「夜間飛行」、「人間の土地」などの作者として有名なサン=テグジュペリの作品・・・「星の王子さま」です。
実は、彼は飛行機をこよなく愛する操縦士でした。
操縦中、砂漠に不時着してしまった体験をもとに書かれた「大人向け」の童話です。
「いちばんたいせつなことは、目に見えないんだ」ですって・・・

 

星王子00

 

    書名:星の王子さま(新潮社版)
    著者:サン=テグジュペリ
    訳者:河野 万里子 さん
 

僕が操縦している小さなプロペラ飛行機は、突然、サハラ砂漠に不時着してしまいました。
最初の晩、人の住む地から1600キロもかなたの砂の上で眠りについたのでした。
夜明けに、小さな変わった声で起こされました。
そこには、金髪の、輝くばかりに愛らしい男の子がいた。

星王子01

僕は、その子が突然現れたことに驚かされました。なにしろ、ここは人里から遠く離れた砂漠のまん中なのですから。
僕「どこから来たの?」
その子・・・王子さまは、自分ばかりしゃべって僕の話を聞いてくれないのでした。
彼が勝手にしゃべる話をまとめてみると、どうやら王子さまは、よその星からやってきたようです。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆

 

星王子02

その星(小惑星B612)は、一軒の家ほどの大きさで、雑草をほっておくと根が星を貫通(かんつう)し、大変なことになるらしいのです。

 

それから、ふたつの小さな活火山と、ひとつの死火山があるそうです。

 

 

 

王子さまの住む星に、ある日、種が一つ飛んできました。やがて芽(め)を出し、美しいバラの花が咲きました。
王子さま「なんてきれいなんだ」
バラ「そうでしょう?」
あまり控(ひか)え目じゃないんだなと王子さまは思いました。

花は、気難(きむずか)しく、見栄(みえ)をはっては王子さまを困らせるようになりました。
それでも毎日、王子さまは水をやり、夕方にはガラスのおおいをかぶせてやりました。

星王子03

星王子04

 

でも、だんだん嫌(いや)になってこの星を出て行くことにしました。

 

やがて王子さまは、小さな星325、326、327、328、329、330のあたりまでやってきました。
そこでこれらの星を訪ねて、見聞(けんぶん)を広めたりすることにしました。

 

星王子05

最初の星は小さく、王さまが一人で住んでいました。

宇宙の星すべてを治(おさ)めているそうです。
すべてのものは、自分の命令に従うことが当たり前と思い込んでいました。

 

王子さまは次の星に向かいました。

 

 

星王子06

二番目の星には、大物(おおもの)気どりの男が住んでいました。

彼にとって、人はみな彼を称賛(しょうさん)しなければならない存在でした。変な人だなと思いつつ、王子さまは次の星に向かいました。

 

 

 

 

星王子07

次の星には、酒浸(さけびた)りの男が住んでいました。
「酒びたり」なのを恥じており、そのことを忘れるために飲んでいるそうです。
これは手に負(お)えないなと思い、王子さまはその星をあとにしました。

 

 

 

星王子08

四番目の星は、実業家の星でした。
五億百六十二万・・・実業家は真剣に星を数えていました。
数えた星は、実業家の持ちものになるんだそうです。
それが何の役に立つのかは知らないんだって・・・
王子さまは、その星をあとにしました。

 

 

星王子09

 

五番目の星には、ガス灯が一本と、そこに火をともす点灯人がひとりいた。
朝になると火を消して、夜になると火をともすことが仕事でした。
この星の「一日」は一分なので、一分ごとに、ともしたり消したりしているのでした。

 

 

 

星王子10

六番目には地質学者のおじいさんが住んでいました。

山や川や村などがどこにあるか知っている学者だそうです。
この星には山や川や村があるか聞いたところ、分からないとのことです。
おじいさんは「知識」の人で、自分ではどこにも行っていないのでした。

 

王子さまは、おじいさんに勧められた地球に向かいました。

 

星王子11

地球に着いた王子さまは、あたりに誰の姿も見えなくてびっくりしました。

 

砂漠と、岩と、雪の中を長いあいだ歩き続けると、バラの花咲く庭園がありました。

星王子12

王子さまは暗い気持ちになった。自分の住んでいた星のあのバラは、「自分のような美しい花はこの世に一輪しかない」と話していたのだ。ところが今、目の前に、そっくりの花が五千もあるではないか。

 

砂漠のなかでヘビに出会ったりもしました。
ヘビ「かわいそうになあ、か弱いきみが、冷たい岩だらけの地球に来てさ」

 

小さな王子さまは、砂漠を歩きつづけた。

 

星王子13

やがて王子さまはキツネに出会った。
王子「おいで、ぼくと遊ぼう」
キツネ「きみとは遊べないよ。なついていないから
王子「『なつく』って、どういうこと」
キツネ「『絆(きずな)』を結ぶっていうことだよ」
キツネ「もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になるんだ
王子「どうすればいいの?」
キツネ「少し離れて座るんだ。ぼくは横目でちらっと君を見るだけだし君は何も言わない。言葉は誤解のもとだから。でも、日ごとにきみは、少しずつ近くに座るようにして・・・」
小さな王子さまは、キツネをなつかせた。

 

でも、出発のときが迫っていた。

 

キツネは泣いていた。

キツネ「もう一度、この間、見た庭園のバラに会いに行ってごらん。きみのバラが、この世に一輪だけだってことが分かるから」

 

王子さまは、もう一度バラたちに会いに行った。

王子「あれ、きみたちは、ぼくのいた星のバラにはぜんぜん似てないなあ。きみたちは、いてもいなくても同じだ」
王子「誰も、君たちをなつかせたことはなかったし、きみたちも、誰もなつかせたことがないからしかたがないよね」

 

それから王子さまは、キツネのところに戻った。
キツネ「最後に君に秘密を教えるよ。ものごとはね、心で見なくてはよくみえない。いちばんたいせつなことは、目にみえない

 

キツネ「住んでいた星のきみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間・・・水をやったり、おおいをかぶせてやったりした時間だったんだ」
キツネ「きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに責任がある

 

王子さまの話を聞いたのは、僕の飛行機が砂漠に不時着して、ちょうど1週間目でした。

僕の飲み水はすっかりなくなっていました。
僕「どれもおもしろかったよ、きみの話は。でも、僕は、のどが渇いて死んでしまいそうだ」
王子「ぼくだって、のどが渇いたよ・・・井戸をさがそうよ」

 

何時間も、なにも言わずに歩くうちに、やがてあたりは夜になり、星々がきらめきだした。

 

王子「砂漠って、美しいね」


そしてそれは、ほんとうだった。僕はずっと、砂漠が好きだった。なだらかな砂の丘にすわれば、あたり一面、なにも見えない。なにも聞こえない。
それでもその静寂のなかで、なにかがひっそり光っている・・・

王子さま「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をひとつかくしているからだね・・・」

僕「そうだね。家や、星や、砂漠を美しくしているものは、目に見えないね!

それから王子さまは眠ってしまった。王子さまを抱っこして僕は歩きつづけ、夜明けに井戸を見つけたのだ。

 

 

王子「ぼくが地球に落ちてきたこと、話したでしょ。あしたがちょうど、その一年目なんだ。」

王子「今夜、ぼくが落ちてきた場所の真上に、ぼくの星がくる・・・ぼく、星に帰ることにしたんだ」

 

王子「夜になったら星を見てね。ぼくの星は小さすぎて、どこにあるのか教えられないけれど。でもそのほうがいいんだ。」

王子「ぼくの星は、夜空いっぱいの星の中の、どれかひとつになるものね。そうしたらきみは、夜空ぜんぶの星を見るのが好きになるでしょ」


こう言い残して、王子さまは自分の星に帰ったのでした。

 

〔感 想〕

人と人、人と動物がお互いになくてはならない存在になるためには、それなりの「行為」が必要なんですネ・・・

キツネ「もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になるんだ」

 
複雑な社会に生きる私たちは、いつのまにか「真実」を見る目がかすんできちゃったりして・・・

キツネ「最後に君に秘密を教えるよ。ものごとはね、心で見なくてはよくみえない。いちばんたいせつなことは、目にみえない

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