zeBrAは4月5日を持ちまして閉鎖させていただきます。


理由としては高校2年生になり、さらに忙しくなってなかなかお話を書くことができなくなること。


zeBrAはお話メインのブログなので、そうなるとやっていけないのです。


これからは恋のウタ、あなたに届くその日まで。 という私のメインブログのほうでたまにUPしていく予定です。


どうぞそちらのほうも見てやってください。恋ウタ。ではりょうというHNです。


今まで暖かく見守ってくださった方々、短い間でしたが本当にありがとうございました。



                          06*04*05 杏

小さな丘に一人たたずむ少女。真っ白なシャツに赤と金のストライプのネクタイを締めている。

あたしは、彼女を知っている。


風が吹いて少女の茶色いチェックのプリーツスカートが楽しげに揺れた。

それは月夜野魔術神近術総合専門学校―――――――通称、月専の制服だった。


その風と共に音もなく降り立つ人影。長身に細めのシルエット。はたから見れば、流行の服をさらりと着こなして、笑顔で雑誌の表紙を飾っているファッションモデルのようである。しかしその人は少女と同じスカートの代わりに、ズボンをはいていた。

少女は彼を見るとふわりと微笑んだ。


「…竜次」


それが彼の名前だった。

題名の由来


ミルクチョコレート…甘い。かわいい。甘えんぼ。

ビターチョコレート…苦い。かっこいい。ブラック。


まぁ簡単に言うと、典型的なAB型・輝睦の二面性っていうか二重人格を表している

ワケです。輝睦は姫絵のことを無意識に振り回すキャラなんで、題名に持ってきちゃいました♪




登場人物


浅倉 姫絵(あさくら きえ)  158㌢AB型


1年C組。剣道部、バスケ部に所属。小さい頃から空手をやっている。

空手はすでに黒帯の腕前。さばさばした性格で、ベタベタすることを好まない。

かといって、冷たいわけではなく、とても親しみやすい女の子。

そのせいで男女問わず人気者だけど、恋愛に発展することはなかったり…。


ぁたしの友達がモデル。本人も自分のことを<うち>って呼ぶ。

ちなみに口癖は<うちも思ったー!><わかるわかる!>など。



宮定 輝睦(みやさだ てるちか)  157㌢AB型


1年D組。小さい頃からピアノを習っていて、今やかなりの腕前とか。

姉・姉・双子の姉(睦美)、の後に生まれた宮定家待望の男の子。とにかくかわいい。

特に上2人の姉にかわいがられて育ったため、甘えんぼで、その仕草は女の子

っぽいところがある。しかし、天然な反面ブラックな一面を持っている。

ちなみに本人は気づいていないが、白樺高校には彼のファンクラブが存在する。


モデルは特にいないかなぁ~。姫絵のモデルの子の好み+ぁたしの好み÷2

ってかんじ。



宮定 睦美(みやさだ むつみ)  154㌢A型


1年C組。姫絵とは同じクラスで親友。輝睦とは二卵性双生児なのでそれほど

似てないが、彼女もかわいらしいく、それでいて性格は大人っぽい。

甘えんぼで、男らしさゼロの輝睦に呆れながらも、彼のことを誰よりも心配している

良き姉。

何、これ――――。
そこには予想を遥かに越えた光景が広がっていた。

異様。そう、ただただ異様としか言えない空気が漂っていた。


最初に目に入ってきたのは肩から血を流した、睦美。かばうように立ちはだかっているのは、お調子者のサトルだった。その姿は何者にも屈することのない気迫を感じさせている。信じられないほど、強い眼差し。それによって“ヤツ”はこれ以上近づけないでいた。

そしてその視線の先には“ヤツ”――――黒ずくめの男がいた。姫絵はゆっくりとこちらを振り返る男をじっと見つめた。焦点の合わない目。ボサボサの髪。伸びっぱなしのヒゲ。そして手には大きめのナイフ。それは睦美の腕から奪い取った液体で真っ赤に染まり、ぎらぎらと不気味な光を放っている。

こいつ、やばい。
輝睦と姫絵は顔をしかめる。


「お、なんだ?カップルか?昼間っからイチャイチャしやがってよぉ」

出入口に立ちつくす輝睦と姫絵に狙いを絞ったのか、男はナイフをもてあそびながらゆっくりと近づいてくる。1歩、2歩……。

「下がって、輝睦」

「な、なんでっ」

「うちが空手黒帯なの知ってるでしょ?」

姫絵がニヤリと笑う。でも輝睦はそれだけの理由で納得することはしなかった。いくら姫絵が空手の有段者であっても、相手が相手だ。結構がたいのいい男で、おまけに刃物まで持っているときた。いくら彼女でも危険すぎる。

「ダメだよ、そんなの」

姫絵は、1歩前に出る輝睦を押しのけるようにして前に出た。それを見て、男は唇の端を片方だけ吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。それに呼応するようにナイフの刃先がギラリと光る。

「おまえがそのちっこいのを守るってか?ははっ、笑わせんな」

姫絵はゆっくりと近づいてくる男を睨みつけた。男が相手が姫絵をただの女子高生だと思って油断している今、彼女にもこの状況を打破すべく考えがあった。

「恋人ごっこはもう終わりだ」

「それはどおかなっ――」

姫絵が男の隙をついて得意の上段蹴りをお見舞いする。鮮やかに弧を描いた彼女の長い脚は男の手からナイフを落とした。はずだった。


「―――っ!!」

「あんなにはりきってたのに、この程度かい?」

「姫絵っ!」

輝睦がほとんど悲鳴のような声をあげた。すぐさま姫絵の隣に駆け寄る。姫絵の脚からはポタポタと真っ赤な液体がこぼれ落ち、小さな水溜りを作っている。それ程深い傷ではないが、彼女の空手家としての動きを封じるのには十分だった。その場でうずくまった姫絵に再びナイフが向けられた。男の甲高い笑い声が教室にいた全ての人々の頭痛と恐怖をあおる。姫絵は顔を上げ、男を鋭く睨みつけた。


やれるもんなら、やってみな。
彼女の突き刺さるような瞳は、そう言っているようにも見える。

その強気な態度が癇に障ったのか、男の表情は一変した。先ほどまでの猟奇的な表情に換わり、浮かんできたのは怯えたような弱々しいものだった。



「―――こいつ、薬中だ」

そう言った輝睦は、いつものかわいらしい笑顔からは想像できないような、恐いほど大人びた顔だった。その場にいた誰もが彼の豹変振りに驚きを隠せなかった。これが、あの宮定 輝睦なのか、と。

「え…?」

姫絵が訊き返そうと口を開いた。その直後、ついに男の暴走をかろうじて縛っていた糸が切れた。まるで幻覚を見ているようなうつろな目で、意味不明な言葉を口走りながら、座り込む姫絵に向かってナイフを振った。姫絵は焦った。後ろは壁。左には机。右には輝睦。逃げようにもこの脚では無理だ。ぎゅっと目をつぶり、反射的に両腕でガードする。



痛みは感じなかった。
代わりに誰かの小さなうめき声と、クラスメイト達が息を呑むのが聞こえた。

姫絵は驚いて目を見開いた。最初に目に入ったのは紺色のブレザーを着た小柄な少年。

「輝睦!?」

「姫絵をキズモノにした罪は重いよ…?」

“キズモノ”って使い方間違ってるよ、と突っ込みたくなるがそんなことを言っている場合ではなかった。

「輝睦!ちょっと、手っ!!」

ヒステリックぎみな姫絵の声に、輝睦が彼女の方をちらりと見てから、自分の手を見た。

「ん?ちょっと食い込んでるけど、まぁ、大丈夫だよ」

心配御無用。と、輝睦は笑顔さえ見せて言った。しかし、目だけは男を睨んだままだった。ナイフの刃の部分をがしっと握りしめた右手からは血がとめどなく流れ続けていたが、その目をそらそうとはしない。参ってしまったのは男の方だった。輝睦の手を見て自分がしでかしたことの大きさに気付いたのか、幻覚が消えたのか、へなへなと座り込んだ。

刹那―――輝睦が叫んだ。


「正拳突き!」

何を言ってるんだろうと思いながらも、条件反射で体が動いた。

「はっ!」

気合いを入れるための短い声と共に男の顔面に拳がのめりこむ。男はおそらく失神したのだろう。声をあげることもなく、床に倒れこんだ。サトルがそれを確認すると、クラスにいつもの明るい雰囲気が戻った。睦美の傷もたいしたことはなかったらしく、サトルにその笑顔を向けていた。



輝睦だけはノックアウトされて床に倒れこむ男ではなく、姫絵の方を見て言った。

「やっぱ、姫絵はすごいや!」

その表情はいつものかわいらしい笑顔に戻っていた。姫絵もつられて笑いそうになるが、輝睦の痛々しい手を見ると、

「すごいや、じゃないっ!!」

「へ?」

姫絵を“天然輝睦”という偏頭痛が襲う。ナイフで切った手からは未だに血がにじみ出ているというのに、痛くないはずはないだろう。

「輝睦。手、大丈…」

と、言いかけて姫絵は言葉を失った。

輝睦の小柄な体が姫絵の方に倒れてきたのだ。肩に彼の頭がのっかった。

「ちょ、ちょっと!」

「姫絵…」

姫絵の驚きと動揺が混ざって上ずった声に、力なく反応する輝睦。歓喜の声をあげていたクラスメイト達はそのただならぬ様子に沈黙して、2人の成り行きを心配そうに見つめている。腕に彼の頭をのせ、呆然とうつろな目を見つめ返す姫絵。輝睦は、今にも死にそうな人が寸前に言い残す遺言のように、苦しそうに続けた。


「返事、まだ聞いてなかったんだけど…?」

「返事って…?」

「俺は、姫絵のことが好き。姫絵は?」


うちは―――――。

姫絵は今までのことを思い出していた。
輝睦は初めてデートに誘ってくれた。
そして、その小柄な体で一生懸命守ってくれた。

姫絵の中に暖かいものが溢れ出す。これが“好き”という気持ちなのか、確信は持てなかった。しかし、自分でも驚くくらい自然に口が動いていた。

「好き。大好き」

そして、頬を冷たい雫が伝う。視界が揺らぐ。姫絵は、泣いていた。



「泣かないで」


蜃気楼のように揺らぐ世界の向こうから、輝睦がそう言った気がした。そして、頬を伝う涙を手でぬぐってくれたのもやはり、彼によく似た少年だった。いや、宮定 輝睦、本人だ。驚く姫絵とクラスメイト達とは対照的に、輝睦の双子の姉、睦美は一足先にため息をついた。呆れているのだ。それを気にもせず、輝睦はご機嫌な様子だ。

「やっと聞けた」

「聞けたって…」

姫絵が呆然と訊いた。輝睦はふわりといつもの笑顔を浮かべて、

「姫絵はこれぐらいしないと言ってくれないだろうと思って。俺の演技、どおだった?」


演技!?
あぁ、確かによく考えてみれば首じゃないし、切り傷だけで死ぬわけない。
人間、一度疑ってしまうと、全てが疑わしく思えてくるらしい。まさか、そこでのびている男も輝睦が手引きした仕掛人なのではないかとか、とにかくこの数十分の出来事全てが怪しげなトリックだったような気がして、頭痛がした。

「姫絵?」

姫絵はため息をついた。

「怒ってる?」

無視することに決め込み、黙って目をそらした。
輝睦がむむぅ…と、うなっている。しばらくうなっていたと思ったら、姫絵の耳元に顔を近づけてきた。そして、あの大人びた声で囁いた。


姫絵がバッと輝睦の方を向いた。輝睦はそれを見逃さなかった。姫絵の頬に左手を添えてふわりと口づける。

「………」

「姫絵?」

姫絵は顔を真っ赤にしていた。まるでチークの代わりに口紅で頬を染めたケバイ、モアイ像のように固まっていた。



『キスしても、いい?』

いいなんて言ってない!と、心の中で叫びながら。

この先、どれだけこの真っ直ぐで甘ったるい彼に振り回されるのか想像しながら――――――。




Happy Saint Valentine's Day…?





THE END.

「これ、受け取ってください!」

「はい?」


本日はバレンタインデー。

女の子にとっては一年に一度の勝負の日。
男の子にとっては一年に一度の競争の日。
製菓会社にとっては一年に一度の倍増の日。


毎年チョコレートをめぐり、様々なストーリーが繰り広げられている。


ここ、白樺高等学校も例外ではない。


実際に今、新たなストーリーが始まろうとしていた―――――。




今、自分の前にはクリーム色の布とオレンジ色のリボンでかわいらしくラッピングされたチョコレートがある。そしてそれは隣のクラスの学年一かわいらしい男の子の手にちょこんと乗っていた。そう、男の子の手に。

「宮定(みやさだ)君…だっけ?」

「はい!宮定輝睦(てるちか)っていいます。輝睦でいいですよ」
輝睦はにっこりと笑って言った。笑うとさらにかわいらしい。以外に礼儀正しいんだなぁ、と関心している場合ではなかった。

「ごめん、うち嫌いなんだよね…」

手に乗っている物を指差して言ったつもりだったが、輝睦には見えていなかったらしい。彼の顔から一瞬にして笑顔が消えた。

「あ…ご、ごめんなさい!わざわざ来てくれてありがとう」

そして彼は寂しげな背中を冷たい風にさらしながら、校舎へと消えていった。
その姿を学校のシンボルでもある銅像の側でぼんやりと眺めながら思う。

完璧な勘違いだ。うちはなにもやってない。無実だ。……たぶん。
はっきり言って宮定輝睦とは顔見知り程度の仲だ。友人である睦美(むつみ)の双子の弟が輝睦だった。ただそれだけ。でもとりあえず嫌いではないことは確かだ。うちは、なりふり構わず人を嫌うほど薄情な人間じゃない…はず。



「姫絵(きえ)っ!テルのことフッたんだってー?」

まだお弁当の匂いが残っている教室に戻ってくると、睦美が目の前に飛び出してきた。
車だけでなく人間も急には止まれないらしい。軽くぶつかったが、彼女はそんなことは気にも留めず息を弾ませて言った。双子の片割れがフラれたというこの状況を楽しんでいるように見えなくもない。

「それ、誤解なんだけどね…。ってかなんで知ってるの!?」

すると睦美に手を引かれて隣の教室の中を見渡せる位置に来させられた。前にいる睦美は開けられたドアから体半分ほど教室の中に入り、窓際にいる一際大きな集団を指差した。

「あれよ、あれ」

「何あれ!?」

「テルのファンクラブみたいなものかなー。いつもあんなかんじ。ってか隣のクラスなのに今まで知らなかったの?」

睦美が驚いたように振り返った。

「うーん…」

ファンクラブって…。どうなの?しかもジャニーズって言うより、あれじゃあモー娘!?男子までいるんだけど……。

姫絵は失恋したことがこんなに広まってしまってかわいそうだと思った。アイドルも楽ではないのだ。一度問題を起こせば批難、バッシングの雨嵐…って、違う。大体、姫絵は輝睦のことをフッてはいない。自分は無実だ。冤罪だ。



「邪魔なんだけど」

「えっ?あぁ、ごめんなさい」

ボーっとしていた姫絵はこの微妙に冷たい一言で我に返った。まぁ、無理もない。ドアの前を2人で占拠していたのだから。しかし、この冷気はそれではなかったらしい。睦美は気付いていた。



「あ、浅倉姫絵じゃない」

「はぁ、そうですけど」

「輝睦をフるなんていい度胸ね」

確かに自分は浅倉姫絵というなんだかかわいらしい名前を持ってる割に、男の輝睦よりかわいくないかもしれない。それは姫絵のコンプレックスだった。空手に剣道、そしてバスケをやっている姫絵は女子には人気だったが、男子はみんな友達止まりである。

でも。
あんたに言われる筋合いはない。言いかけた言葉は姫絵の腹の中に収まった。喧嘩をするわけにはいかない。いつのまにか素晴らしく恐い眼力を持った女子達に囲まれていた。さらに、全く関係のない睦美まで巻き込まれてしまっていた。
でもこれだけは言っておきたかった。


「うちはフッてなんかないから。勘違いだよ!」

姫絵は教室の中の集団の中にいる輝睦に聞こえるようにわざと大声で言った。
恐ろしき眼力少女達は予想外の展開に意気消沈してしまったようだ。そそくさとその場を立ち去る姫絵と睦美を止めようとはしなかった。




「じゃあ、あの嫌いっていうのはチョコのこと!?」

「うん」

姫絵は少し気恥ずかしそうに笑った。

「なぁーんだ、よかった」

隣で頭の後ろで手を組んでいる輝睦も嬉しそうに笑った。



あぁ、のどかだなぁ。
ときどきノートにブスとか書いてあるのを除けば。

なんか、幸せかも。
この際、移動教室のとき眼力少女達に足をかけられそうになって避けたら恐ろしい目つきで見られたことは忘れてしまおう。


―――――って完全にイジメじゃん。


「―――だけど、いいかな?…浅倉さん?」

姫絵はボーっとしていて最後しか聞き取ることができず、「姫絵でいいよ」と言いつつ何やら返事を待っている様子の輝睦に聞き返した。彼は少しも面倒くさそうな顔はせず、にこやかに答えてくれた。

「来週の日曜日に『ヘルニア国物語』が公開されるでしょ?あれ、結構面白そうだと思うんだ」

「それ、うちも思ったー!」

姫絵が大声を出した。

「じゃあさじゃあさ!もし暇だったら一緒に観に行かない?」

「え……う、うん」


姫絵ははっきり言って戸惑っていた。男の子にデートに誘われたのなんて初めてだったのだ。


「よっしゃ、初デート!」

輝睦は子どものようにはしゃいで、姫絵の手を握ってきた。彼なりのスキンシップなのだろう。なぜか嫌な感じはしなかった。むしろ暖かくて気持ちいいくらい。


「姫絵の手、冷たいっ。ごめん、寒かったよね?」

まぁ確かにここは教室棟の隅にある空き部屋。季節はまだ2月半ば。冬に暖房器具と人気のない所は室内と言えど極寒の地。寒くないといえば嘘だった。姫絵は苦笑した。

「ちょっとね」

「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

手はまだ繋いだままだった。
空いているほうの手でドアをスライドさせて、レディファースト。先に部屋の外に出してくれた。意外とジェントルマンなんだなぁと思い、自然と笑みがこぼれる。他人が見ていたら絶対変なヤツだと思われただろう。



空き教室から一歩廊下に出ると、そこには普通ではない空気が流れていた。
いつもなら迷惑なほど騒がしい生徒達も、ブラスバンドの練習の音も、世界が音を失ったんじゃないかと思うくらい何も聞こえない。

「ねぇ、なんでこんなに静かなわけ?」


姫絵が独り言のようにつぶやいた。

「さ、さぁー?」

かろうじてうちと輝睦はまだ音を出せるみたいだ。
辺りにあるのは大事なものをなくしたいつもの景色と、かすかに残る弁当の匂いだけ。


「とりあえず教室戻ろうか」

「うん」

2人はゆっくりと歩き出す。教室までは7~8メートルほど。一歩一歩近づくにつれて手に込められる力が強くなっていく。強く握られた手から輝睦が緊張しているのが伝わってくる。それでも自分の手を引いて前を行く彼の姿を、姫絵はじっと見つめていた。湿った手でその手を握り返しながら。



「開けるよ…?」

輝睦が扉に手をかけながら問い掛けた。

「う、うん」


輝睦はそのまま勢いよく扉を開けた。

一気にスライドした扉は音をたてて完全に開ききった。





To Be Continued...