不死蝶の女(ひと)【君と一緒に乾杯! 2】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。


「凛、すき焼きのお肉豚と牛どっちがいい?」

「牛の方がいいな。ごめんね、手伝えなくて」

オープンキッチンでテキパキと動くエプロン姿のユキちゃんに俺は申し訳なさそうに答えた。



もうすぐ奏江さんも帰ってくるというので、今日はユキちゃんの家で皆で夕飯を食べる事になり、その支度をしてくれている。

双子の妹達とユキちゃんの娘の愛花ちゃんはマリアちゃんが子供部屋で面倒を見てくれていて、先ほどから賑やかな声が聞こえてくる。


そして俺はというと


「アハハ、いいよ。ある意味それは凛にしか出来ない事だから」


ユキちゃんは笑ってそう言うけど、正直内心複雑。


ユキちゃんの言う「それ」とは今、俺の膝を枕にして眠っている母さんの事だ。


マリアちゃんとパーティーの事で一通り盛り上がった後、静かになったと思ったら俺の肩に寄りかかって寝てしまった。そしてそのまま俺の膝に落ち着いてしまったのだが・・・・


まあ、時差もあったしハシャぐ双子の面倒を見ながらで疲れたんだろう。
それに、元々母さんは父さんと一緒じゃないと眠りが酷く浅い。


「そういえば、子供の頃は母さんの寝顔なんて見たことが無かったな」


スヤスヤと眠る母さんを見て、ふと思った事を口に出していた。


というか、子供の頃は母さんは寝ないものだと思ってさえいた。



「そう思っても不思議じゃないかもね。実際キョーコちゃんは久遠がいないと眠れない時期があったから」


ユキちゃんの言葉に、それがいつ頃の話なのか何となく想像がついた。

子供の頃のあいまいな頃の記憶もある



「でも、そのキョーコちゃんが久遠と喧嘩して家出するなんて・・・ぷぷッ・・・今ごろ久遠のヤツすんごい勢いで仕事を片付けているんだろうな~」


元マネージャーはとても愉快といわんばかりの表情と口調で、完全に面白がっている。



確かに喜ばしい事なんだろう。


まあ、喧嘩の内容も内容だし・・・。

犬も食わないレベルだよ、本当。


父さんは母さんを溺愛しているし、母さんは父さんに基本的に従順だし・・・確かに喧嘩・・といっていい内容かわからないけど、こういう事は珍しい。


ふと、母さんの寝顔を眺めた



化粧や演技によって化けっぷりが激しい母さんだけど、実際にあどけない寝顔を見ると20代と言っても全く違和感はなく思う。



今の自分と同じ年に俺を産んだ母は、当時どんな事を想って俺を身ごもって産んだのか・・・最近よく考える。




母さんの過去から、父さんが母さんを支えてきたようにも見えるけど、実際はそうでは無い事は子供の俺がよくわかっている。


子供の俺から見ても、父さんには母さんが必要だし、母さんには父さんが必要で、お互い依存しているよいうよりも、二人で一つというか、補いあっているような関係だった。




「・・・・・・・・・父さんのピンチヒッターを務められるぐらいは・・・少しは父さんに近づけたのかな」




ぐっすりと寝ている母さんを見て、そうだったらいいな・・と思った。













奏江さんが帰ってきて、母さんが起きて、一通りの再会の挨拶を交わして(感激する母さんを奏江さんがあしらって)、夕飯を囲みながら話題は先程開催が決定したグレイトフルパーティーの事となった。

さっきはザックリとした内容だったけど、要約すると「お世話になった人に恩返しをするパーティー」・・・・正直、日付を考えてもクリスマスパーティーかバースデーパーティーにしか思えなかったけど、そこは違うらしい。


「モー子さん空いているの?!」

人気女優なだけに、少し顔を出して貰えれば嬉しいな~・・・という母さんに、奏江さんは至極アッサリとその日は午後からオフだから行けるわよ。と答えた。



「別にドラマの撮りも終わっているし、タレントや芸人とは違って年末の特番も多くないし」

モー子さんが来るなら、愛花ちゃん用に託児所も設置しましょう!と、母さんとマリアちゃんは大はしゃぎだ。



後から聞いた所によると、奏江さんは結婚してからはクリスマスに仕事を極力入れないようになったらしい。
「前だったらそんな事気にもしてくれなかったんだけどね。ヒズリ家を見て色々考えてくれたみたいなんだ」
と言ったユキちゃんはかなり嬉しそうだった。



因みにヒズリ家では24日にクリスマスパーティー、25日に母さんのバースデーパーティーを毎年やる。

しかも、どちらも盛大に。

クリスマスは母さんが張り切るし、バースデーパーティーは父さんが張り切る。

トコトンこだわる母さんと、そんな母さんを溺愛する父さんだ。我が家ではそれこそ最大級の一大イベントで、何においても優先すべき事だったりする。


なので、どう考えても父さんはその前には日本に来るだろう。




「そうだ!緒方監督にも声だけでも掛けたらご迷惑かしら。それに、凛がお世話になっている御礼も言いたいし・・・」

明日スタジオに伺おうかしら、というトンデモナイ母さんの言葉に、思わず食べかけたお肉の箸を停めてしまった。


「それなら俺がお誘いしておくよ。母さん独りでスタジオに来るなんてダメ。俺は仕事で一緒にいれないし。」


「大丈夫よ?昔はマネージャーが着いていなかったから一人で行動していたんだから」

「昔はそうでも今は有名人なんだから、危ないよ。騒ぎになったらどうするんだよ」

「心配性ね~。大丈夫よ!大抵気付かれないから!」


力いっぱい宣言する母さんに、それもどうなんだろう・・・と疑問に思うけど・・・


「スタジオなんて業界の人間しかいないんだから、とにかくダメだよ。どうしても行きたいなら俺のバイトが終わったら連れて行くから」

その場合、素姓がバレる可能性が出てくるけど・・・まあ、いいか。
どの道いつまでも隠しておけないし。



「それより、色々準備するんだろ?父さんの車があるから荷物持ちとかなら手伝うからさ」


「ん~・・・・・」


話をそらす俺に対して母さんはまだ不満そうだけど・・・正直、ヘタに母さんを一人でスタジオに来させて馬の骨とかに絡まれたりする方が不安だ。

何故かその辺りの鈍感さはいくつになっても変わらなくて、昔から俺はハラハラしているんだから。





「さっきの膝枕といい、今の会話といい、凛もホントこの子に過保護ね。マザコンはモテないわよ」


目の前で繰り広げられる会話にうんざりしたのか、溜息混じりで呟いきた奏江さんの言葉に、俺はきょとんとした。

「も」というのは、父さんを筆頭にという意味だろうけど、俺はあそこまで酷くはない・・・と思うが、それよりも・・・



「え、マザコンってモテないの?」



自分の母親が大事って事なのに?!



驚いて、マリアちゃんの方を振り返って聞くと、突然振られて驚いたのかぎょっとした顔をされた。


「え・・・・な・・・・何よ、何でそんな事聞くのよ!気になる訳!?」



何故か怒って言うマリアちゃんの様子に首をかしげるも、「そりゃあ、気になるよ」と、大きく頷いた。

その言葉にますます眉をひそめられてしまい、訳が判らない


「知らないわよ!私はファザコンだからそんな事、気にならないし」


「あ、何だ、なら問題ないや」


マリアちゃんが何を怒っているのか判らないけど、とりあえずホッとした。

その様子に少しマリアちゃんの表情に力が抜け様に見えた。



「は?・・・・・問題ないの?」


「うん。マリアちゃん以外には別にモテなくてもいいし」




俺にとって家族はとっても大切




至極あっさりとした言葉に、マリアちゃんは絶句し、他のテーブルを囲む面々は一様にポカンとした表情になっていたが、安心した俺は気付くことはなかった。





「・・・・・・・・・この子、性格も父親似ね」




奏江さんの呟きに、再び俺は首をかしげた。