Side:S
じりじりと、部外者である俺の方がよほど焦れていた。
大野さんとニノがすれ違った(と思ってる)あの日から3週間が経とうとしていた。
己の性格上、そんな状態の2人を完全に放っておくことなどできず、それとなく電話やメールで探りをいれていたが、どうにもこうにも芳しくない。
よって、いらぬ世話だと突っぱねられようが今日は絶対に介入するつもりで局入りした。
N「じゃあ、まったね」
しかし、当事者の片割れは鉄壁の防御をもって仕事が終わると同時に帰って行った。
アカデミー賞受賞の実力がこれほど憎いと思う日が来るなんて。
仕方ない、もう片方をどうにかしよう。
俺がいないところでは分からないが、少なくとも俺の前では今までと変わらないように振舞っていたニノとは対照的に、もう片方である大野さんはずっと戸惑っていた。
S「ちょっといい」
少しばかり気合を入れなおして大野さんに声をかければ、緩慢な動作ではあるがこちらを振り返った。
じーっと俺を見つめた後、ようやく内容を把握したのか小さく首を縦に振る。
S「2人のことだからあんまり口をだしたくないけど、このままだと絶対に俺が後悔すると思うから敢えて口をだすよ」
O「うん」
自身でも手詰まりだと感じていたのか、相手の名前を出さなくても誰のことを言っているのかわかった大野さんはすんなりと頷いた。
S「ちゃんと話せてる?」
心配してることを言葉の端々に乗せて問えば、ふるふると横に顔を振った。
やっぱりと思ったことは顔には出さず、一拍置いて更に問う。
S「『アイツはいい奴だ。オマエなんかとは違って嘘なんかつかねえよ』」
O「!?」
S「そんなこと、本当に言ってたの?」
O「……」
S「……」
O「……言った」
後悔していることは、聞かなくてもその表情が物語っていた。
わざとではないだろうけど、よりにもよって自分に好意を寄せている相手を引き合いに出さなくてもいいだろうに。
どうしたものかと、無意識で大きく息を吐けば、それを責められているとでも思ったのか、大野さんが切羽詰まったみたいに話しだした。
O「確かに言ったけど、本気で言ったわけじゃないし」
S「本気かどうかなんて、ニノにはわかんないでしょ」
O「そんなことない!ニノならっ」
S「ニノなら言わなくてもわかるって?」
話を遮り、最後を引き継いで逆に問えば、気まずそうに目をそらして唇を噛んだ。
大野さんには珍しいその行動が、自分でもまずかったんだと認識していることを教えてくれた。
どうしたもんかなと逡巡していると、ノックもなしに楽屋の扉が開いた。
M「面白い話をしてた奴らを連れてきた」
松潤が後輩2人の肩を両手でがっちりと捕まえたまま楽屋に入ってきた。
満面の笑み。
コイツ、絶対に面白がってんな。