欲 【後日談】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。



「俺の眼は節穴じゃねーと言っただろーが」


「・・・・・・・知っていますと言ったハズですが・・・」



勝ち誇ったようにニヤニヤと笑う雇用主に対して、一社員は憮然として答えた。


先ほどまで担当俳優のスケジュールを調整しまくって、それが終わったのを見越したようにタイミング良く呼ばれた社長室。


そこには全てをお見通しの自称・愛の伝道師


いや、もはやこうなると自称は外してもいいかもしれない




「社長だったんですね・・・・あのモデルの事務所に圧力かけていたのは」


「お前は口割らねーし、蓮も最上君も何も言ってこねーし・・・俺は悲しいぞ!」


盛大にわざとらしく嘆くフリは質問の答えにはなっていなかったが、ほとんど確信した質問だった。

そんな事が出来る人間など元々限られている。




「で?蓮の容体は?」


わかっていて聞いてくるのは、単に体調だけを聞いているのではないだろう



「特効薬と一緒にマンションに押し込んでいますよ」



これこそ怪我の功名、雨降っ次固まるだな!と豪快に笑うローリィに社は苦々しい顔を隠せなかった。


そんな能天気な台詞で済ませられるか!と叫びたいぐらい、ここ三カ月の蓮の様子はすさまじいモノだったのだ。



朝マンションへ迎えに行けば、ソファでボンヤリと座りこんでいる。

明らかにベッドで寝た様子はなく、問い詰めればしぶしぶとあのベッドで一人で寝たくない。夢見が悪くて寝るのが怖いと白状した。


キョーコが出て行った夢を見るんです・・・・と弱弱しく呟かれれば、それ以上何も言えない


元々皆無に等しかった食欲は壊滅的で、何か食べ物を見るだけで真っ青になる。

それでも義務的に口に入れれば、戻してしまう始末



なんとか仕事をこなしたのは感服していたが、むしろ仕事中の方が余計な事を考えなくていい分楽なのだと気付いた時は後の祭り

仕事が無い時間が耐えられなくなっていた。



全く・・・本当に良かった・・・・



キョーコのあの呟きは、聞く人が聞いたら笑い話というぐらいの内容なのに、全く洒落にならないとは自分が一番よく知っている



「最上君が最近使っていたマンスリーマンションは引き払って荷物を運ばせておくから、存分に看病してもらえ」


・・・・・・・そうですが、そこまで貴方はお見通しだったんですね



と文句の一つでも言えば反撃される事は必須だったので、それは押し込める。


何はともあれ、周囲への助力を求めずに自分の力でどうにかしようとしたのは蓮で、社長はそれを判っていながら表面上は何もしなかった。

それが、社長の蓮へのエールだったのか、罰だったのか


自分の様な凡人には判断がつかないが




失礼しますと部屋を出て行こうとした背中に、「そうそう、あのモデルの事務所には約束を反故したって事で再度圧力をかけておいたから、その辺りの心配はいらねーぞ」と言われ、つくづく敵わないな・・・と溜息をついた。


LMEの社長を怒らせたのだ。あのモデルにはニ度と会う事はないだろう。










三か月ぶりに戻ったマンションの一番の変化は、バーカウンターに並んでいた高級酒が一本も無くなっていた事だった。


「禁酒しているんだ。お酒も見たくないって全部処分しちゃってね」


視線の先に気付いた社がそう耳打ちしてきて、複雑な気持ちでぐったりする蓮を見やった。




自分がどれだけ蓮にとって大きな存在か




そして、その事にどれだけ自分が無自覚だったか


今回の事で十分に思い知らされて・・・・・それを単純な喜びとするには少し抵抗もあった






「・・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・」


社が事務所に戻った後、予想通り空っぽの冷蔵庫を見て、溜息と共にぐったりと目を閉じている蓮に「ちゃんと寝ていて下さいね」と声をかけて身をひるがえそうとすると


凄い勢いで腕を掴まれた


「どこに行くんだ?!」


焦った声と掴まれた腕の強さに驚いた



「・・・・・・・・下のスーパーに・・・冷蔵庫何も入っていないじゃないですか・・」



突然の事に驚きながら呆然と呟くと、蓮は横にしていた体を起こした。


「一緒に行く」


「え?!何言っているんですか!貴方は絶対安静です!!」


「じゃあ行かなくていい」


「それこそ何言っているんですか!まずその水分と医薬品しか入っていない体を戻さないと!」



イラッと言葉を強くすれば、蓮は逡巡した様に瞳を揺らした。

自分の言葉の理不尽と現状が判らないほど、盲禄はしていないらしい。


一体何がどうしたのだろう・・・と首をかしげると、蓮はゆっくりと顔をあげた



「・・・・・・・戻って来る?ここに・・・・」



う・・・・わ・・・・・・ッ!!



まるで捨てられた子犬の様な不安げな表情と言葉に、キョーコは頭を抱えてその場でしゃがみたい衝動にかられた


ななななななななんなのよ~!!!!



”この人私がいないと生きていけないんじゃ”



昼間呟いた言葉が思い起こされる



それは甘い甘い呪縛



大事な存在だと思い知らされるくすぐったい気持ち



ちょっとした優越感



だけど





「・・・・・・・・・・・戻ってきますよ。ここが私の家ですから」


だから、出て行った後も新しいマンションを探さなかった。

マンスリーマンションで済ませていたのは、怒りの中でもどこかでここに戻って来る気持ちがあったからなのかもしれない。


結局離れきれなかったのは自分も同じ



意地を張って許せなかったのも、この人への想いがあったから



それがここまで大事にしてしまったのだけど




「・・・・・・・・・敦賀さん・・・・」


未だ不安そうな表情の蓮を真っ直ぐと見据える




「私ももっと強くなりますから、敦賀さんも・・・・・・頑張ってくださいね」



強くなって下さいとか、しっかりして下さいとか言葉がいくつか浮かんだが、どれもしっくりこなくてそんな言葉になってしまったけど



だって気持ちに欲が出てしまった。






蓮に言いたいことが伝わったのか判らなかったが、未だ手を離す事に躊躇する様子が伝わってきたが、その手首の細さに、思わず眉をひそめた



「・・・・・・・・言っておきますが、睡眠欲と食欲を取り戻すのが先ですからね」


「え?」



「その二つが完璧に戻らない限りは残りの一つはお預けです」



「「・・・・・・・・・・・」」




しばらくの沈黙の後、やっと意味が伝わったのか蓮はしぶしぶとキョーコの腕を離してベッドに横になった。



「・・・・・・・・・和食がいい」


しばらくして、ぽつりと呟かれた言葉にキョーコは噴き出しそうになる。



食事のリクエストなんて普段からされた事がほとんどない


それで「食欲」をアピールしているつもりなのだろうか



「張り切って、たっぷり作りますね!」



にっこり笑えば、蓮の顔にわずかに冷や汗が流れたが、気付かないフリをして寝室を出た。







”敦賀さんは私のです!!”




だって気持ちに欲が出てしまった




嫉妬なんて私にはしてはいけない感情だったのに、そんな欲を植えつけたのは貴方






だけど、それをもう貴方のせいにはしたくない








これから先も貴方といる為に








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