どんな状況であれ、気持ちがきしまない戦闘はない

 

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

 

 

イギリス
[ロンドン]常設統合司令部

常設統合司令部司令官のパウエル大佐(ヘレン・ミレン)

情報部員のサディック伍長(バボー・シーセイ)
[ロンドン]コブラ・オフィス(国家緊急事態対策委員会)
国防副参謀長であるベンソン中将(アラン・リックマン)
ブライアン閣外大臣(ジェレミー・ノーサム)
アンジェラ政務次官アフリカ担当(モニカ・ドラン)
シンガポールへ外遊中のジェームス外務相)(イアン・グレン)

アメリカ
[クリーチ空軍基地]
ドローン操縦士のスティーヴ中尉(アーロン・ポール)
キャリー上等航空兵(フィービー・フォックス)
[ハワイ]パールハーバー画像解析班
ルーシー画像分析官)(キム・エンゲルブレヒト)
[ホワイトハウス]
北京へ外遊中のスタニツク国務長官)(マイケル・オキーフ)
国家安全保障会議上級法律顧問ミズ・ゴールドマン(ライラ・ロビンズ)

ケニア
[ナイロビ]テロリストの隠れ家付近
現地工作員のジャマ(バーカッド・アブディ)
標的の巻き添え被害を受ける9歳の少女アリア(アイシャ・タコウ)
隠れ家 ソマリアのイスラム武装勢力アル・シャバブ
アイシャ・アル・ハディ/英名スーザン・ダンフォード

=東アフリカ最重要指名手配のテロリスト(レックス・キング)

 

短い上映時間内に現代リアルに起こってる「戦闘」を表してて

ずっと緊張感が途切れない。

 

唯一ホッとできてたのが健気なアリアちゃんの笑顔を見れた時

それは攻撃指示を待ってるスティーブやキャリーも同じ事。

 

常設統合司令部司令官であり女性の大佐であるパウエル、

今回の作戦によって家でも緊張が解けないのが判る。

 

「コブラ・オフィス」に入る前にベンソン中将の子煩悩が判るシーン、

予告編でなぜこの映画にこんな状況を挟むのか判らなかったけど、

このシーンの中将の優しい表情と対比するシーンが出てくる。

 

これがかなりきつい。

 

その表情の差を演じ分けられる名優アラン・リックマンの本作は

遺作となってる。

 

本当に早すぎる死だわ。

 

最初に立てられた作戦なら簡単に終わるはずだったのに、

情報は不確かで、それゆえ決断が遅くなり、責任政治家達の

責任逃れが始まり、軍人は身動きできない。

 

この夏観た「シン・ゴジラ」でも遅々として進まない会議シーンを

見せつけられたけど、いずこのお国も一緒と失笑するしかない。

 

現場で鳥型や昆虫型のマイクロクローンを操るジャマ。

 

登場時にはこんな重要任務つくわりにちょっと抜けてる人やな?と

思ってたけど、なんのなんの。

 

色々と機転きくし、命の危険も顧みず最後までアリアを助ける方法を

探して努力する。

 

戦場で顔を合わせて戦う事をしなくても、血の臭いをかがなくても

ドローンの遠隔操作で事が済んでしまう。

 

それでもドローンの狙撃手はその場と同じようにその目で見て聞いて

その上で行動してる。

 

そのストレスはとんでもない事やろう。

 

なんかスティーヴとキャリーの動揺と違い、至って冷静やった

ハワイのルーシー、彼女はもしかしたら心に蓋をする事で

自分を守ってるのかもしれない。

 

テロリストであれイギリス国籍の人間を攻撃する事に躊躇する

政治家達。

 

国籍がどうであれ魂を悪魔に売り渡した人間であり世界を地獄に

変えてしまおうと画策してる人間が生きたまま捕獲してどうにか

できると思えるのが不思議。

 

アイシャ・アル・ハディは祖国に戻ったとしても周りに悪影響を

及ぼすだけなのに。

 

最終的に彼らの下した決断、これを正しいか否かを決める事は

誰にもできない。

 

観終って私は緊張感から解放されたけど、スティーブとキャリーは

24時間後にはこの地獄に戻ってこなくてはならない。

 

どれだけ戦い方が変わったとしても、アメリカ人の兵士がPTSDに

苛まれるのも無理ないわ。

 

以下内容に触れてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアちゃんがとにかくいい子なのよ、勉強が好きでお父さんの

作ってくれたフラフープで遊ぶのが好きで、お母さんの焼いた

パンを一生懸命売る可愛い女の子。

 

この映画でのテロリスト集団「アル・シャバブ」は架空かと思ったら

実在のテロリスト組織やった。

 

観てる間はタリバンやISの例えやと思ってたけど、調べたら

ソマリア拠点のイスラム勢力やった。

 

過激派のイスラム勢力は女性が勉強する事を認めてない。

 

だからアリアのお父さんはアリアが勉強してるのも、遊ぶのも

他の人には隠してる。

 

このシーンだけでもこの地域の人々が窮屈に暮らしてるのが判る。

 

昔読んだ「ソルハ」で狂信的イスラム勢力は間違ってるのを知ってる

からアリアが置かれてる状況が本当に腹が立つ。

 

戦闘における民間人被害(コラテラル・ダメージ)の数値が高い間は

攻撃できない、その為に取られた手法。

 

パウエルの取った形に残らない導き方、躊躇しながら彼女の意図を

汲み取って報告したサディック伍長。

 

彼の心の中はどんなに波打っていただろう。

 

そしてベンソン中将、自分の行った作戦に責任を持ち、その行動

を正しいと思わなければアイデンティティが崩れるかもしれない。

 

だからこそアンジェラ政務次官に辛辣な言葉を言われても

作戦に従事した全ての軍人の気持ちを代弁したんだろう。

 

だけどコブラを出たあと、部下に手渡された物を見た時の表情。

 

戦闘世界に生きる子供と関わる軍人としての自分と、平和な世界に

生きる子供と関わる親としての自分、ボー然としてしまう。

 

このシーンを撮ろうと思った監督はすごいと思った。

 

日本はテロリストが出てきた時にどう対処できるんだろう?