恋人の条件Ⅶ【35000HITリクエスト】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。


「・・・・・・・・貴方は俺の恋路を邪魔したいんですか」



話を聞き終わって蓮は低い声でそう唸っていた。


昨日のレインの挑発から始まり、キョーコのスルーに、寝不足・・・そして・・・父親の「小さな親切大きなお世話」のお陰で・・・一体何が起こっているんだ!?何の災難だ!!


「い、いや!だが、あの話の流れで、あのフレーズだけ聞けば、ああ言うのは当然かと・・・!というか、君は告白もしていないのに、あんな事をキョーコにしたり言ったりしていたのか!」


「余計なお世話です!」


「蓮!顔!顔!!というか、MR.ヒズリ!!それでキョーコちゃんはレインとどこのホテルへ・・」


「あ、ああ・・このホテルだ。彼のマネージャーが予約をとったらしい。レストランのコースとスイートの部屋を!」


それを聞いて、飛んできたのだ。


このままでは、キョーコがレインに口八丁に騙されて部屋まで連れ込まれてしまう!

そうなれば完璧な密室だ!!

昨日の話からしても、レインは身体からの恋愛に対して積極的だし・・キョーコもキョーコで様子がおかしかったし・・・・!!


蓮はすぐにでも飛んでいくかと思ったが、先ほどの勢いはどこへやら・・・蓮は青い顔のまま立ちすくんでいだ。

差し出したホテルのメモを受け取らずに固まっていた。



「・・・・・・・・敦賀君?」


「あ・・・・の・・・」


蓮の脳裏に昨夜のキョーコの顔が浮かんだ。

涙を浮かべて、自分の言葉を冗談だと決めつけて、去っていった・・・・


もし、また前の前で同じ事があったら・・・そして、その去った先にレインがいたら・・・

自分の言葉をスルーして、レインの言葉を受け止めたという事は、レインを恋愛対象で見れる兆しがあったからじゃないだろうか・・・?


戸惑う蓮の姿にクーも困惑するが、そんな二人の間にはいったのが社だった。

クーからメモを受け取り、蓮に押し付ける。


「事務所は俺一人で行くから、お前は帰っていいよ」


「・・・でも・・・・」


尚も躊躇する蓮に社は安心させるように微笑んだ。


「キョーコちゃんがお前のアプローチをスルーしたり曲解するのはいつもの事だろ?回数が一回増えたぐらいで何を戸惑っているんだ」


聞き様によっては酷い台詞だが、蓮は呆気にとられて目を見開いた。

目から鱗・・・・というのはこういう事を言うのか・・・



・・・・・・・確かに・・・・な・・・


というか、届いていない想いならまだフラれた事にさえなっていないのか・・・?



一人世界が終わったような気分になっていたけど、こんな事に今更気付くなんて、相当レインの存在に気を取られていたのか?



とはいえ・・・自分の過信があったのも事実だ。



レインがやっているのは自分が「出来なかった」事じゃない。

「やらなかった」事だ・・・・。


「すいません、社さん・・・先に帰ります」

「ハリウッドのトップスターにまで応援してもらえる恋なんて層々ないぞ。チャンスは生かせよ?」


蓮は一瞬何とも言えない顔になったが、クーと社に御礼と挨拶をして、慌てて控室を出て行った。



「MR.ヒズリ、すみません。巻き込んでしまって・・・。ありがとうございます。」


頭を下げる社に、クーは優しい笑顔で首を振った。



「いや、もとはと言えば私の不用意な発言で敦賀君をキョーコに誤解させてしまったからな・・・」

それに、本来なら自分が御礼を言いたかった。


息子に信頼され、背中を押してくれるこのマネージャーに。


「・・・・社君・・・」

「はい」






「君とは長い付き合いになりそうだ」



その言葉の本当の意味を社が知るのはもう少し先の話。














「レインのお母様も京都出身だったんですか?」

「うん・・・だから、子供のころからよく食卓には和食が並んでいたよ」


本来であれば目を白黒させる程の「超」がつく一流ホテルの三つ星レストランに、最初こそキョーコは委縮していたが、レインのエスコートもあって段々リラックスしていった。


「子役のオーディションがある時は必ず勝つをかけてカツ丼だったしね」


朝から大盛りで大変だったよ。とおどけた様にいるレインにキョーコはクスクスと笑った。

レインと話していると楽しいと思う。


「まあ、子役時代は全然端役ばかりで・・・なかなかパッとしなくて、あまり御利益をもらえなかったけど」


首をすくめる様子に、そういえばレインは去年の映画が当たり役となってブレイクした事を思い出した。

よく考えれば、こうして私と一緒にお食事出来る人でもないのよね・・・。なんたって、ハリウッドスターなんだもの・・・。


「レインは子役時代から見れば本当にこの業界長いんですね・・・。」

「うん。まあ、知り合いは増えたかな。クーともなんだかんだと、昔からの顔見知りだし」


「そうなんですか・・・・あ、なら、先生のお子さんも御存じですか?」


以前自分が演じた役なだけに、ふと気になり聞いてみた。

よく考えれば同じ年ごろだし、もしかしたら・・と思ったのだ。

だけど、レインは微妙な表情になった。


「・・・・・・・・・・・・ああ、久遠の事?何度かオーディションで一緒だったから、知っているよ。俺はね。でも・・・・向こうは俺の事知らなかったんじゃないかな」


白けた表情で・・・というか、あまり友好的ではない口調にキョーコはあれ?と思った。

クーの口からは親バカ丸出しの台詞しか聞いた事がないけど・・・・


「あの・・・?」

「久遠は俺たち子役なんて相手にしていなかったからね。いつも上ばっかり見ていた。ヒズリの名前は強力で、俺たちも声をかけにくかったし・・・・」


頬杖をついて、当時を思い出すように言う姿に、キョーコはかつてのクーの言葉を思い出した。

もし自分の息子でなかったら・・と、悲しそうに言う姿を・・・。



「何て言うか・・・今思えば、おたまじゃくしが、カエルになる前に陸に上がろうとしている・・・みたいな感じだったのかな。・・・・だから・・・・・・・」


「レイン?」


口をつぐんで考え込む姿にキョーコは自分が聞いてはいけなかったかと、不安になった。

そんなキョーコに、レインは安心させるように微笑みを浮かべた。


「ごめん・・・何でも無い。まあ、何事も無理のしすぎはよく無いって事。キョーコもね」

「え・・・」


「いきなり恋愛のハードルを上げる必要はないよ。本気の恋が怖いなら、俺を利用すればいい。俺は、その間に君を振り向かせてみせるから」



ヒュッ・・・と、自分の息を飲む音を聞いた。



目を見開いて固まる正直な反応に、レインは更に笑みを深くした。





「子役時代からのクセなんだ。周囲の人間観察は」





だから気付いたよ





レインのその言葉は、キョーコにとってはとても甘い誘惑に聞こえた。






心に残っていた罪悪感が許される誘惑







ああ、本当に酷い



酷い女




あんな冗談だと思っていても



あんなからかわれているだけだとわかっていても



あんな大した意味は無い言葉だと知っていても




『君が好きだからだ!』





あの人のあの言葉が





嬉しかった






どうしようもないぐらい嬉しかった




あんな気まぐれな言葉でも



思わず泣きたくなるぐらい




愛おしいなんて




一瞬でもこんな想いをさせて、酷いとなじってしまったけど



勘違いしないように自分に必死に言い聞かせる為に支離滅裂な事を言ってしまったけど








それでも






あんな単語一つで、こんなに愛おしい気持ちを胸に溢れさせられる事が出来るのは敦賀さんだけ




あんな単語一つで、眠れなくなるのはあの人の言葉だけ







もう手遅れなのよ