びわ湖ホール・オペラへの招待、モーツァルト『劇場支配人』、レオンカヴァッロ『道化師』のダブルビルを観てきた。会場はびわ湖ホール中ホール。2026年1月26日と27日の2回の公演を観た。

配役表
福井敬さん客演の『道化師』は観てみたかったので、とりあえず、26日のチケットを買って見に行った。
で、『道化師』が良かったので、27日も観に行った。さすがに平日のマチネだからか、直前でもチケットは残っていた。
まずは、モーツァルトの『劇場支配人』。
演出家のプレトークによると、『フィガロの結婚』の作曲中に作曲されたドイツ語のジングシュピールだそう。前半はセリフのみで話が進み、後半に歌が4曲入る。
セリフの場面では、びわ湖ホールの改修の話を織り込んで話が進む。
音楽では、高音の入った装飾音のある曲が多くて、歌うのは結構大変だなと思った。さすがに高難度の場面では苦しそうだったが、セリフの場面を含め、芸達者な声楽アンサンブルの人たちの声と演技を楽しめた。
最後はセリフ役含めて全員で合唱したが、声楽アンサンブルだけあって、見事にそろって楽しかった。個々人が歌うより、アンサンブルで真価を発揮するような気がした。やっぱり合唱団なんだな。
キンボー・イシイさんの指揮は、駆け抜けることはないが、ダレることもなく、安心して聴けるモーツァルト。日本センチュリー交響楽団の管弦楽も瑕疵もなく美しい。
全体的には若い人の声を楽しむのに相応しい公演だった。
休憩後はレオンカヴァッロ『道化師』。こちらは大変すばらしいものだった。特に27日の公演は凄かった。
26日はネッダ役の船越亜弥さんがすばらしい。声量豊かで歌の表情もいい。演技も頑張っていた。
対するカニオ役の客演福井敬さんは、さすがの迫力だが、この人特有のこぶし?が付く歌が全開で、私としてはあまり楽しめなかった。「衣装を着けろ」は声を押さえて演技に振ったのかな。この人の歌としては少し不満。中ホールだし。
ペッペ役の福西仁さんは張りのある声で光っていた。トニオ役の西田昴平さんは声は出ているがちょっと単調かな。シルヴィオ役の大野光星さんもよかった。
びわ湖ホール声楽アンサンブルの合唱はもちろん演技もよい。
一方、27日はネッダ役の山岸裕梨さん、カニオ役の谷口耕平さん、トニオ役の市川敏雅さんの3役が大変素晴らしくて、最高のオペラになった。
山岸さんは細い体からあんなに美しく豊潤な声が出るのかと驚かされるし、演技も細部まで整っていた。
谷口さんは、強く美しい声で演技もすばらしく、「衣装を着けろ」は迫力満点に歌い上げて心が揺り動かされた。
市川さんは最初の口上からこれは!と思わせる声で、最後まで声量があり表情豊かな声で魅了してくれた。演技も役の雰囲気を十分に出していたと思う。
これだけの歌が聴けて、演技もよいとくれば、オペラが盛り上がらないわけがない。
さらに、指揮と管弦楽が凄い。キンボー・イシイさんの指揮は、最後に向かって壊れていくような緊張感があって、ぞくぞくした。管弦楽もそれにしっかり音をつけて大変良かった。
ただ、中ホールでピットが狭いせいか弦が少なく、もっと厚い弦で聴きたかったかな。
演出は、装置は2演目共通で、中央に大きな舞台があって、『道化師』ではそこで劇中劇が繰り広げられる。舞台横に小道具が置かれ、『劇場支配人』では上手に支配人のディスク、『道化師』では下手に楽屋が設置される。「衣装を着けろ」は楽屋で歌われる。背景に複数の額縁があり、そこに舞台に合わせた映像が投影されて、雰囲気を作る。全体的にしっかり作りこまれていて、見た目は悪くなかったと思う。
『劇場支配人』はオペラへの招待らしい瑞々しい公演、一方、『道化師』は、特に27日の公演は、歌手と指揮・管弦楽がそろって、この悲劇の世界の奥深くまで連れて行ってくれた。正直、ここまでの舞台を楽しめるとは思ってなかった。やっぱり、実演を聴いてみないと分からないね。
びわ湖ホールの「オペラへの招待」は、びわ湖ホール声楽アンサンブルとそのOB、OGの声を楽しむ初心者向けのオペラという位置づけだと思うが、声のポテンシャルは思いのほか高い。オペラへの招待の公演はしっかりチェックしておかないいけないと思った公演だった。


