恋愛セオリーなんて誰が決めた 25 | KIRAKIRA☆

KIRAKIRA☆

こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。



『あんな色気のない女に欲情するとか冗談じゃないぜ。せいぜい家政婦としか使い道ねーって』





目を開けて、眉間にシワがよっている事を自覚していた。


最悪の夢


いや、夢というよりも実際にあった過去の記憶


ここしばらく見る事はなかったけど、以前は連日の様にうなされては、飛び起きて、怒りに身を震わせていた。

今それをしたら、隣に眠る彼を間違いなく起こしてしまうだろけど、内に秘めるにはこの激情はあまりにも大きい。


「・・・・・・・・・・・サイアク」


かろうじてぽつリと呟くだけで抑えられたのは、次第に暗闇に慣れだした視界に飛び込む寝顔が焦点があってきたから。


もう何度過ごしたか数える気にもならない寝室で、自分を抱きしめて眠るぬくもりにもすっかり慣れてしまった。

綺麗な寝顔に、閉じられた瞳。


ふと、その瞳がこの寝室でのみ色が変わる事に違和感を抱かなくなってどれぐらい経つだろうと思う。


普段はカラーコンタクトで隠されている本当の瞳について聞いた事はない。

別に何か牽制された訳では無いけど、何となく踏み込んではいけないと勝手に思っているだけで。


それはあの夜中の蓮の様子と同じに・・・・


はぁ・・・・とため息をが無意識にこぼれた。


お互い様よね・・・・



初めてカインとして会って、抱かれたあの日。

断片的な事は口にしたが、それでも詳しい事を話した訳ではない。

あの時はそれでよかったが、それ以降蓮があの日の事を聞いてきた事はない。


きっと薄々察してはいるのかもしれないけど・・・・



ぐっすりと眠っている蓮の様子に、ふと欲求が湧き上がった



今起こしたら再度自分を抱いてくれるだろうか




自分で自分の考えに自己嫌悪して、無理やり瞳を閉じた。






椹に大歓喜されたCMオーディションから、さらに言うのならその後蓮からひどい目に遭った(なんせ翌日丸一日ベットの住人とされてしまったのだから)日から、それほど日にちを経る事もなく、撮影の打ち合わせ日が決まった。


その間に男性バージョンの出演者も決まったらしいのだが、それは当日までのシークレットだと教えられる事はなかった。

いつもの流れだと、このCMシリーズは女性は新人をオーディションで起用し、男性はかなり大物をあてるとの事だが・・・


ま、聞いても判らないかも・・・・私芸能界未だに疎いし・・・


流石にLME所属の人は大方覚えてきたけど、その他になると自分が関わっていなければ、どんなに有名だと言われてもさっぱりな人が多い。


そんな訳で、当日顔を合わせて失礼な態度を取らない様気をつけなきゃ・・と少々打ち合わせに向かうキョーコは気を引き締めていた。


先日大御所歌手に向かって、大御所俳優と勘違いして「どんなドラマに出ていらっしゃるんですか」と大呆けをかましたばかりなのだ。

あれは、椹にこってりと怒られてしまった。


くれぐれも今日の打ち合わせでは相手を怒らせない様に!

下手したら君はすぐに降板交代だからな!!


今日も今日で散々鬼の形相で念をおされたばかりだ。


「うう・・・私だってちゃんとオーディションで権利を勝ち取ってきたのに・・・」


私の価値ってそんなに軽いの・・・・・と少々ふてくされつつも、それがこの世界だという事も理解はしている。


こんなまだまだダメ息程度で吹けば飛ぶ紙切れぺーぺーなのだ。



まだまだ・・・・そう、まだまだ・・・・アイツの所までは・・・



思わず思い至ってしまったのは先日の夢のせいだと言い聞かせつつも、その事実に内側に焦りを感じずにはいられない。



『へえ君は目の前の階段を上がる事もせずに、エレベーターで一気に屋上へ行けると思っているのかい。まったく妄想は寝言の中だけにして欲しいね。それとも居心地のいい夢の中に行きたいのなら、今すぐにでもベットに沈めてあげるけど?』


いえ、遠慮しておきます!


・・・・・・・・・・・って、ハッ!何、自分の想像に自分で突っ込んでいるのよ!


でも、敦賀さんならそう言うわよね。

どんな仕事にも全力で取り組んでいるし、確かに思考が最終的にいつもエロ魔人化するし・・・って、それは置いておいても!


とにかくダメダメ!しっかりするのよ。キョーコ!まずは目の前の仕事を全力でやり切ることが大事なんだから!!


よし!と気合を入れて

指定された控え室の扉をノックし、返って来た返答にドアを開ける。

「おはようございます。LMEの京子です。よろしくおね・・・・・・・」




お辞儀をして挨拶を口にしつつ顔をあげた瞬間、思わず言葉が途切れた。



どくんと心臓が鳴る

息が一瞬で詰まる



部屋には何人かの関係者がいたのに


その一番奥に座っていた人物に真っ先に釘付けになる。



忘れる筈がない

ずっと一緒だった


かつての私の世界の全てで



そして、誰よりも憎んでいる


先日の蓮の言葉が脳裏に蘇る。


『本当に君は騙されやすいね』



ええ、そうよ


そんな事身に染みてわかっている



目を見開いた先にいた人物

不破尚



思わず形を作った唇は音になる事は無かった。







顔合わせと撮影の企画書を手に段取りと打ち合わせ。

会議室でのやり取りの中、アイツは目を伏せて企画書に黙って目を通しているだけだった。

監督に言葉をかけられて、言葉少なく返事をする様は、アイツが本性を隠して「クールぶっている」だけだという事をよく知っている。


そう、最初の挨拶以来こちらにも全く視線をよこさないけど

気づいていない訳がないわ


京子として会うのは初めてだけど、それでも



ずっと一緒に過ごして、一時は一緒に住んでいたのだから



くっ・・・・すかした顔をしているけど、内心焦っているに決まっているわ。

自分の悪行がいつばらされるかと、怯えているがいいわ。


まあ、正直ここで会うのは予定外だったけど、本当はもっと上にいって、こいつを見下ろせる所まで行ってからと思っていたけど、こうなっては仕方がない


ここで会ったが百年目!!!



これは天が与えた復讐のチャンス!



見てなさいよ~ショータロー・・・ッ!!

まずは、そのスカした化けの皮を・・・・・


「という事で、何か質問はありますか?京子さんはこれが初めてのCM撮影だったよね?大丈夫?」


「え・・・・ッ!あ・・・・はい!大丈夫です!問題ありません!」


アブナイアブナイ・・・・


思いっきり邪念に囚われていたわ・・・・う・・・なんかプロデューサーの視線が「この子大丈夫かな」的なものになっている気がして痛い・・・・


ダメよ!ここで降板なんてさせられたら、せっかくの復讐のチャンスが!


「しがない新人ですが、大先輩の不破さんの胸を借りるつもりで頑張ります。よろしくお願いします」


敦賀さん直伝(というか勝手に見て覚えただけだけど)の似非キラキラスマイル(どうせキラキラ度は足りないでしょうけど!)で、思いっきりショータローに笑顔を向けてやる。


ふ、「何を企んでいるんだ、コイツ」みたいに怯えればいいわ・・・



・・・・・・・と思ったのに、あいつは僅かに顔を上げていつものキザなかっこつけの顔でフッと笑うと


「・・・・・・・こちらこそ、よろしく」


「・・・・・・・・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・チッ。この程度じゃ表向き動じないとは、猫かぶりスキルを上げているみたいね。




そこで、ふと大事な事に気がついた。



ま、まさか!こいつのこの表向きの余裕!

もしかして、この会議が終わった後事務所の力やらトップアーティストのコネやらで私の事を降板させる気じゃ!

そうよ、私がいなくなれば自分の悪事が露見する危険性を排除できる訳で

臭いものには蓋ならぬ、臭いものはゴミステーション!?


という事は今のは「今はせいぜい無駄な企みをしてやがれ。どうせ次なんて無いんだからよ」という意味の笑みだった訳!?


くっ!嫌な事から逃げる癖のあるコイツらしい考えかも!



今度はさっきとは違う意味で頭上に暗雲がグルグルとトグロを巻いていく



そんな事絶対させるもんですか!でも!どうせ私は吹けば飛ぶペーペーで、この世界は弱肉強食で、いやでも一応私だってLME所属で、でも・・・・ッ!


「京子さん?京子さーん?」


「え・・・あ・・はい・・・!」


「じゃあ、当日まで体調管理だけはしっかりね」


「・・・・・・・はい・・・・」



当日・・・・当日が私に来るのかしら・・・・



一転して自分が崖っぷちに立たされた気分に腹立たしさしか感じない。

どうしよう、いっその事コイツとの関係を今の内にぶちまけておけばコイツが私を降板させる事はしないかも・・・・なんたってカッコつけだし


でも、それは嫌!コイツとの関係なんて、最早私の人生の真っ黒クロスケ・・・


「じゃあ、お疲れ様。当日よろしく京子さん?」


どうしようかドツボに嵌っている内にアイツは会議室を出て行く。

何?今の挨拶・・・と笑み・・・・・


あの意味深な笑みはやっぱり・・・!


「・・・・・・ッ!」



考えるより前に控え室を出てアイツの後を追いかける。

何を言ってやろうかなんて頭になかったけど、このままで終わるのは許せなかった


あんな・・・・



「ごめんなさいね。尚一人にさせて。打ち合わせ問題無かった?」



廊下を少し進んだ所で聞こえてきた声に思わず足を止めた。

この声は聞いた事がある。


忘れたくても忘れられない・・・



「だーいじょうぶだって。祥子さんがいなくてもあれぐらいの顔合わせ問題ねーよ」



そっと角から顔を出すと、予想通りそこにはショータローとアイツのマネージャーの安芸さんの姿。

そういえば、あの人会議にいなかったわね。

ショータローに気を取れれすぎていて気づかなかったわ。


「打ち合わせ終わったのか?」

「ええ、尚も問題無かった?あの・・・ええと・・・共演するLMEの新人の子だっけ?大丈夫そう?」


出てきた自分の話題にドキリとした。


安芸さんは私の事も、アイツとの間に何があったかも知っている。

という事は、アイツ今度こそ私の事を面白ろおかしくバカにして、こき下ろして、最後に私の事を降板させろとか安芸さんに言うに・・・・ッ!



「・・・・・あ~・・・・なんつったけな?名前・・・一応さっきまでは覚えていたんだけど・・・・なんか地味なパッとしね~奴だったな。ま、無名の新人を起用ってのが売りのCMだから敢えて、ああいう垢抜けないのを選んだのかもしんねーけど・・・選ばれたのは完全事務所の力だな」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?



「あら。ちゃんとオーディションしたって聞いたけど?」

「出来レースに決まってんじゃん。じゃなきゃあんなのが合格なんて無理無理」


ああ。でも・・・・とクツリと笑う音が聞こえる


「どうも俺のファンっぽいぜ。俺の顔見て最初固まっていたし、その後もすげー意識向けてきていたしな」

「もう、相変わらずそういう視線には敏感なのね」

「ま、ああいうのタイプじゃねーし。ちょっと遊んでやるってのも、面倒が残りそうだからな。テキトーに愛想振り向いたやれば喜んで張り切るだろ」


「悪い男ね。そのうち後ろから刺されるわよ」


「大丈夫だって、その辺は上手くやるから。今までだって祥子さんの手を煩わせてねーだろ?それにやっぱり一番は祥子さんだし」

「まったく・・・・」



次第に遠ざかる声と足音



それをどこか他の世界の音の様に聞きながら




呆然と




そこから動く事が出来なかった







 


一日の仕事を終えて帰宅した蓮は、玄関に並べられた靴をみて、わずかに目を見開いた。

見覚えのあるソレに、一瞬首をひねる


今日は呼び出していなかった・・・・・よな?


思いのほか早く終わったが、本来であればてっぺんを超えるスケジュールだったのだから。


疑問を残しながら灯の漏れるリビングに入ると、予想通りの人物がソファに座っていて無意識に口元をほころばせる。


「やっぱりキョーコだった。珍しいね」

「・・・・・・ご迷惑・・・でしたか・・・・?」


「いや?合鍵渡しているんだから、いつでも来ていいと言っていただろ」


珍しいと言ったのは、キョーコが連絡をせずに来た事だ。

いつも蓮が呼び出すか、事前に部屋に行っていいかという連絡があるからだ。

蓮は気にしないと何度も言っていたのだが、そこは彼女なりの境界線をひいている様だった。


だからこそ少しご機嫌に首元に巻いていたネクタイを外しながら、ソファに座るキョーコの隣に腰を降ろす。


そこで、初めて彼女の様子が違う事に気づいた


どこか生気のない表情

見ている様で見ていない虚ろな瞳

纏う空気の重さ


「・・・・・・・キョーコ?」


いつもと違う様子

明らかにおかしい様子に思わずキョーコの手をとり、顔を覗き込む


自分に気づかせる様に


それが功をなしたのか、のろのろとキョーコは蓮の方へ顔を向け



ゆっくりと言葉を紡いだ





「敦賀さん・・・・・・・シましょう?」






参加しております☆ぽちっとお願いします☆

↓↓↓


スキビ☆ランキング