Side:A


 レギュラー番組の収録の合間、いつものように翔ちゃんが出前の注文をしてくれる。
 いやあ~、毎度のことながらありがたい。

 注文してから、十分と経たずに出前が来た。
 毎回、この速さには驚かされる。
 ホント、どうやって作ってるんだろうね。

 今日は、おれ、カレーそばにしたんだ。
 くぅぅ、カレーのにおいが食欲をそそるね。


S「ホントに、親子南蛮そば一つでよかったの?」
N「うん。だって、そんなにおなか減ってないから。ね、リーダー」
O「うん、一個でじゅうぶん」
S「なら、いいけど。……あ、ごめん。箸ふたつもらうの忘れた」
N「いいよ、いいよ、問題ないから」
O「うん、だいじょーぶ」

 どうやら、リーダーとニノは、1つのそばを2人で分けるらしい。
 うん、なんかあの2人らしいね。

A「いただきま~す」

 衣装にかかんないように、細心の注意を払ってそばをすする。
 ――おいしい。
 やっぱ、これにしてよかった。


 ぶほっ

 突然、横から変な音が聞こえてきた。
 音のした方を向くと、翔ちゃんがそばをふいていた。

A「……翔ちゃん、汚いよ。焦って食べすぎじゃない?」
S「ばっか、ちっげえよ。あれだよあれ!」

 翔ちゃんが指さした先は、リーダーとニノが仲良くそばを食べていた。
 特におかしいところはなさそうだけど……。


 その時、ニノが左手に持った箸で、そばを持ち上げ、結構な勢いで息を吹きかけ冷ました。
 ニノは猫舌ではないハズだから珍しい。

 しかし、そのまま食べると思っていたそばは、右隣にいるリーダーの口に入れられた。
 そして、間髪入れずに新たなそばを持ち上げ、ニノは自分の口の中に入れた。

 だが、数本の麺が同じだったため、リーダーとニノの口は、そばで繋がっていた。

 ふたりとも同時に息を吸い、どっちがそばを勝ち取るかで遊んでいる。
 ハッキリ言って、くだらない。

S「おい、お前ら!」

 あっ、翔ちゃんがキレた。
 リーダーたちのところへ近づく。

S「食べ物で遊ぶんじゃありません!しかも、俺の好きなそばで遊ぶとは何事!」

 クドクドとお説教が始まった。

 あ、ニノがリーダーになんか言った。

 翔ちゃんを見て、2人とも俯いた。
 ……けど、肩が震えてる。
 確実に笑ってるよね。


 あちゃ~、笑ってるのが翔ちゃんに見つかった。

 ん?いや違う。
 
 テーブルの下で、リーダーの左手とニノの右手がしっかりと繋がれているのを怒られている。

 あの2人、懲りないね。