これは私の妄想物語


まだ数ヶ月先の事ですが
夏の終わり、秋の初めに
いつものように
la bijouさんのアクセサリーと
コラボ開催予定です。
予定は8月末。

そのコラボのテーマ は
鏡花水月  レトロな龍族の船旅物語。
彼等は龍族。蘇りの種族。
まるで『鏡花水月』のような存在です。
彼らは時間軸を「時空の船」で
過去へ未来へ移動します。
今回は龍王に呼ばれて
過去へと旅に出ます。
ここに至るまでの
それぞれの恋物語や人間模様。
コラボに向けて
少しだけお話を
進めて行きたいと思います。

凛空と烈の物語。
ふたりのお話は時代を
いきつ戻りつ
色々な時代でふたりは……
いつもの設定とは違うふたりの恋物語を
お楽しみくださいませ。

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☘︎ 1983 年

ステージからバックヤードへ
戻っても
拍手は鳴り止まない。

「アンコールだ!
もう一度ステージへ戻るぞ」
リーダーのJUNがメンバーに声をかけた。

「凛空!キミが先頭に立たなきゃ!」
グループの一番人気の彼が
真っ先にステージへ
戻ってくれなければ
ファンは納得しない。
しかしそう急かされても
凛空は怠惰にソファーへ
身体を投げ出している。




「僕は具合が悪くて倒れたことにしてよ」
「何言ってるんだよ!
そんなわがまま通るはずもないでしょ!」

JUNは真面目で、そして
いつでも頭ごなしだ。

疲れたんだ…
もうほっといてくれないかな〜
ひとりになりたい…
この二年まともに休んでないんだよ。
毎日ステージにたち続け、
毎日握手会だのなんだの
ファンサービスに務めて
色んなマスコミに引っ張り回され
有り得ないゴシップにまみれる。
もうこんな生活…

「それがアイドルだろ?
すぐに飽きられてしまう僕らは
今の立場を確固たるものにしなきゃ!」

嫌だったら辞めちまえ!

そう怒鳴るくせに
JUNは舌の根が乾かないうちに
僕をその腕に後ろから抱いて
甘い誘惑の言葉を僕の耳に吹き込む。
『お前だけなんだよ。
うちのグループでお前の存在は
欠かせない。
その甘いマスクで
誘う笑顔で、どれほどファンの子達を
夢中にさせてるか、わかる?
その可愛い唇で
皆に投げキッスして。
何も言わなくていいから…
ねぇ、凛空。
僕もそのキスが欲しいよ…』

凛空は大きな大きなため息をついた。



「おい!凛空。また届いてるぞ!」
メンバーのひとりが手渡してくれた
小さな花束。

もう何度この花を見ているだろう。



「誰から?」


「知らない…。

さっき手渡されたんだ。

名前は言わなかった。

その人の年齢?

30前くらい?

わかんねぇよ。大人の男の年齢なんて。

がっしりした体型のイケメン。

でも花屋じゃないな、あれは。

ビシッとしたカッコイイスーツ着てたし」

メンバーのシンがぽつりと言った。


「ファンのひとりじゃないの?カードは…

『鏡花水月』

なんて読むの?

『キョウカ、、スイゲ、ツ?』

なんだ?どういう意味?」

メンバーのひとりが受け取って

花束に添えられたカードを読み取った。



一鏡花水月

鏡に映る花 

水に映る月

見ることは出来るけど

手には触れられない幻


この言葉を教えてくれた人は

たったひとり

ずっと昔 僕のそばに居た…


貴方こそ…この花に添えられた

言葉のような人。


凛空はJUNの腕から逃れ

花束を受け取ると

足は外へと向かう。






「どこに行くんだ!待てよ!凛空。

ステージどうするだよ!!

凛空!!!!」


JUNの指先が一瞬絡まったが

それがするりと解けると

凛空はいつしか走り出した。

廊下を抜けて


階段を駆け下り

公会堂の外へ走り出た。


凛空の目は周囲に向けられる。

痕跡は…



「…………!」

大通りの遥向こう側
ゆっくりと歩いていく後ろ姿。
その見覚えのある…

胸が切なく震える…
れ、、、つっ…

大粒の涙が一筋
凛空の頬を濡らす。
「烈ーーっ‼️」

振り返る優しい顔。

凛空は大通りを無意識に横切った。
彼の胸に
もう僕を離さないで…
僕に寂しさだけを残して
居なくならないで。
僕を連れて行って



キィーーーーッ!!!!


ガッシャァ〜ン!!!!


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☘︎ 1943年



「きみは蘇りを信じるか?」


あの時彼は

そんな事を唐突に

僕に突きつけた。



彼は大学生で、僕の家庭教師。

とても頭の良い人で

祖母が勧めてくれた

知り合いのお孫さん。


勉強が終わって、

少し疲れた頭を休める為に

僕がのびをしていると。


「蘇り?

人間は7度生まれ変わると言うけど

男は男、男は女。

だけど

女は女にしか生まれ変わらない。

お祖母様はそんな事を

僕に言ったよ。

なんで?と聞いたら

女は業が深いからだって…

自分も女なのにね」


僕は何気なくあの時

そんなふうに言ったような気がする。


「もうすぐな…

来年から始まる。

俺たち学生は戦争に行かなければならない」


彼がぽつりと言った。


「どこへ?お国の為なんでしょう?

それが義務だから…」


僕はあの時平然と答えた。

それがどんなに彼にとって

酷な言い方だったかも

想像する事もしないで。


みんな当たり前のように

戦場へ送り出す。


「ねぇ、烈。いつ返ってくるの?」


「凛空…」


彼は何も言わなかった。


翌年11月。

彼の家庭教師はそれが最後になった。


そして彼は

蘇りを信じていた。


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○○○○  年

※龍族に年月は存在しません。

彼らは永遠の時を生きます。

いつかは枯れて行きますが、

それはいつだか彼らすら

分からないのです。



夜の闇の中に浮かぶ時空の船。

灰色の靄のかかった船。

ぼんやりと宙に浮かんでいる。

静かに乗船する人々の中に

凛空の姿があった。


「麗凛空(リーリンコン・リアン)様…

本日はご乗船ありがとうございます。

私はこの船の船長

 龍 風季(ロンフォンジー)と申します。

短いクルーズではありますが、

上海までの旅 お楽しみくださいませ。」


風季は入口でチケットを確認しながら

そう言った。


「ありがとう…」


「お部屋へはこの王 月朧が(ワンユェロン)

ご案内致します。

また身の回りのお世話もなんなりと

月朧にお申しつけ下さいませ」


風季の後ろに立つ小柄だが

きりりとした顔立ちの青年が

笑顔を見せた。


「よろしく〜!

ユエでいッスよ」




「こらっ!ユエ!

なんて口の利き方」


凛空は初めてふわりと笑った。


「いいですよ。ユエくんは

僕とあんまり歳が

変わらないみたいだから。

ねっ!ユエくん。仲良くしてね」


凛空がそう言って手を差し出すと、

ユエは嬉しそうに握手した。




「お荷物はここに置きますね。

何か飲み物をお持ちしますか?

それとも下のラウンジで

ウェルカムドリンクのサービスも

してますよ!

お食事の前にいかがですか?」


ユエが気を利かせた。


「じゃあ着替えたら

降りて行こうかな…」


ユエは荷物を部屋の隅に置くと

「はい!では。

お食事は18時半で宜しいですか?」


「うん…」


「では凛空様

お待ちしております」


ぺこりと彼は頭を下げて

ドアを閉める時に

可愛い笑顔を残していった。





僕の名前は

凛空…


上の名前は……忘れた。


歳は、、確か17歳。

僕は……なんでここにいるのだっけ?

それを思い出さない。

たったひとつ

広い背中を覚えている。

記憶の中のそれが時々

ふっと顔を出す。

突然

予告もなしに…すると

何故かとても懐かしく

胸が熱くなり

とても哀しくなる。



この船に乗船する前に

髪が長く

背が高く

指先の綺麗な

美しい男(ヒト)に聞かれた。





「お前は車に跳ねられて

命を落とした。

お前の前職はアイドル。歌い手。


だがこの船に乗ってしまえば

もうお前は元の所へ戻れなくなる。

お前は名前を失い、職を失い

身分を失う。

それまでの過去を全て失う。

お前を覚えている者もいなくなる。

それでも構わないか?

お前は新しい人生をあゆみ出すが

それはとてつもなく長く

永遠のように感じるほど

長い時を暮らすことになる。


お前は独りだ。

このままずっと独りかもしれない。

それでも構わないか?」



独り……

とても魅力的な言葉だ。

僕はあまり深くも考えず

首を縦に振った。


後悔なんかない。


凛空

名前だけは残してやろう。

いずれその名が必要になるだろうから。

男はふっと微笑み

俺の額に指を伸ばした。

彼の冷たい指先が額に触れた。


その瞬間……

俺は全ての記憶を失った。







本日もお立ち寄り

ありがとうございます