Side:O


 昨日は、カズの大好きなゲームの新作発売日だった。
 けっこう前に、本当にうれしそうに教えてくれたんだ。

 だけど、おれもこの日を首を長~くして、待ちわびていた。
 仕事の関係で、昨日はカズのところに行けなかったから、カズが楽屋に来るのを今か今かと待っている。


 ――ペタペタペタ。

 来たっ!!


 ガチャ

N「……はよ」
A「ニノ、おはよ」
M「おはよう」
S「おはよー、……って、今日だったの?発売日?」
O「ううん。きのう」

 翔くんの問いにはおれが答える。

 携帯ゲーム機でゲームをしながら楽屋に入ってきたカズは、ドアの前に立ち尽くしている。
 すかさず近付いて行き、カズの帽子をとり、斜めにかけている鞄を頭から抜く。
 片方の手で荷物を持って、もう片方の手はカズの背中にまわし、ソファまでエスコートする。
 カズを無事にソファに座らせたのを確認して、荷物を定位置に置いた。

S「相変わらず、新作に夢中の時は甲斐甲斐しいね」
M「甘やかしすぎじゃね?」
A「うひゃひゃひゃ、ニノ完璧にあかちゃんと同じじゃん」
O「……けど、くせになる」

 おれの発言にみんながひいたのがわかった。
 でもまあ、そんなのは今さらだから気にしない。 

 カズは聞こえているだろうけど、まったく反応しない。


 カズはゲーム中毒――。

 文字通り、寝食を忘れてゲームに没頭する。

 だけど、ゲームに夢中の時のカズは、おれの言いなりでもある。
 ただ、取扱いを間違えると痛い目にあう。

 ある時――。
 ふといたずら心を出して、口移しで水を飲ませようとしたら、「画面が見えねえ!」って頭突きされた。
 口に含んでた水はびっくりした拍子に飲みこんだからよかったものの、ゲーム機にこぼそうものなら、どんな仕打ちが待ってたか……。

 またある時――。
 ゲームを中断させて、おれん家のお風呂に入れてた時、どおしてもシタくなり、洗うふりしてカズをその気にさせようとやらしい触り方をして、カズのを勃たせ絶頂に導いた後、おれも気持ちよくしてもらうために後孔をほぐそうとしたら、「体力減るだろっ!」って殴られ、そのままバスルームを出ていかれた。
 おれのは、もうむくむくと育ってたから、しかたなく自分でサビシク処理した。
 「今日はもうさせてくんないだろうな」と思って、浴室を出たらどこにもカズの姿がなく、慌ててカズの家に行って合鍵を使ったら、ドアロックに阻まれて中には入れなかった。
 何をしても、反応さえしてもらえなかったから、しかたなくその日は帰った。

 次の日から、カズが自宅で籠城を始めた。
 いつもだったら、食事と睡眠は必ずおれが確保してたのだが、カズが籠城を始めてから、どちらも疎かにしていることは明らかだった。
 カズがゲームをクリアするのをひたすら待つ。

 やっと、クリアしたカズの体調は最悪だった。

 おれは学んだ――。
 たとえどんなにシタくても、カズがゲーム中毒になっているときはがまんする。
 そうしないと、カズがボロボロになってしまうから。