今日、夜勤前に病院へ生命保険会社に出す診断書を書いてもらいに行った。
受付で依頼をするが、主治医にどうしてもお伝えしておきたいことがあり、病棟看護師を呼んでもらった。
やって来たのは若い女性の看護師。
この子で話が通じるか？と若干不安だったが、まあ仕方ない。
お伝えしたいことはメモ書きで主治医に渡してもらうようにも依頼していたので、まあなんとかなるだろう。
一応念押しのためのお願いだったのでまあよしとした。
そして、ついでに息子の様子を聞いた。
「どうしてますか？」と。
「ほとんど部屋で過ごされています」
「食事は自分でできません」
「トイレも行けません。おむつを使っています」
「時々暴れています」
「机をどんどん叩いたりしています」
「ほとんど部屋で寝ているので歩くことはありません」
・・・ちょっと待って。
それって寝たきりってこと？
「自分で何もできないってことですか？」
「はい」
「着替えも自分でできないんですか？」
「はい」
「お風呂も自分で入れないんですか？」
「はい」
・・・一体何が起こったの？
「あの、病状先生から何も聞いてないので、早急に病状説明の時間を作っていただきたいのでお願いします」
「わかりました」
本当はそこでもっと突っ込んで話をすべきだったんだと思うけど、私の頭の中パニック。
今の病院に戻ってきて半月。
まだ半月。半月しか経ってない。
半月前にあった息子は、明らかに精神疾患を患った患者だった。
でも、ちゃんと歩いてた。食べてた。話もできてた。自分のことは自分でできてた。
なのに、今歩くことも食べることも何も自分のことは自分でできないってどういうこと？
そして、そんな病状なのに病院から何の説明もないって、どういうこと？
今日は主治医がいないから、また後日病状説明の日を設けるという看護師に
よろしくお願いします
とお願い岐路に着く。というか仕事に向かう。
なんで？
何が起こった？
何が起こることがある？
薬でドロドロにされてるのか？
それとも向精神薬を急に止めたから副反応として反応してるのか？
それともこの半月でパーキンソンが劇的に進行したのか？
息子はまだ22歳なんだよ。これで寝たきりって今後どうしていったらいいの？
食事は自分で食べれてないって言ってるけど嚥下はできてるの？
食べられなかったら点滴？C V？PEG？
ちょっと待って。そこまでしてこの子生かせてこれから何かいいことがあるのか？
寝たきりになって、何も楽しみなくて、ただ命を繋ぐだけ、そんな状態でいいの？
私は看護師として働いている。
ゆえに、人の命のあり方に関しては他の人よりも考える。
いろんな人の生き様、そして死に際を見てきた。
本人の考え方、家族の考え方、生きてほしいという思い、でも生きているのが辛いという思い
いろんな患者さんや家族さんを見てきて、私の中で絶対決めていることがある。
自分も親も子供も
「延命はしない」
例えどんな状況であっても、延命はしない。
いや、それが例えば治る見込みがあるのであれば考える。
例えば、癌とか。
できるだけ子どもだけにしたくない思いが強いので、なるべくなら子供より長く生きたいと思っている。
そうじゃないとうちの子たちはどうしようもない。
頼るところもない、兄弟二人揃って発達障害
この社会で生きていけるとは思えない
・・・かなり早いけど来るべき時が来たか。
薬の調節がうまくいってなくてこの状態になっているのであれば、薬を調節したら戻るかもしれへんやん！
そう言ってくれる職場の先輩看護師の言いたいこともわかる。
私もよその子にならそう言ってるかもしれない。
でも、息子が生きるのが辛いってずっと思っていることも知ってる。
死にたくてしたわけじゃない、SOSのためにしていたリスカだとは分かっているけど
それでも、そんなにも辛い彼を無理に生きさせるのはやはり違う
もし、もう自分で食べられないのであれば、
いや、食べさせてもらって食べられるのならいい。
でも、もう嚥下もできない状態であれば
母の時と同じように、もう点滴も全部止めて自宅に連れ帰って私自身の手で看取ってあげよう。
22歳で終わる命。
大学卒業したて、普通ならこれからいろんなことがあるけど楽しいこともたくさん待っている人生だっただろう。
でも、彼はそこには辿り着けない。
お母さんのエゴでごめん。
でも、このまま寝たきりになって何もできなくてただ毎日天井を見てるだけの日々を過ごすのを見ているのも辛い。
もう喋ることもきっとできないんだろう。
意思疎通もできなかったら、どうしてほしいかも分からない。
あなたは、その状態でも生きたいと思うの？
もうその確認はできない。
だから、ごめん。
お母さんの看護観で動かせてもらうね。
先生に話を聞いて、あなたの状態を確認して、その状態によってはもう命を終わりにしよう。
大丈夫。お母さんが最後までついていてあげるから。
最後くらいは寂しくないようにしてあげるから。
だから、もうしんどい思いしなくていいよ。
通勤の車の中で泣きながら決めた。
このコロナ禍で、顔も見れない。何しているかもわからない。治療方針さえも伝えられない。
全く何も情報がないままで
「寝たきりになった」という情報だけが入ってきた今日の日中
今日、まともに仕事ができる気がしなかった。
息子の命の灯火を消そうと決めているのに、病院でその命の灯火を消さないように看護をする
今日ちゃんと働けるのか
いや、看護師は女優だから
無になって働けばいい
とにかく命を守ればいい。
こんな時だからこそ冷静に。
息子に残された時間はあとどれくらいなんだろう。
そんなことを考えながら、仕事に就いた。
続く。
