これは私の妄想物語
真っ暗だった闇が切り裂かれ
一瞬にして柔らかな光が
空に点った。
月を隠す雲が途切れたのだ。
疲れてウトウトしていた莉朶が
ハッと目を覚ます。
何気なく外へ見やると……
(えっ?今のは??)
白い大きな塊が
車の横を通り過ぎた。
目が合った??
彼?は確実に莉朶を見て
頷いたように思えた。
(今の?? ……
狼?真っ白な……
……銀狼?!)
おとぎ話に出てくる月に照らされて
銀のふわふわな毛並みの美しい
大きな狼を思い出した。
でもあれはおとぎ話。
運転する逸郎も隣の席で惰眠を貪る男も
気づいてはいない
『実際にいるんだよ、龍族は…』
彼等がさっき話していたこと。
おとぎ話でも伝説や言い伝えでもなく
実際に存在する?!
龍族、、そうだ!
楓季はその種族で…
思いを巡らせている時
キキキッーーッ
突然
車の鋭いブレーキ音と共に
車体が横滑りした。
なにかにぶつかりそうになったか?
そのままぐるりと回転し……
道路脇の大きな木にぶつかり……
莉朶は一瞬にして車の外へ投げ出された。
数秒後車から火の手が上がった。
莉朶は起き上がろうとして
身体に力が入らないことに気づく。
身体全身がバラバラになったような
……痛い……
どこだか分からないけど
痛みらしきものを
ジワリと感じた。
ああ嫌だ
胸が濡れている。
腕は前で拘束されていたので、
そっとそこを触ろうとして
違和感を感じた。
ガザガサした手触りのものが
胸から飛び出している。
……いや?
刺さって??
これは木の枝?かなり太い。
では濡れているのは
血??
気が遠くなる。
ああ …私このまま
死ぬのかな?
頭の中を巡る母や
親しい人達。
楓希……言い忘れたことがあった
……
アタシはアンタを
最初から気に入っていた。
おかしな男だと思いながら
強く強く惹かれた。
最期に会いたい……
会いたい。。。
「おいっ!
……
誰かが揺さぶって
ああ、、もう目を開けていられない。
。。。
。。。
「今息を引き取ったぞ。
時間がない!
楓希、、やれるか?」
志煌が彼女を受け止めて
首を確かめた。
「大丈夫だ。シールドは健在!」
銀狼から元の志煌に戻っている。
彼から莉朶を受け取ると
そっと胸に刺さった鋭い木の枝を
引き抜いた。
じわり……血が滲む。
楓希はひと呼吸置いて
「おいっ!目を覚ませ!
お前は今死んだのだ。
生きたいか?
蘇りたいか?
返事を聞かせろ!」
その言葉に答えるように
うっすらと瞼を開く莉朶。
「……し、、死んだの?
蘇り??」
「ああ、生きたければ
答えてくれ。
どうする?
考えている暇はないぞ。
蘇りを望むなら今すぐ
俺のこの手を掴め‼️(莉朶!!)」
掴んでくれ!莉朶!!
もう時間がない。
莉朶はゆるゆると手を伸ばす。
「蘇ったら、、
あの人に会える?」
あの人??誰のことだ?
ああなんでもいい。
お前の会いたい奴が誰でもいい。
このまま別れてしまうのだけは
俺は避けたいんだ。
お前が俺を忘れても……
莉朶!生きてくれ!
莉朶は小さくコクリと頷いた。
「会いたい……
生きれば会える?
……
生きたいよ」
そう言うと楓希の指を掴んだ。
「よしっ!頑張れ楓希
あと少しだ!」
心配そうに見守っていた志煌が
楓希の背中を押した。
楓希の舌が二股に別れている。
深呼吸をして
莉朶の固く閉じられた唇を舐めると
うっすらと開いたそれを目指して
一気にこじ開けた。
彼女の口中にその舌を忍ばせると
それはまるで自分の意志とは違う動きで
彼女の中を隅々まで蹂躙する。
終いには喉の奥の奥まで
突っ込んで……
そうして彼女は
嗚咽で苦しみ
涙を流しながら転生した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
空に浮かぶ「時の船」
転生した莉朶は
まだ意識を失ったまま。
目覚めるのは個人によって違うので
いつだか分からない。
が……楓希の仕事はここまで。
この先は乗船して
彼女が目覚めるまで
烈が面倒を見る。
楓希は乗船できない。
「お別れだ…莉朶。
楽しかったよ、今まで」
離れ難い気持ちを指先に込めて
楓希は彼女の小指と
自分のを絡ませた。
ふっと彼女が力を入れてくれたような
そんな気がした。
俺の声が聞こえたのかな?
だったら莉朶
もう一度目開けて
俺に微笑みかけてくれ!
だが彼女の瞼は閉じたまま。
楓希の想いは届かない。
転生して
再びどこかで出会っても
彼女は自分のことを忘れているだろう。
悲しいが、、、
それでいい……
お前に最期に告げられなかった。
俺の気持ち……
唇を噛み締めて
迎えに来た烈に莉朶を渡した。
彼はそっと彼女を受け取ると
何も言わず
優しい笑みを浮かべて
頷いた。
気持ちを振り払うように
後ろを振り返る。
志煌が少し切なげな顔をして
楓希を見つめた。
「志煌はどうする?
やっぱり追うのか?」
「ああ。逸郎は死んじまった。
所詮ここまでの運命だったのさ。
あとは地元の警察が
うまく始末してくれるだろう。
だが阿木津は
元からこの世界の人間じゃなかったから
事故の際に消えてしまった。
微かに残る彼の匂いを追って
行けるところまで行ってみる。」
「気をつけろよ!」
「ああ!……
お前こそ大丈夫か?
莉朶は普通の子ではないから
いつかお前のことを
思いだすかもしれんぞ」
じゃあな!と珍しく笑顔を見せて
志煌は闇の中へ消えていった。
やけに背中が寒い。
楓希は莉朶の消えた空を見あげて
大きなため息をついた。
ただ寒い……
心が冷えて、、
温もりが欲しい……
月はまた隠れた。
空から本格的に白い雪が舞う。
また積もるな、、
雪だるま、、作ってやれなかったな。
お、、オォ〜い、、
遠くから声が聞こえる。
「おおーい!楓希!
はよっ!戻って来んか〜!!
まだ仕事がてんこ盛りあるぞぉぉ〜』
倖箭の思念が飛んできた。
『そこで道草食ってんじゃねぇぞ!』
ああ……この人はワビもサビもない
俺もか、、
彼女にそう言われていたな。
『わかってますよ!
今戻ります!ってば!』
『その(てば)は美味くねぇ!』
もう!うるさいな。
少しは想い出に浸らせろ!!
『なんか言ったか〜?』
『はいはい!
戻ればいいんでしょ、、戻れば』
と、その途端
仲間達のゲラゲラ笑う
笑い声が耳元で爆発した。
くっそぉ〜〜っ!
楓希は二度身震いをした。
毛並みの豊かな美しい金狼は
月の光に照らされて
孤独をしみじみ感じるのか?
遠吠えをあげるのだった。
🕊 𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸
本日もお立ち寄り
ありがとうございます
莉朶と楓希のおとぎ話
第一部はここまで。
長らくお付き合い
ありがとうございました。
次は転生後の2人の物語を
いずれまた*˙︶˙*)ノ"マタネー♡

