16日の試合は通っている中学校で行われた。

ヤッホー、朝寝坊出来る!とはいかず、

準備の為早く行かなければならない。

だよね。でも他の試合会場では

その近くの方々が準備をしてくださる。

そうやって試合が成り立っているんだね。

いいよ、早起き、するよ!!

 

 

 

試合が進むと負けた相手は帰っていく。

が、今日は片付けをしなければいけないから

うちの生徒は帰れない。

 

 

 

ところが一人、帰りたがっている子がいる。

役員の方が対応し、説得している模様。

役員の方:

「みんなの試合を見るのも勉強になるよ。」

「頑張ろう。」

ふむふむ。

 

ところがその子、度重なる説得で

うつむいてしまって目も合わせない。

いずみが役員の方に聞いても、

疲れたのか、具合が悪いのか、

今一つよく分からなかった。

そして役員の方が居なくなった時、

「部室に行ってお弁当食べてきます。」

といずみに言って出て行った。

 

そしてその子が戻ってない事に気づいたのが

少なくとも45分は経ってからだった。

すると丁度戻ってきて、

人気の少ない場所に一人で座った。

具合が気になったいずみは声をかけた。

 

最初は気まずそうにうつむいたまま、

少しずつ返事をしてくれた。

「どんな風に辛い?」

「そうなるのはどんな時?」

その質問に対する返事は

「試合会場は情報量が多くて疲れる。

 人が多くて音が沢山聞こえる場所は

 情報量が多くて疲れてしまう。」

あーそういう事!

「えー、それってさ、」

「そう、特性なんです。」

「だよねー。診断ついてる?」

「はい、自閉スペクトラムです。」

 

ちょ、なんだー、早く言ってよー。

体調悪いかと思って心配したじゃんよー。

まあでも辛いだろうからさ、

これからはそうなる前に対策しようよ。

「僕だけ違う扱いだとどうのこうの・・・」

 

いや違うんだから違う扱いでいいんだよ。

みんなと違う特性の僕が、

ここで卓球やっていくにはどうしたらいいか、

試合会場で具合悪くなるのを

防ぐにはどうしたらいいか、

それを考えれば辛くなくなるんじゃない?

せっかく卓球部入ったんだから

続けられる事考えた方が私は嬉しいよ。

 

そういずみが言ったら

心を開いてくれたように

色々と話してくれた。

多分、辛い思い沢山してきたんだろうな。

ここまで話したの初めてですって言ってた。

 

そうなんだー、それなら

誰も君の事分からなくて

それによる誤解もあっただろうね。

今みたいに話してくれると

その上の言動だったんだってわかるし

そういう事なら相手も腹が立たないよ。

 

「診断名をみんなに公表するのは?」

「全然構いません。」

じゃあ問題ないね。

これってみんなにとっても

メリットになるんだよ。

人と違う特性の子がいて、

そういう場合どうすればいいか、

中学の時点で学べるんだからね。

 

卓球部のメンバーってね、

いい子が揃ってるんだよ。

保護者の方もまた優秀で

思いやりのある人が揃ってて

君に特性があっても

誰も何も問題にしないと思うよ。

ただ、特性の内容については

誰も分からないから これからそれを

自分でどんどん開示してね。

その都度少しずつ考えていこう。

 

 

そう話す頃にはすっかり笑顔になってて

「僕って卓球部入って

 めちゃくちゃラッキーだったんですね!」

と言った。

 

 

 

 

こんなに近くで見ることが出来てラッキー。