以前も書きましたが、体重計は何を計っているかというと、体重そのものではなく、体重を押し返す力を計っています。
体重があまりに重すぎると測定不能になるのは、その体重計が押し返せる力の限界を超えるからですね。
体重計に乗ってみると、静かに静止しておかないと計れません。
それは、体重と押し返す力(垂直抗力)がちょうど拮抗することでしか重さを計れないからですね。
体重計の上でスッとしゃがむと表示は一瞬軽い値になり、その一瞬後には体重より重い値になりますね。静止しないと表示が安定しません。
実は床や地面でも同じようなことが起こっているのです。
ここで面白いのは、床や地面も60kgの人が立てば60kgの力で押し返してくれ、100kgの人が立てば100kgで押し返してくれるということです。
言ってみれば、道場の木の床も、硬いコンクリートで固めた地面でも、体重計と同じようにバネのような働きをしているのです。
硬いコンクリートの上で立っても、コンクリートは一切形を変えていないように見えますが、実は極々わずかに体重によって凹んでいるのです。
凹みながらも、体重を押し返しているので立っていられるのですね。
もし、押し返してくれなければ、私たちはズブズブと地面の中に沈んでしまいます。
床の強度を超える重さのものが床の上に乗れば、床は割れてしまします。
重力と 垂直抗力が同じ力で釣り合うから静止できる。立っていられる。
さて、ここからが本題。
「体重計の上でスッとしゃがむと表示は一瞬軽い値になり、その一瞬後には体重より重い値になりますね」と書きましたが、「スッとしゃがむ」は「抜重」となり足裏と地面との摩擦が減りますし、「その一瞬後」は「加重」となり、体重以上の力で身体を押し返してくれるわけです。
私にとって、動作にこの物理現象を十分に利用することが、最も重要な稽古というわけです。
一般的には、後ろ足のつま先で、床を筋力で蹴って足を延ばして前に出る勢いをつけます。
筋力で生み出した力を床に伝えて、その力と同じ力で床が押し返してくれるのを利用して前に出ます。
そうしますと、ふくらはぎの筋肉がパンパンに発達している足になります。
私は筋力で生み出した力を床に伝えるのではなく、自分の重さの落下を床に伝えて、床から体重以上の力で押し返してくれる(垂直抗力)を利用して前後左右に動きます。
私のふくらはぎは細くて柔らかです。
足の裏の皮も比較的柔らかいです。
動作として、どちらの動作の方法の方が優秀かとか、どちらが剣道が強いかということを問題にしているのではありません。
ただ、物理法則に従った無理無駄のない動作を研究し、重力による落下と垂直抗力による反発を使いこなし、自分の筋力以上のパワーを得られる方法を模索する方が私は好きだということです。
身体にも優しいですから故障も少ないし、息も上がりにくいし、「えいっ!」とはやらなくて済むので相手には起こりが分かりにくくなり、相対的な速さ(相手が気づくのが遅れるという意味で「速い」といえる)も得られると感じているのです。
ですから、私にとって最も重要な稽古が日常動作である歩行と所作いうことになります。
「日々是剣道」とはそういうことだと私は解釈しています。
長くなるので今回は以上にしますが、垂直抗力から得られた力を竹刀の振りにどう繋げるかということも、また書きたいと思います。
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