Side:N


 踊り終えて、周りを見る。
 さっきまで小馬鹿にしていたスタッフは、尊敬の眼差しでリーダーを見ている。

 オレは気持ちを切り替えて、仕上げに入る。

N「リーダー、リーダー。オレちゃんと踊れてたでしょ?」
O「おう、ばっちりだったぞ」
N「ホメテ、ホメテ」

 リーダーは、さっきオレがしたみたいに両手でオレの頭を撫でまわす。
 オレは、お返しに吠えた。

N「わんわんっっ!」
O「はは、くすぐってえよ」

 オレの髪が、リーダーの首筋をかすめるたびに、くすぐったそうにする。
 リーダー越しに、周囲を窺う。

N「おれもこうやって、リーダーに躾けてもらうんだよね」

 強烈な皮肉。
 及び腰になるスタッフ――。


N「オレたち、まだまだ未熟だから、躾けたり、躾けられたり、の繰り返しだね」

 タイミングを逸することなく、明るく話すオレに、彼らは安堵する。

N「みなさんも、ご指導のほど、よろしくお願いしますね」

 オレのお願いに、彼らはまんざらでもないような顔になる。


 だが、オレもばかじゃない。
 きっちり、釘はさす。


N「……ただ、ひとつ覚えていてほしいのは、メンバーの誰かに言ったことは、その誰かではなく、オレたち嵐に言ったのと同じってことなんですよ」

 笑顔は忘れず、にこやかに。
 だけど、声に若干のドスを加える。

 メンバーは大きく頷いた。
 スタッフたちは、気まずそうにしている。

 オレの本音は、どうやら響いてくれたらしい。