間合を詰める際、送り足であれば、前足をさらに前に出し、後ろ足を引き付けます。そうしますと、足を進めた分、身体も前に移動します。

 

間合を詰める際、歩み足であれば、後ろ足を前に出して前足にし、前足だった足をその位置のまま後ろ足にする形となります。そうしますと身体はほとんど前進せずに間合を詰めた形になります。もちろん、基本の構えが前後の足幅が広いと身体も前進してしまいますが、構えが適正な足幅であれば、身体はほとんど動かなくて済みます(頭の上下動もない)。

 

この歩み足での間詰めは、相手から見ると間詰めされたことに気が付きにくいようです。打たれても、なぜ相手に打たれる間合いになってるのか分からないという感じでしょうか。

 

もちろん、歩み足でも二歩三歩と連続して詰めれば、身体の移動に気づくのですが、一歩だと気づきにくくなります。

 

送り足による間詰めだとグッグッという感じになり、相手との緊張感が高まって「来るぞ、来るぞ」「行くぞ、行くぞ」という感じになりますが、歩み足による間詰めはこっそり間を盗むので緊張感が高まらず、打たれた相手は「えっ?あれ?なんで?」という感じになります。

 

触刃の間や交刃の間から、歩み足で間詰めする人はほとんどいないので、歩み足による間詰めはうまく使えると有利に思います。

 

この歩み足による間詰めができるためには、右足前でも左足前でも色んな技が打てることが必須です。ですから、左足前でも自由に打てる人の特権ですね。

 

私は剣道形は、一つにはこれを教えていると思っています。打太刀は左足前で構えても結局右足前でないと打てませんが、仕太刀は右足前でも左足前でも打てる。これが大事ですよという教えを含んでいると考えています。

 

もちろん剣道形は、基本動作ですから、仕太刀は表から打つときは右足前、裏から打つときは左足前を表現してますが、実践の場面は様々に変化しますし、変化できないといけない。

私は剣道形から派生する動きも自然発生するように形稽古をとらえて身体操作の研究材料にしています。

 

ただし、歩み足にも欠点はあり、数センチ刻みでジリジリと間合を詰めていくことはできませんので、そうしたい場合は送り足も使います。私は真っすぐ入っていくことだけでなく左右斜めも多用しますので、さまざまな足さばきを駆使して間詰めしています。

 

という私も、簡単にできるようになったわけではありません。「そんなことしたら足を入れ替えてる瞬間が不利になりそう」という感覚が強く、歩み足を間詰めで使えるとは思ってなかったからです。

 

でも、左足前でも打てるように基本稽古を重ねていきますと、立合でも自然に左足前の技が打てるようになってきたところ、それをビデオで見返すと、歩み足で間詰めしている瞬間があり、「あ、こんなこともできるんや」と自分の映像が気づきになって、稽古でも積極的に使うようにすることによって無理なく使えるようになりました。(左右の足を入れ替えてる瞬間も、そのまま打ちに繋げられますので、もう足は打突動作に入っているようなものですから特段不利な瞬間を今は感じません)

 

特に子供たちとの稽古で元立ちする際に引き立て稽古をしながら、あれこれ試して身に着けていきました(子供たち、有難う!!)。

 

動きの習得というのも大事なんですが、子供のころから染みついた既成概念が動きを邪魔しますので、既成概念を捨て、既成概念以外のやり方もあるはずだと信じられるかどうかも重要な部分です。

 

「できるようになる」と信じることからしか「できる」は生まれないなあ、と感じています。

 

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