Side:O
諸々あった個展関連の仕事が一段落した。
あいつも映画がクランクアップしたらしい。
会いてえな。
予定なんてなんもわかんないけど、カズの家で帰りを待つことに決めた。
あわよくば…、なんてシタゴコロ付きで。
だけど、帰ってきたカズがあんまりにも憔悴してて、シタゴコロをなくすべく絵に集中した。
必死で頑張ったおかげでカズが風呂に入ってる間になんとか煩悩を消し、マッサージでもしてやるか、なんてのんきに考えてた。
N「はあ~、いいお湯だった」
O「///」
それなのに、現実は残酷。
風呂上りのカズは、おれの五感すべてを刺激した。
本人の意志とは無関係に腹の奥がぞろりと動く。
マズイ。
これは間違いなく、マズすぎる。
このままだと絶対に欲望がむくむくと育つ自信がある。
不満な気配を漂わせたのはわかったが、背に腹は代えられず、一緒に寝るという魅惑的な誘いを断腸の思いで阻止した。
そして、ギリギリの瀬戸際でとどまってるおれの理性を間違いなく破壊するであろう、カズの寝顔も、寝ぼけまなこのカズも諦め、カズの家をあとにした。
気分は絶好調超で戒律の厳しい修行僧。
だけどおれは知らなかった。
自分の煩悩と戦うためとはいえ、ことごとくカズを傷つけてしまっていたということを。
そしてその行為は、おれが望まない決断までをもカズに迫らせてしまっていたということを。
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