NHKグループモール <どうする家康>探検隊  | 花に嵐の☆潤い☆

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<どうする家康>探検隊 #1 〜「家康レガシー」の”お宝”を探せ!〜 (nhk-groupmall.jp)

 

 

 

 

 

家康の出発点となった二人のキーパーソン

<どうする家康>探検隊のミッション始動

  二人に集まってもらったのはほかでもない。私たちは「探検隊」として、<どうする家康>全編に分けいって、家康の成功の秘密を探っていく、というミッションを受けたんだ。

見た蔵  見た花  ガッテン了解です! 楽しそうな挑戦です!

見た蔵 このドラマの特徴は「弱い家康」。第一回の冒頭のシーンから城を逃げ出して「(いくさは)もうイヤじゃー!」って泣き叫んでいたのが……。

見た花  最終回では首を取りに来た真田信繁に素手で立ち向かっていました(笑)。

見た蔵 そんな家康の変身を演じきった松本潤の演技が見事だったよね。

同 門 「弱虫」だった家康はそんな大成長を遂げて、260年にわたる泰平の世を築き上げた。そこにはどんな秘密があったのか。またそこには、現代に生きる私たちにも教訓となる”お宝”もあるはずだよ。

さて、まず心に留めたいのは、家康は幼少年期から家族に恵まれなかったことだ。

見た花 3歳で生母と引き離され、6歳から織田そして今川の人質。父親は8歳の時に亡くなっています。親からの愛情や教えはほとんど受けなかったでしょう。

同 門 だからこそ家康の成長には、人との出会いが欠かせなかったと思うんだ。

家康の「心の父」今川義元

見た花 まずは幼いころの人々との出会いが大切ですね。

同 門 そう。そんな存在が二人いる。私がまず挙げたいのが、今川義元だ。

見た蔵 ええっ? 第一回で信長に討たれて、評判はあまりよくないですよ。

同 門 とんでもない。彼は超一流の教養人で、礼節を重んじ、善政を施して、領民にも慕われた名君だったんだよ。桶狭間の敗戦は人生唯一の不覚だった。

ドラマでは野村萬斎の威厳に満ちた、時にユーモラスな演技がたっぷり楽しめたね。

見た花 人質の家康の才能を高く評価していました。君主教育まで施していましたね。嫡男の氏真がいるのに、いいのかな(笑)。

同 門 義元は家康が初めて出会った、信服できる父親的な存在だった。そもそも家康が生涯をかけて実現しようとした「いくさなき世」という考えのルーツは義元だよ。

見た花 そういえば回想シーンにしばしば登場して、家康を導いてますよね。

同 門 ここでは詳しく言わないけど、DVDを見るときは、折々の義元の言葉に注目してほしいね。彼の思想こそが、家康の人生のスタート地点であり、ゴールであるということがよくわかるよ。

「スタイリッシュ」な信長とは?

見た蔵 もう一人は、当然織田信長でしょ? まあ兄貴分というところですが、幼い家康に向かって「白ウサギのようじゃ……食ってやろうか!」。岡田准一、怖っ!

見た花 家康を格闘技でボコボコにしてました。鍛えてるつもりなんでしょうが、ほとんどDV(笑)。でもこれで家康はたくましく成長できたんですかね。

同 門 信長は有名人だから、特に解説はいらないよね。でも一言だけ。

家康と共に過ごしたのは10代半ば。この年ごろの信長は、これまでの小説や映画やドラマでは、「うつけ者」として描かれてきたんだ。

見た花 家臣は彼を「バカ」と思っていたんですよね。変なマゲを結って、ボロの着物、荒縄の帯に瓢箪ぶら下げて……。でもこのドラマでは、父親にビシッとモノを言う。真っ赤な着物がスタイリッシュで、カッコよかった!

同 門 しかし同じ脚本家(古沢良太)の作品で、木村拓哉が信長を演じた映画『レジェンド&バタフライ』では、ちゃんと「うつけ者」として登場するんだよ。

見た蔵 ということはスタイリッシュな信長は、このドラマのオリジナルなんだ。

同 門 そう。実はこの真紅の着物には、深い意味が込められているんだよ。それは本能寺の変で明らかになる。それは何か? 今は秘密にしておくね。

それから彼の妹・市。家康に思いを寄せる役どころだが、兄譲りの勇ましさで、こんなことを言っていた。乱世は楽しい、力さえあれば何でも手に入る、と。この考えは娘の茶々に受け継がれて、ドラマ終盤に波乱を呼ぶことになる。これも後々のお楽しみだ。

「民のために生きる」〜三河一向一揆の教訓

若き家康が初めて直面した苦難のいくさ

同 門 さて何とか三河の領主となった家康に、三河一向一揆という最大の試練がやってくる。これは本当に徳川家の存亡がかかった大事件だ。

見た花 ときに家康23歳。そのころ三河には抵抗勢力が多くひしめいていて、彼はその鎮圧のためにいくさ続きの毎日でした。

見た蔵 そのために岡崎城は兵糧も尽き、三河の領民は困窮のどん底にあえいでいた。

同 門 そこで家康が思いついたのが、年貢免除の特権を持つ寺院から、米を徴収することだ。交渉を始めるんだが、これが難航する。

見た花 一向宗の大規模寺院・本證寺では、食料を飢えた民に分け与えています。

住職の白誓上人は、集まった民に、この世を地獄にしているのは、愚かないくさを続けている武士だ、と徹底批判です。

同 門 年貢を領主に納めるなんてハナから考えていない。そこで家康は武力解決を図るが、対する寺側は武装して抵抗を始める。これが三河一向一揆だ。

見た蔵 そこで家康軍は大苦戦。信徒たちは、阿弥陀如来が来世の極楽を保証していると信じている。だから死を恐れずに家康軍に立ち向かったのが、強さの理由でした。

領主の一番大切な責務とは?

見た蔵 しかし考えてみると、白誓上人の教えは、家康の「厭離穢土欣求浄土」と同じですね。家康だって民の困窮の理由が自分らにあることはわかっているでしょうに……。

同 門 「好きでいくさをしてるわけではない」と言いながら、結局一揆は武力で鎮圧せざるを得なかった。当然犠牲者も多く出ただろう。信念と行動が矛盾していて、その分家康の悩みは深いよね。

でもこのいくさから学んだのは、「領主の自分は何のために存在するべきなのか」。このいくさの辛い体験が、家康を大きく成長させることになったんだ。

見た花 ここで義元が回想シーンで登場。その答えを与えるんですね。

同 門 この国のあるじは「民」である……。民を守ることが第一の使命。それまで領主の威厳を保つことしか頭になかった家康に、新たな、大きな目標が与えられたんだ。

見た蔵 それにしても家康の家臣たちのうちに一向宗徒がいて、彼らは続々と寺側についてしまいます。主君より信仰。そんな武士もいたんですね。

同 門 もちろん彼らの神仏信仰は篤かったんだよ。だって武将たちは神社仏閣への戦勝祈願を欠かさなかったからね。「比叡山焼き討ち」などで、「宗教嫌い」のイメージが強い信長ですら、いくさにあたっては常に神仏の加護を祈っていたんだ。

「第三のキーパーソン」本多正信

見た花 驚いたのが、本多正信の行動です。忠臣と思ってたら、なんと一向宗の参謀となって、家康の命を狙うなんて!

同 門 彼自身、幼なじみがいくさによって悲惨な末路をたどったのを見てきた。しかも彼女は阿弥陀如来を信仰していた。彼はその苦い思い出ゆえに、家康に歯向かって一向一揆に加担したんだね。

見た花 一揆が治まって、捕えられた正信は家康を一喝します。「オマエが民を楽にしてやれるのなら、誰も仏にすがらずに済むんじゃ!」。もし家康が真っ当な領主なら、一揆など起こらない、と。考えの筋道は義元と同じですねえ。

同 門 この言葉は重い。でもさすが家康、彼のメッセージを正面から受け止めて、死罪のところを三河からの追放に留めた。正信を第三のキーパーソンにしてもいいかな。

見た花 その後正信は徳川家に復帰して、生涯にわたって家康を支える存在になります。

見た蔵 悪知恵にたけて「不埒な者」とほかの家臣から嫌われてるけど、本人はどこ吹く風(笑)。松山ケンイチの飄々とした演技も笑いを誘って、楽しいですね。

戦国を生きる女性たちの肖像

誰にもわからない、瀬名の「真の姿」

見た蔵 センパイ! ここまででキーパーソンが三人出てきましたが、もっと大事なキャラを忘れてませんか?

同 門 ああ、瀬名ね? 彼女は後にもっと大きな出来事に関わるから、そこで詳しく話そうよ……。でも有村架純ファンのキミのために、少しだけ触れておこうか。

見た蔵 瀬名=「悪妻」説が幅広く言われてきたようですが……。それが気になって。

見た花 ワタシも山岡荘八の『徳川家康』と、司馬遼太郎の『覇王の家』を読んだんですが、この二作とも瀬名を「悪妻」としてひどい描き方をしてます。

同 門 そもそも「悪妻」説は江戸時代のものだが、確たる根拠はないんだよ。瀬名につては史料がほとんどないから、当然人柄なんて想像でしかない。この二人の作家は読者が多いだけに、「悪妻」説を採った影響力は大きいな。その分ちょっと罪作りかも。

見た蔵 そうか。今回の瀬名像はこのドラマのオリジナルだけど、こんなに清楚でいい人では「なかった」という証拠もないんだ。よかった! 今はそれで十分です(笑)。

同 門 さっき言った「大きな出来事」は、家康の人生観を揺るがすくらいインパクトのある事件だ。ドラマでは史実に沿いながらも、大胆な脚色で見応え十分。お楽しみに!

<どうする家康>の「現代性」がここに!

見た花 ワタシは家康の母・於大の方が好きだなあ。松嶋菜々子のカラッとした演技が観ていて気持ちいいですね〜。

同 門 於大の方もこれまでは戦国の「悲劇の女性」として描かれてきた。お家の都合で離縁されて息子の家康とは生き別れ。さらに別の武将と結婚させられて……。

見た花 でもこのドラマの於大の方にとって、離婚と再婚は現代の「離職・転職」みたい。主な「タスク」は男子出産と割り切っていて、軽々とその務めを果たしてる。

見た蔵 しかも息子の家康に掛け合って、再婚相手を昇進させてますよ(笑)。

同 門 家康と瀬名の間に三人目の子供ができないので、側室を置くように率先して動いたのが於大の方だね。

見た花 瀬名も巻き込んで選んだ女性が、女子をもうけたものの、実は彼女は……。

見た蔵 同性愛者だった、という驚きの展開。

同 門 大河ドラマでLGBTQというテーマに踏み込んだのはこれが最初だね。このドラマの「現代性」は、こういうところにも現れている。

この「探検隊」の最後に、家康の成功の秘密が「多様性」の尊重にあるという話をしようと思っているんだが、彼女を温かく扱ったのもそんな家康の性格に基づいているね。

「戦国の美学」に殉じた女城主

同 門 <どうする家康>が優れているのは、現代的なキャラやエピソードを盛り込むだけではなくて、古典的な「戦国武将の美学」もたっぷり描いていることなんだ。

見た花 「忠義心に殉じる」という、アレですね。オジサンが好きなテーマ(笑)。

同 門 そうだよ! オジサンで悪かったね!……(涙)。 

見た蔵 まあまあ(笑)。ここでは第11回の、引間城の女城主・田鶴の運命について話しましょうよ。

同 門 田鶴は今川家の重臣・鵜殿長照の妹。同じく重臣の関口家の娘の瀬名と親友だったという設定だ。

見た花 今川と対立関係になった家康は長照を討って、その息子二人を人質にした。彼らと交換で、瀬名と子供たちを今川から取り返したんですよね。

見た蔵  彼女は夫の死後、引間城の女城主として家臣を率いることになった。

同 門 その後家康は武田信玄と図って今川攻略に動く。その第一の標的が引間城。家康にとってはたやすいターゲットだ。落城は確実。

見た花 瀬名は親友を救おうと、降伏を勧める書状を盛んに送りますが、田鶴は一顧だにしない。むしろ戦闘への決意を固くするだけです。

見た蔵 なにせ田鶴にとって、家康は今川を裏切り、兄を亡き者にした仇だからな。

同 門 関水渚の武者姿は凛々しくてよかったね。それと対照的な嫁入り前の二人の幸せな時間が回想シーンで描かれることで、二人の悲しみがひとしお伝わってきたよ。

見た花 雪の中でも、ひとりぼっちでも、凛と咲く椿。そんな椿のように、世に流されず己を貫く女子になりたい、と田鶴は言います。これは今川への忠義心のことですね。そして彼女は家康軍の銃弾に倒れる……。さすがに泣けました。

同 門 見た花クン、キミは「オジサンの趣味」とかディスってたわりに、結構よく見てるじゃないか。感心感心。……では最後に、私から田鶴へ手向けの一句。

いくさ場に 一輪散りぬ 雪つばき 

見た蔵 センパイに俳句の趣味があったとは知りませんでした!

見た花 うまいのか下手なのか、よくわかりません(笑)。

同 門 見た蔵 見た花 さて今回はここまで。

次回は来年1月中旬にアップの予定です。お楽しみに!(構成:阿部ヒロユキ)

 

 

 

 

 

<どうする家康>探検隊 #3 〜さらば瀬名、さらば信長、さらば数正〜 (nhk-groupmall.jp)

 

 

 

 

 

 

瀬名の「平和工作」が招いた悲劇

瀬名が考えた「とんでもない」こと

見た蔵 DVDボックス完全版第参集では、次から次へと大事件が起こります。ちょっと目がくらみそうなくらい。
見た花 まずは瀬名の「とんでもない」考えと行動、その悲しい結末ですね。
同 門 結果として家康は、瀬名と嫡男・信康を自らの手で亡き者にすることになる。そんな耐え難い悲劇で幕切れになるんだ。
見た蔵 二人の最期のシーンは、このドラマ最大級のヤマ場となりました。泣けた!
見た花 瀬名の考えは、東日本の大名たちが「いくさなき世」の理想を共有して大きな連合体を作り、通貨を統一して自由な交易を行い、政策は話し合いで決める。そうすればお互いにいくさはしなくて済むし、信長の軍事力に対抗できる、ということでした。
見た蔵 でもねえ……。歴史初心者のボクですら、「瀬名さん、本当にそんなことできると思ってるの?」と突っ込んじゃいました。本人は命がけ、真剣ですけど。
同 門 そうだね。現代で言えば、EUと国際連合と、NATOが合わさったような構想。瀬名の考えをこの三つに当てはめていうと、「統一通貨による交易」はEU,「話し合い」は国連、「信長の武力への対抗」としてNATO、といったところかな。
見た花 でも今、その三つの組織は、世界平和のためにはうまく機能していないように見えますが……。
同 門 そうだね。平和を望まない国は、今世界のどこにもないはず。にもかかわらずうまくいかない。まして戦国時代での実現はまず無理だったろうねえ。

あえなく崩壊した「はるかに遠い夢」

見た花 この構想では、武田・徳川に加えて、北条、上杉、伊達といった有力勢力をまとめる必要がありますが、その仲介役が北条の居候の今川氏真と隠居中の久松長家とは……。ちょっと弱い気がするなあ。せめて策士・本多正信レベルの人材が欲しい。
同 門 仮にそういった連合体が出来たとして、参加各国の話し合いはうまくいくかな? 軍事力が大きい武田が主導権を握るぜ、絶対。武田は自国に不利な議題が出たら、必ず反対するよ。そうしたら話し合いは決裂だ。
見た花 現代の国連でいえば、常任理事国の「拒否権」行使ですね。
見た蔵 交易をすれば平和になる、っていうのも、どうかな? 「経済戦争」ってこともあるでしょう?
同 門 そうだよ。自国の生産品は高く売りたいし、買う国はできるだけ安く買いたい。そのやり取りがこじれて戦争になるなんて、歴史上珍しくない。
見た蔵 ドラマでは瀬名の話に武田の重臣・穴山信君が心を動かされて、武田勝頼をなんとか説得しましたが、勝頼は十分納得しません。案の定、最後は離脱を決意します。彼は「瀬名構想」を「おなごのままごと」と決めつけていましたね。
見た花 やっぱり勝頼は父・信玄を超えたいから、武力で天下を取りたい。それで「瀬名の謀略を世にぶちまけよ」と家臣に命じて、「瀬名構想」は信長の知るところとなり、あえなく崩壊します。

通説に挑戦! <どうする家康>の大冒険

同 門 史実としては、瀬名と信康は二人とも処刑となった。武田と内通したかどでね。しかし製作陣としては、これを尊重しつつ、新たなドラマを作りたかったんだろう。そのチャレンジの典型が今回の瀬名像。これはとても大胆な試みだったんだよ。
見た蔵 この作品の瀬名は、夫を愛し、平和を願う、心優しい女性ですね。有村架純の清々しい演技が忘れられないです。
見た花 この設定が、これまでメディアで描かれてきた瀬名像とは正反対でした。
見た蔵 うん。ネットで調べたら、「瀬名=悪妻」が通説ですよ。
同 門 「悪妻説」は江戸時代になってから生まれたそうだ。そこには家康が正室と嫡男を処刑したことを正当化しようとする、徳川幕府の意図がちょっと匂うんだなあ。
でも戦後この説が広く流布するようになったのは、二人の大作家の小説がきっかけだ。山岡荘八の『徳川家康』、そして司馬遼太郎の『覇王の家』。
見た花 ワタシも読みました。お二方とも瀬名が武田側の人間(滅敬・ドラマでは変装した信君)と男女の関係となり、信康とともに武田に寝返ろうとしたと書いています。
でも瀬名については、同時代の確たる史料がないそうですね。だとすれば、先生方の見方も結局は「創作」ということになりますよ。
同 門 まあ、お二方とも創作にあたって「悪妻」説を採用したわけだ。自作の登場人物をどういうキャラにするかは、作家の判断だからね。でも私たち素人は大作家がそう書くなら、そうなんだと思ってしまう。だからその通説は強いんだよ。
見た蔵 もし根拠が薄いなら、瀬名が気の毒ですよね。
同 門 二人の先生がちょっと罪作りなのはそこかな。いずれにせよ史料のほとんどない人物造形なのだから、今回の大河の瀬名の設定が、「間違い」とは誰も言えない。
見た花 もしかしたら、ドラマのほうが真実に近いかもしれない、ということですね。
同 門 そうだ。脚本の古沢良太とドラマ制作陣は、強固な通説にあえて正面からぶつかって、挑戦した。そんな大冒険に踏み切った勇気には、大きな拍手を送りたいね。

「本能寺の変」が明らかにした、信長の「真情」

信長が初めて吐露した内面の苦悩

見た蔵 瀬名と信康を処刑した後、家康は変わりました。
見た花 もうオタオタしなくなった。眼光も鋭くなり、自分の意思をハッキリ示すようになりました。いわば<どうする家康>から、「こうする! 家康」への大変身。
同 門 その一方で、腹の内を容易に外に見せなくなった。信長が褒めていたね。
見た蔵 さてその信長。本能寺の変の少し前あたりから、謎の武将に襲われる悪夢を見て、恐れおののくシーンが何回か出てきました。こんな信長、初めて見た。これも<どうする家康>のオリジナルの工夫なんですね。
同 門 いわば信長の内面に踏み込んだんだ。悪夢におびえる信長像なんて、大河ドラマ含めてメディア史上初かもしれない。彼は「自分が殺した者全員の痛みや苦しみを、己が引き受けなければならない」と、苦しみを吐露するようになった。
見た蔵 スパルタ教育に苦しむ幼いころの場面も出てきました。これ、トラウマですね。
見た花 そうね。ワタシがすごいと思ったのは、第27回に、信長と家康二人が対峙する長いシーンがありましたよね。
同 門 ああ、衝突の挙句、最後に信長が「オレを討ってみろ」という、事実上「武力でオレの後継者になれ」と匂わせたシーンだね。
見た花 その前半部分で、家康が信長の生まれについて何気ないひと言を言ったときに、信長の頬がほんの少し、ピクッと動きましたよ。トラウマが信長を襲ったんです。DVDをサーチしてみてください。岡田准一の名演技ですよ!

繰り返し描かれる「父を越えられない息子」のモチーフ

見た蔵 <どうする家康>の信長は、父親の強烈な影響の下で、その精神にのっとって生きてきた。「自分以外は全て敵と思え」。でも信長の本音としては、それは相当しんどかったんでしょうね。五十歳を前に、その疲れが出てきたんだな。
同 門 言い換えれば、彼の自己形成の来歴は、父親との相剋だったということだね。
このドラマには「偉大な父と、それを超えられない息子」のモチーフが繰り返し出てくる。今川義元と氏真、武田信玄と勝頼、それから家康と信康。ドラマではそのパターンに信長も入っているように見えた。私にはそこがちょっとなあ……。
見た蔵 実際そういう描き方じゃないですか。ボクは「信長は父親に対抗して、相当無理してコワモテをやってたんだな」と思いましたよ。結果として父親よりはるかにすごいことを成し遂げたんだから、この人は父親を超えた。だから褒めてあげたいです。
同 門 うーん。私としてはねえ、信長は父親ウンヌンとは関係なしに、凡人の理解の届かない「戦国の異端児、冷酷非情な革命家」であることを期待していたんだよ。
見た花 でもセンパイ、岡田准一はDVDの特典映像のインタビューで、信長の「限界」を表現するのが大きな課題だった、と言っています。読みの深い芝居だったんですよ。
同 門 うん、私の期待をいい意味で裏切る演技をしてくれた。そこはさすがだな〜。
見た花 その「限界」の結果、信長は「討たれるなら家康」と思ったわけですから。
同 門 その思いを下支えしたのも、父の教えだね。「友はただ一人、コイツになら殺されてもいいと思う人間にしろ」。彼にとって家康は、そんな唯一の友だったんだ。
見た蔵 なぜですかね。家康も信長が好きだったんでしょうか。そうは見えないけど。
同 門 いや、家康も内心信長が好きだったんだ。織田と徳川の同盟は二十年続いたんだよ。これは離散集合の激しかった戦国時代では異例の長さだ。
このドラマでは家康は信長に本音でぶつかっていた。信長はそこが気に入っていたんだよ。だから側からは対立しているように見えても、実は深い「絆」があった。私たちだって、胸の内をさらけ出してケンカした人と、後で親友になることがあるじゃないか。

「真紅の着物」が明らかにする「信長の真情」

見た花 そういえば信長は本能寺で襲撃されたとき、てっきり家康が討ちに来てくれたのかと思って、「家康! 家康!」と探していましたね。
見た蔵 そしたら明智光秀と知ってガックリ。これは気の毒でした。でも本当に家康が本能寺の変を起こしていたら、どうなったんでしょうね?
同 門 そりゃ明智の大軍に攻め込まれて、家康は即討ち死にだよ。そして主君の仇を取った光秀が織田政権を握ることになるな。
見た花 そうなれば光秀はラッキー。信長は家康が殺してくれて、政権ナンバー1の地位が転がり込んできます。後年の関ケ原の合戦は豊臣対明智のいくさになってたかも。
同 門 信長について最後にひとつ。この連載の第一回で予告したんだが、家康と出会ったころの信長の真紅の着物のことだ。本能寺で最期を迎えた彼の白い寝巻が、血に染まって真っ赤だったよね。その場面に少年時代のシーンが挟み込まれていた。
見た蔵 ああ、相撲を取って家康をめっちゃシゴいていた場面ですね。信長の妹のお市によれば、それが彼の人生でいちばん幸せだった時期だった、という。
同 門 つまり人生最期の装束が、血染めとはいえ、幸福だったころと同じ色。そこに信長の人生を総括するような、作り手のメッセージが込められていたと思うんだ。
ここで一句。くれないの 炎と袖に 友の顔
見た蔵 見た花 はあ〜。なるほどねえ……。
同 門 アレ? 反応が薄いなあ(笑)。

石川数正、出奔! そのメッセージ

「関白殿下これ天下人なり」は家康への絶縁状?

同 門 本能寺の変の後、豊臣秀吉は明智光秀を討って、さらに関白に任ぜられ、強大な権力を手にする。旧信長家臣団との軋轢が生まれ、家康も小牧・長久手の戦いで秀吉に一矢報いるんだが、大勢は変わらず。頭に血が昇った徳川家中は秀吉との最終決戦を決意するんだが、ただ一人それに反対するのが、石川数正。
見た花 徳川家中は誰も彼を相手にしない。それどころか秀吉のスパイかと疑う。そこで彼は出奔せざるを得なくなる。その経緯が第33回「裏切り者」に描かれます。
見た蔵 あの苦虫を嚙み潰したような顔がもう見られないと思うと、ちょっと寂しいな。
見た花 長年支えてきた家康との、断腸の別れですね。天下人にこだわる家康に対して、「関白殿下これ天下人なり」という書き置きを残して。
同 門 ほとんど絶縁状だね。まあ、このとき数正は五十二歳。「人生五十年」の時代だから、隠居してもいい年齢だ。今の世に例えれば、徳川株式会社を定年退職して、豊臣株式会社に再就職、という感じじゃないの。亡くなったときは六十歳。そのころ秀吉は「朝鮮出兵」を行うなど、まだまだ意気軒昂だったんだよ。
見た蔵 数正の存命中は秀吉がまだ「天下人」のままだったんですね。「関白殿下これ天下人なり」という彼の書き置きはその時点で正しかったんだ。

忠臣・数正の「最後の忠義」

同 門 数正は徳川家の外交担当として、長年大きな業績を上げてきた。優れた外交官だけに、諸国の情勢を見渡す眼力を備えている。だから徳川には勝ち目がないことがわかっている。それで秀吉の傘下に入ることを家康に進言したわけだ。
見た蔵 家康は彼に怒鳴りました、ワシは秀吉に劣るのか!って。劣ってるよ!(笑)。
同 門 ラスト近くの、家康と数正の二人だけの場面は、見ごたえがあったね。特に松重豊の、胸の内と真逆の言葉で家康を諫めようとする演技はすごかった。
「私はどこまでも殿と一緒でござる!」という言葉とは裏腹に、数正は家康からあえて離反する。それによって、秀吉とのいくさを断念させた。天下泰平のため、徳川のためにはまずはそうするべきだ、というメッセージを彼は発信していたんだ。
見た花 やり方が違うから離反したけれども、「いくさなき世」を思う気持ちは家康と同じなんですね。あの書き置きは絶縁状に見えるけど、実は「最後の忠義」でした。
見た蔵 家康は内心では数正の言うことは分かってたようです。でも家臣の手前、なかなかウンとは言いづらかったんでしょうね。家康はまだ「半分、青い」んだなあ。

これからも女性キャラの大活躍に期待!

同 門 今回も瀬名はもちろん、女性キャラの活躍が目立ったね。信長の妹、お市は重要だが、その娘の茶々がこれから大活躍するから、二人まとめて次回に話そう。
見た蔵 ボクは服部半蔵の配下の忍び・女大鼠を推しますね。
見た花 ビビってる家康の家臣に代わって瀬名の介錯をしたり、汚れ役を一身に担っていますよね。武田との戦闘で腕にケガをして、忍びの仕事にハンデを背負ってしまう。
見た蔵 ボクが好きなのは、服部半蔵がそんな彼女にプロポーズするシーン。小さな花を差し出して、おなごの幸せは男にかわいがられることだ、とか言って……。
見た花 女大鼠はその花をかじり捨てて、「殺すぞ!」と一蹴。
見た蔵 いやあ、あれは彼女ならではのOKの返事に思えるんだけどな。半蔵の言い方は「仕事をやめて専業主婦」になれ、でしょ。それはもちろんNO。だけど、その後二人は仲良く一緒に仕事してる。夫婦になったんですよ。一生独りなんてかわいそうですし。
見た花 半蔵の求婚を退けて、忍びのキャリアを選んだのよ!「独りがかわいそう」なんて、考え方が古いなあ。だからお兄ちゃんにはいつまでも彼女ができないのね。
同 門 まあまあ(笑)。自由に妄想するのもドラマの楽しみ方には違いないから……。
見た花 ワタシが喝采したいのは秀吉の正室・寧々。世の平和を祈るキャラ。家康に対して居丈高に振る舞う秀吉を、みんなの前でビシッと諫めていました。
見た蔵 そのかかあ天下ぶりにはボクも恐れ入った。秀吉は、おなごが幸せなのがいい世の中だ、と言ってたけど、あれ、本音じゃないな。きっと寧々が言わせたんですよ。
同 門 このドラマ、平和を祈る女性が次々と登場してきたよね。瀬名をはじめ、家康の側室の於万・於愛、氏真の妻・糸……。寧々もこれから大活躍するよ。
同 門 見た蔵 見た花 さて今回はここまで。お読みいただきありがとうございます!次回はいよいよ大団円! 2月中旬アップの予定です。お楽しみに!(構成 阿部ヒロユキ)