お伽噺の行方は Ⅹ‐Ⅴ | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。

※10万HITリクエスト!ぼの様から頂きました☆




「いやあ!いいデザインを作ってくれた!!素晴らしい出来だ!!感謝する!!!」


「・・・・・・・はあ・・・・・・恐縮です・・・・」



世の中には色々な人がいると、改めて思った。


デザイン系統の仕事をしていると結構個性的な人に会う事が多いけど、ここまでの人はなかなかいない・・・いや、初めてだわ。



宝田コーポレーションの社長のローリィ・宝田(本名なのかしら)は、19世紀のバッキンガム宮殿にいそうなコスチュームでキョーコ達を応対してくれたのだが、平然とした蓮とは逆にキョーコはひたすら目を白黒させていた。



「新事業の初出店だからな、こっちも気合いを入れていたんだが・・・予想以上だ!特にこの間取りの・・・」

「では、こちらで内装を進めさせてもらいます。契約内容は事前に話した通りで進めていいですか?」


話が進まないと思ったのか、淡々と蓮は話を進めてしまい、ローリィは面白くなさそうに片眉をわずかに上げた。

その様子にキョーコは一瞬ひやりとしたが、結局何も言われる事はなく



「・・・・・・・・ああ、いいぞ。すでに内装に使うサンプルは整えてある。おい!」


近くの執事みたいな人が呼ばれて、キョーコに「こちらです」と案内された。

困惑気味に蓮を見ると、蓮も頷いたのでその執事と一緒に席を立ち部屋を出て行った。



残されたのは蓮とローリィのみで、キョーコと執事が部屋を出て行ったのを見て手に持った葉巻の息を吐いた。



「全く・・・・・久々に顔を見せたと思ったら回りくどい真似しやがって。しかも相変わらず可愛げがねーな」


先ほどと少し雰囲気を変えた砕けた口調に、蓮は黙って首をすくめた。

この商談を利用させてもらったのは、カモフラージュのためだったがそんな事はお見通しだったらしい



「貴方の話に全部付き合っていたら日が暮れてしまいます。こちらは時間がないので」


「ほ~お~ソレが今回のなりふり構わない理由か。原因は・・・あの娘だな?」



相変わらずの千里眼だな・・・と思ったが、敢えて答えずにコーヒーに口を付けた。

黙秘権を行使する蓮にローリィはわざとらしく溜息をついた。


「・・・・・・・チッ。ったく、今まで散々逃げ回っていたクセによ~」

「御社の担当は社さんですから俺が出しゃばる訳にはいきませんよ。」


「・・・・・今回は・・・」

「俺は最上さんの上司ですから」


しれっとした様子に「ものは言い様だな」と、面白くなさそうに言いながらも口元はニヤニヤが隠し切れていない。

それが判ったので蓮も一応念を押しておいた。



「今回の事はお互いの利益が合致した結果で、その活路を作ったのが最上さんのデザインでした。何も後ろ暗い事はありませんよ」


そのついでにちょっとお願い事をしただけです。



そう言ってニッコリ笑う姿に、ローリィは胡散臭いものを見る様な目を向けていた。



「ったく。ちょっとしたお願いとは・・・お前も意地が悪くなったな。」

「そうですか?」

「まあ・・・・以前みたく物分かりがよ過ぎるのも考えもんだったけどな。あんな辞め方するから今更苦労してんじゃねーか」



全てを知っている相手なだけに、蓮も一瞬言葉に詰まった。

だけど、当時はそれが最善だと思ったのだ。


それに、あの当時の環境を壊したいと思ったのも事実で


例え自己満足でも別に後悔はしていなかった。




「別に苦労とは思っていませんよ」


「ほお・・・・?」




「・・・・・・・・・約束しましたから」



「あ?」



「その為にはアイテムや武器は必須なんですよ」




先ほどとは違った笑みを浮かべる蓮の姿に、ローリィは空を仰いだ。


今後を思い浮かべれば、正直相手に同情しか湧いてこなかったのだった。









「どうだった?内装の素材のサンプルは」


「はい!すっごく素敵でした!!まだ日本未入荷のモノも多いみたいで、なんだかインスピレーションをかりたてられるといいますか、あれだけのモノが使えるんでしたら、一部変更したい部分もあるんですが・・」


「その辺りは任せると言っていたから大丈夫だよ」



帰りの車の中で、興奮気味に話すキョーコを蓮は微笑ましい気持ちで見ていた。


「今回のレストランの内装に使う素材は宝田コーポレーションが指定した業者のものを使うのが条件だからね。その辺りは気にせず使っていいよ」


「はい・・・でも、あれってどこの業者のモノなんですかね?」


「さあ・・・・俺もその辺りは詳しくは・・・ね」



そう言う蓮を見ながら、そういえば今まで宝田さんの案件って窓口が社さんだったっけ・・・と思いなおした。

蓮もそうだが、社も昨日からほとんど事務所に顔を出していない。


所員達は何も言わないが、何かが起こっているのは肌で感じていて不安げな様子を隠し切れていなかった。

その様子を思い出して、キョーコは一層顔を曇らせる



今朝早くにかけた電話を思い出し



知らず手を握りしめていた。



「あの、敦賀さ・・・」

「悪いけど最上さん。俺これから商談があって、事務所まで送れないんだ。そこの駅まででいい?」


「え・・・あ、はい・・・・」



少し残念に思いながらも、忙しい蓮が時間を作って自分の商談に付き合ってくれた事に申し訳ない気持ちになった。

申し訳ないのに・・・もう離れなければならない事に残念にも思ってしまって



決意が揺るぎそうになる



「なかなか時間がとれなくてゴメン」

「え!いえ!仕事ですから!お気になさらず!!」

「・・・・・・少しは寂しがって欲しいんだけど」


「え・・・・ええッ!?」



相変わらず色っぽい雰囲気を出すと顔を赤くしてきょどり出すキョーコに蓮はクスリと笑って、車が停まると降りようとするキョーコを抑えて唇を押しあてた。


「ん・・・・敦賀さ・・・・ッ」

「少しだけ・・・・・・」


「・・・え・・・・・んんッ!」



散々口内を貪られた後、やっと解放されたキョーコは真っ赤な顔で息を切らして蓮を睨みつけた。

横道で人通りが少ないとはいえ・・・



「・・・・・・こんな所で・・・破廉恥です・・・」

「クス・・・・二人きりならイイの?」


「あ、いえ・・・その・・・それは・・・・」



更にうろたえるキョーコに蓮はクスクスと笑ってシートベルトをハズしてあげた。



「すぐに落ち着くと思うから」


「・・・・・そうですか・・・」



そっと伏せた目を蓮は気付かなかった。









そこから、ただ無心にローリィとの商談の内容をこなした。

夜遅くまでかけて終わらせて、翌日早朝から出勤して先方に連絡をとり、変更点を訂正していった。


「キョーコちゃん、随分根詰めて仕事しているね?そんなに締め切りタイトなの?」


見かねた逸美に聞かれたが、キョーコは「余裕をもちたいだけなんで」と言って笑っただけだった。



定時になっても帰らずにパソコンに向かい続けるキョーコに他のメンバーは「今日も残業?」と案じてくれたが、「これやったら帰りますから」と言って手伝いを断った。



誰もいなくなった事務所をぼんやりと見渡す



結局昨日、今日と一日灯りのつかなかった所長室を見て、溜息をつく。

メールや電話はもらっていたけど

早朝か・・・夜遅くか・・・・事務所にいれば、どちらかでも蓮に会えないかと密かに期待していたのだが・・・



・・・・・・・・・帰ろう・・・・・・



しぶしぶ帰る準備をして、パソコンの電気を落した時だった



「・・・・・・・最上さん?」




聞こえて来た声、浮かぶシルエット



間違えるハズもない、ずっと待ち続けた人




・・・・・・・・・・・・会えた




そう思った瞬間、安心でポロリと目から涙がこぼれた











「・・・・・・・・落ち着いた?」

「はい・・・・すみません・・・・」

「いや・・・ゴメン。君にもだけど、所員たちにも色々心配かけたよね」


自分の姿を見るなり突然泣き出したキョーコを蓮はすぐに抱き締めてくれた。

いるべき所にいるべき人がいないだけで、こんなに不安だったのだと改めて思った。


あの日と同じように所長室のソファに並んで座らされて、そっと涙をぬぐわれる



「あの・・・・」


「ちょっとね・・・取引先と当時の契約の事で揉めてね・・・もう大丈夫だから・・」



「・・・・・・・・」


先日尚に聞かされた内容を、蓮の口から聞いた事で暗いモノが胸に広がっていった。


本当に・・?と聞きたい言葉を飲み込んでいた。

きっと大丈夫としか言わないだろうから



「・・・・・・・敦賀さん・・・・」


「ん?」



先ほどからあやす様に髪を梳かれている指先を意識してしまう

そっと唇を寄せられた涙の跡に、熱をもってしまう




「・・・・・・二人きりですね・・・・・・」




「・・・・・・・・そうだね」




先日のやり取りを思い出したのか、ほんの少し蓮の瞳が細められた




「今は遅い時間・・・かな?」


「・・・・・・・・・明日休みですから・・・あまり関係ないかもしれないです・・・」


「そうだね」




クスッと笑って差し出された手を、顔を真っ赤にしながら、恐る恐るキョーコは握った





重ねられた手は招待状に思えた。











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