をうつされた劇団とのこと。
以前観に行ってすごく良かった、ピースピットの末満健一さん作・演出の「有毒少年」の音楽も担当されたというデス電所さん。


「怖いのとか、痛いのとか大丈夫?」と何度も尋ねてくれる友人…。
メインビジュアルの鋏、あらすじ、「ジョギリ」婦人…
なるほど、割と血の表現とかあるお芝居なのですね。
でも舞台だし、まあそこまでキテしまう感じではないでしょう、と思っていました。




『割と』じゃなかった。




非常に強烈な舞台でした。
あれは舞台でなくては観られない、舞台ならではの表現、演出だと思います。

すべての公演が終わられたのでネタバレを交えつつ書かせていただきたいと思います。

ある男が鈍器で殴られ倒れ、それを運ぶ二人―。
ジョギリさんの歌とダンスから始まる舞台。口裂け女に代表されるような、この世界での都市伝説のようなもの。

そしてある家の部屋から始まる、静かな冬の日。
二人の夫婦の、夫婦らしい会話から始まります。
部屋には、ランドセルやうわばきや集金袋…子供のものが飾られています。
移住話と、子供を作ろうねと話をする夫婦、奥でガタガタ言っている段ボール。
そこへやってきた移住は認めないという夫の従妹。決意した夫婦の心を変えようとする従妹。
ガタガタと動く段ボールに「何の音?」と怪しむ従妹。
夫婦は「もう決めているから」と段ボールを開けると、中からは猿轡をされ縛られた男が。
夫婦はその男をくくりつけ、証拠不十分で不起訴になった男に「殺された娘の復讐」として拷問を始める…。



犯人の男が出てくるまでは、穏やかに、そして色々なツッコミも入りながらテンポよく楽しく物語は進んでいきます。


視覚的な強烈さが強く、刑事モノや医療モノなどで血の表現は比較的平気な方の人間なのですが生の舞台、空気感ということもあるのでしょうか。結構「あー!痛い!」という感じでした。隣の隣の方はそういった表現が出る度に「怖いー」「いやー」と仰ってました。

苦手な方もいらっしゃると思うので誰にでもオススメはできないですが、その「痛い」「怖い」を観客に感じさせられるのは、単純に『血糊の多さ』だけではないんだなと思います。怖いとは思いませんでしたが、とにかく痛かったです…。凄いです…。
激しい血飛沫まで出た舞台は私が観てきた限りでは本当に初めてでした。
余談ですが、演じられる方は楽しそうだしやりがいがありそう(勿論大変そうでもありますが)。。。

物語としての感想は、血の表現がもうちょっと少なければ、私としては良かった~!となるところだったのですが(^^;)正直言うと視覚的には若干きつかったかも。
でも、あの物語のテーマをしっかりと、より魅力的に、そして観客に『何か』を持って帰らせるにはあのくらいが必要なのかもしれません。絶対に忘れられない舞台になりましたし。

ジョギリ婦人の正体については早々に感づいてしまいましたが、そこに至るまでの経緯、人の狂気、愛が憎しみを芽生えさせること、見えていない事の裏側、裏切られた恋心(ただし逆切れでもある)、『悪』を作らねばならない世の不条理…などなど…。

子供と夫を大切にし、愛している一人の母親が、大切なわが子を殺され、想いが強すぎてタガが外れ、人の道を踏み外してしまった悲しき「ジョギリ婦人」となり、そしてまた巡っていく…。
幾人ものジョギリ婦人が子供のために、愛のために、「悪いもの」を斬り落としていくのでしょうね。。。
火の鳥「異形編」の、何度も同じ運命を繰り返す八百比丘尼を思い出しました。

主人公である紗絢の変化には圧倒され、ラストの自分の影であるジョギリ婦人と二人並ぶ部分はゾクゾクしました!
私自身の好みでは、娘を殺したリーの方のお芝居がいいなあ~と思いました。
それから、薫ちゃん。最初はなんだかちょいダサめの固い雰囲気を醸し出していたのに、偽ジョギリ婦人に変わった時の妖艶さ!ヤラレます(笑)
テンポと、明るい部分と暗い部分との落差がすごいです。




ちょっと偉そうかつ失礼な言い方で申し訳ないのですが(ホントすみません…)、やはり関西から満を持して拠点を東京に移られただけあって、レベルが高いなあと感じました。
1時間40分ということでしたが、ビックリする程密度の濃い、いい疲労感と満足感の残るお芝居でした。
この余韻は残りますね。
友人が中毒になってしまうのが、よくわかります。

デス電所さんの他のお芝居を拝見していないのでどんな引き出しを持たれているのかまだわからないのですが、年表を拝見する限りコメディっぽいものもやられていたりするのでしょうかね…?
次回公演も拝見してみたいです。

割とチェーンソーとか鋸とか出てきそうなお話が色々ありそうですが、そういったのがお好きもしくは大丈夫なお芝居好きの方はぜひこれからのお芝居をチェックされてみてください♪