Side:O
煩悩まみれの自分に気づいてしまったあの日以来、なんとなく恥ずかしくて、あと、カズに会ったら理性がもたない気がして、避けてたわけじゃないけど、結果として避けてしまっていた。
だけど、そろそろ限界。
さすがにカズが足りない。
よし、メシに誘おう。
んで、大丈夫そうならお持ち帰りだ♪
迎えた5人での仕事。
いつも通りに終え、コンサートの早替え並みのスピードで着替えた。
O「メシ食いに行こう」
同じく着替え終えたカズに後ろから声をかければ、「え、あ、えっと…」って、いいか悪いかよくわかんねえ返事。
珍しいなって思いながらその続きを待つけど、困ったような顔をするだけで答えが返ってこない。
そんな変な沈黙が続くおれたちを見かねたのか、翔くんが寄ってきた。
S「メシ、どこ行くの?決まってないならお勧めのところを紹介しようか?」
O「ううん、大丈夫。この間ユーリが教えて…」
N「行かないっ!」
突然おれと翔君を遮ってカズが大声をだした。
2人ともその声の大きさにびっくりして、黙ってしまう。
O「そっか、じゃあまた今度…」
N「行かない」
気を取り直し、『変だな』と思いながらも仕切りなおそうとしたのに、それすらも言わせてもらえずの拒否。
O「いや、だからおまえの予定に合わせるって」
N「アイツから教えてもらった店なんか行かない」
O「はあ!?」
さすがにわかった。
コイツ、昔あんだけユーリに妬いたのに、まだ妬き足りねーのかよ。
O「いい加減にしろよ」
S「ちょっ、大野さん、穏便に…」
思わずカズに詰め寄ろうとしたおれを見かねた翔くんが止めに入ってくれた。
さっと楽屋を見渡せば、相葉ちゃんも松潤もこっちを見ている。
いかんいかん。
O「おまえなあ、それはユーリに失礼だろ」
N「嫌なものは、嫌」
O「我儘もいい加減にしろ、ユーリだったら…」
N「じゃあ、アイツと行けばいいじゃん」
O「なっ!?」
S「ニノ、それはちょっと……」
嫉妬から出ている言葉だってわかったけど、カチンときた。
せっかく止めに入ってくれた翔くんをすり抜け、カズの胸倉をつかむ。
O「可愛げがねえにも程がある。少しはユーリを見習え」
真正面から苛立ちをぶつければ、カズの目が一瞬揺れる。
……言い過ぎたんだって、気がついた。
だけど、次になんていえばいいかわからず、声が出ない。
N「だったら……、だったら、アイツと付き合えばいいじゃん」
O「!?」
絞り出すような、泣いているような声。
だけどおれは驚きすぎて、言葉の意味が理解できない。
静まり返る楽屋。
長い長い静寂の後、ポツンと聞こえてきたのは、一番慣れ親しんだ声。
N「オレはあなたを傷つけてるんでしょ」
O「な、にぃ…?」
N「アイツの方が、信用できるんでしょ」
O「カズ?」
顔を覗き込もうとしたした瞬間、渾身の強さで突き飛ばされた。
反動で2歩3歩と後退。
N「大丈夫。オレ、ちゃんと別れてあげるよ」
おれを見ているカズの表情は強気。
けど、語尾が震えてた。
O「カズ、落ち着け。ひとまず…」
N「だってあなたいっつも言ってたじゃない。『アイツはいい奴だ。オマエなんかとは違って嘘なんかつかねえよ』って」
O「それはっ……」
心当たりがあるセリフ。
何にも考えないでカズに放っていた言葉がおれ自身を突き刺す。
N「だから、アイツの言ったことは真実。あなたの本心ってこと」
O「ちがっ……」
N「違わない」
なんでだ。
あんなのはただの言葉の綾だろ。
おまえだって、わかんだろ。
N「もうさ、潮時だったんだよ」
O「やめろ」
強気の表情が消え、感情自体が見えなくなる。
いやだ、おまえはおれのだ。
N「もう手近なメンバーなんかで済ませなくていいよ」
O「馬鹿なこと言うな」
N「ちゃんとオレから、解放してあげる」
にっこりと笑った表情は作り物。
カズがおれを、拒絶した。