自分を大切にするために我慢を止めよう、
嫌なことをするのを止めようと、よく言われる。
けれどこの試合に出る事は
嫌な事がいくつも重なっている
嫌な事オンパレードだ。
息子は今からそれをしに行ったよ。
もちろんいずみもそれを止めなかった。
嫌な事なのになぜ?
中学に入学して卓球部に入った。
多動気味な息子は卓球が性に合って
喜んで参加するようになった。
ただ、ここまで強くなりたいとか
この大会に出たいとかの
具体的な目標がある訳ではないので
ここでの我慢が、目標を達成させるための
目的のある我慢にはあたらない。
それなら尚更、嫌な事なのになぜ?
自分の気持ちに嘘をついたり、諦めから
出場を引き受けたのかどうか。
見極めが難しかった。
「誰も悪くないんだよ。」
息子のこの言葉を信頼することにした。
息子とダブルス組みたくないと言った子のことさえ
不満を言わなかった。
その言葉通り、相手を悪者にしていない。
という事は、自分を被害者にしていない。
自己犠牲でやっているわけではないということだ。
気持ちとしては嫌だけれど
全体を考慮して自分の役割を理解し、受け入れ、
意思をもって嫌な事をすることにしたのだ。
今回は試合だけれど、
誰も悪くないが辛い出来事というのはたくさんある。
自然災害は最も代表的な事柄だと思うけど
被害を受けても人生を能動的に進めている人が、
実はとても不思議だった。
どうしてそんな事が出来るの?って。
規模は違うけど、
息子みたいに思って生きているのかもな。
当日も文句一つ言わなかったけれど
会場入りする顔は、
今まで見た事もない暗い表情だった。
当然だ。
一緒にやりたくないと言う相手や
こいつではだめだと思っているメンバーの中に
一人で入っていくのだから。
魔法を使ってこの状況を全部変えたいよ!!
辛いなー親って!!
こんな苦しい「行ってらっしゃい」があるのか。
必死に涙を堪えて、
子どもがメンバーと合流するのを見届けた。