※10万HITリクエスト!ぼの様から頂きました☆
車の中で蓮は一言も発しなかった
どこに・・・と連れて行かれたのは蓮のマンションで、朝出て行ったのが遠い昔の出来ごとに思えた。
あのときは胸を引き裂かれそうな気持で出て行ったのに
今は・・・・なんというか別の意味で覚悟を決めて入っていく
「・・・・・・・・着替えてきて」
いつの間に用意したのか、渡されたのはワンピースの入った紙袋。
自分のウェディング姿を今更ながらに思い出して、それをジッとみている蓮の視線を感じて慌ててキョーコは紙袋を抱えてゲストルームに駆け込んだ。
蓮としてはあんな忌々しいモノ引き裂いてでも脱がしてやりたい所だったが、一応最上家の・・・つまり、キョーコにとっては祖母や母の形見にもあたる。
かろうじて踏みとどまったという所だった。
そして、そんな蓮に気遣いにも気付いていたキョーコは今更ながらに罪悪感がのしかかってきた。
・・・・・・・ど・・・どうしよう・・・・
なんだかとんでもない事に・・・・・・
あの場で蓮が言った事は全部本当?
自分は本当に尚と結婚しなくてもいい?
それで本当に蓮に迷惑をかけない?
自分は・・・・・本当に・・・・・・・自由?
「キョーコ?」
ぐるぐると思考の箱に入り込んでいたキョーコが出てくるのが遅いと、蓮が部屋に入ってきた。
「あ・・・・・」
「終わった?コーヒー入れたよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・それとも、今ここでやり直しされたい?」
「ッ!!いえ!!今行きます!!」
雰囲気の変わった蓮に本気を感じ取り慌ててキョーコは寝室を出た。
とにかく今は解消すべき疑問が山づみなのだ
・・・・・それに・・・・蓮の怒りを受け止める事も・・・・・
「君と一緒にあの業者へ商談に行った時、疑問には思っていたんだ」
改めてリビングで向き合い、コーヒーを口につける
ミルクと砂糖の入ったソレは、キョーコの好みに調整されていて、いつの間に覚えたんだろう・・と思った。
淡々と話す蓮が逆に怖くもあったが、取り敢えず今は黙って聞いていた。
「小売業をしている訳でもないのに、あれだけの特殊なタイルを大量にもっていたのは、もしかして滞留在庫として抱えていたからじゃないかって」
売れる見込みのない・・・おそらく、発注ミスかキャンセルか・・・なんらかのトラブルがあり残ってしまった商品。
そういう商品はどこの業者でも尽きないものだが、それが膨らむと経営不振の遠因となる。
多ければ多いほど、経営力の未熟さがそのまま反映されてしまう。
「調べてみて案の定だったよ。ただ、会社自体はとてもいい。古い体質に囚われてもいないし、経営陣も最近変わったばかりで何とか打開策を見つけようとしていた。」
そこで、ちょうど宝田コーポレーションの事を思い出してね。
「それに、あの業者には悪意を感じていたし、不破家が・・・不破尚が君を簡単に手放すとも思えなかった。まさかとは思ったけど・・・・・案の定だったよ」
あとはさっき言った通りだよ。と言われ、キョーコは今更ながらに、自分の知らない所でそんな動きがあった事に、そんな事をしていた蓮に素直に感嘆にも近いため息が出て来た。
ここ最近ずっと忙しそうだったのは、そういう事だったのかと、思う反面何かが引っかかった。
それを手繰ろうとしたが、その正体をつかむ前に
「俺の誤算としては、まさか結婚式がそんなに早いとは思わなかった事だね」
一気に低くなった周囲の温度に、ひゅっと息をのんで固まってしまった。
それは・・・・確かに、言わなかったのはワザとですが・・・・
「どうせもう破棄するんだからと、具体的な日程自体に興味が無かったといえばそれまでだけど、君も全くそんな素振りを見せなかったからね」
・・・・・・・はい。その通りでございます・・・
チクチクと感じるトゲは気のせいではないだろう。
思わず身が小さくなっていく気分だ
「確かに思わぬトラブルで計画が早まってバタバタしたけど、相談しようと言ったのに、君は俺を頼る気なんて全く無かったという事だね」
「いえ・・・ッ!それは・・・・その・・・・」
顔を上げれば、蓮が自分を覗き込んでいた。
その表情をみて、言葉が続かなかった
どれだけ・・・自分は蓮に・・・・・
頼る頼らない・・・・という問題では無かった・・気がする
ただ・・・・自分に愛することを教えてくれた蓮に、自分を愛おしいと言ってくれた蓮に
応えたかった。ふさわしくなりたかった・・・・そして
後ろめたさも何も無くして、堂々と蓮を愛したかった
愛していると言いたかった
だけど・・・・結局・・・・・・私は・・・・
ポロリ・・・・と涙が落ちた
「キョーコ?」
焦った蓮の声に、呼応するようにポロポロと次から次へと涙がこぼれた
「敦賀さん・・・・・私・・・・ごめんなさい・・・・」
裏切ったのは自分。
何も言い訳なんて出来ない
どんな理由でも尚と結婚する覚悟だってしたつもりだったのに
なのに今こんなに安心している自分がいる
安心して涙がとまらない自分がいる
「キョーコ・・・・」
「ごめんなさい・・・・」
泣き続けるキョーコの涙をそっと手でぬぐうと、やさしく抱き締めた。
全体に感じる蓮のぬくもりに安心してしまい、更に涙がこぼれる
「・・・・・・不安で・・・心臓が潰れるかと思ったよ・・・間に合ってよかった・・・」
「ごめんなさい・・・」
「君が何を思っての行動か・・・判らない訳じゃないんだ・・・・でも・・・・俺が君を救いたかった。俺のエゴかな・・・・だから、もう謝らないでいい」
「そんな事!敦賀さんにいっぱい迷惑も・・・かけちゃいましたし・・・・」
段々声が小さくなっていくキョーコの様子に、蓮はやっとやわらかく微笑む事が出来た。
未だ止まらない涙に、唇をよせる
「迷惑じゃない。約束しただろ?」
抱き締められたままの至近距離で覗かれる瞳に心がときめくも、言われた意味が判らなくて首をかしげた。
約束・・・・・・・?
何のだろう?
「”キョーコちゃん”には王子様は来ないんだろ?結婚しなきゃいけないショーちゃんは王子様じゃないから」
・・・・・・・・・・・キョーコちゃん?
「むしろ王子様というよりはお伽噺の魔王みたいな感じなんだよね?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・お伽噺
「だから約束したんだ・・・・・君が泣くから、笑った顔が見たくて」
あれは・・・・いつだった?
あれは・・・・誰だった?
自分たちは・・・・何の約束を・・・・・
「魔王の手から助け出してあげるって」
キョーコの頭をなでていた蓮の指が、キョーコの髪を一房掴んで唇を寄せた
そして、自分を見る顔にキョーコの脳で何かがはじけて思いっきり目を見開いた
『泣かないでキョーコちゃん』
『将来俺がキョーコちゃんを魔王の手から助け出してあげるから』
『俺がキョーコちゃんの王子様になるから』
あの日も約束の証に、絵本に描かれた挿絵をまねて”彼”は髪を一房手に取り口付を落した
「嘘・・・・・・」
あの日の”彼”が今目の前にいる恋人と、突然姿が被った
呆然と戸惑うキョーコに蓮は嬉しそうに今度は唇に口付を落した
「俺は出来ない事は口にしないよ?」
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