kinuzabuの日々・・・

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      徒然なるままに日々のこと、考えていることを書き連ねる

京都市交響楽団第693回定期演奏会に行ってきた。会場は京都コンサートホール、2024年9月21日。



指揮者は阪哲朗

曲目は
ドヴォルザーク:交響曲第8番
ブラームス:ハンガリー舞曲集から第1番、第4番、第5番、第6番、第7番、第10番
ドヴォルザーク:チェコ組曲

阪さんが京響定期を振るのはコロナの最中の時以来だそう。あの時のヴィヴァルディ『四季』はがっしりした演奏で、とてもバロックとは思えず、迫力満点だった。

今回は、スラブ系の音楽で固め、本来なら後半になりそうなドヴォルザークの第8交響曲を持ってくるなんて、どんな演奏になるのか、期待大。


さて、前半、ドヴォルザークの交響曲第8番。

若干重めな感じがする。特に弦。第3楽章の弦の音の激しさはすごかった。この曲の流麗さはもちろんあるが、がっつりと音楽を作りこんだ印象。京響はしっかりと指揮についてきて、素晴らしい管弦楽を披露してくれた。


後半はまずはブラームスのハンガリー舞曲集。

これが、舞曲とはとても思えない重く太い音楽に、がっちりとした構築感。まるでブルックナーの交響曲を聴いているかのようで、目と耳がオケに釘付け。おかげで前半の音楽が吹っ飛んでしまった。

6曲すべての舞曲がこれなので、もう圧倒されて言葉が出ない。

京響もその実力をいかんなく発揮。指揮と一体となって力強い音楽を作っていた。ブラボー!


後半2曲目は、ドヴォルザークのチェコ組曲

これまでと打って変わって、流麗で、素朴な雰囲気でまさにスラブ系の音楽。とはいえしっかりした構築感につつまれて、管弦楽を聴く醍醐味も十分。京響も美しい。


最後にアンコールあり。ブラームスのハンガリー舞曲第21番。これは普通の演奏だったかな。


今回の演奏会は、スラブ系の音楽ということだったが、曲ごとに雰囲気が大きく違って、指揮の阪さんの凄い実力がいかんなく発揮された音楽会だった。ドヴォルザークの交響曲第8番を前半に持ってきたのも納得。何といっても、ブラームスのハンガリー舞曲集に圧倒された音楽会だった。

こんなとんでもない演奏会に当たるから京響を聴くのがやめられない。






 

8月30日、この旅行最後の夜はオッフェンバックの歌劇『ホフマン物語』。会場は祝祭大劇場。




 

残念ながらホフマン役のバンジャマン・ベルナイムが直前でキャンセル。LÉO VERMOT-DESROCHESが歌った。この歌手は、大きな劇場で大役を歌った経験がないようで、ちょっと心配。
 

 

とはいえ、指揮のマルク・ミンコフスキはオッフェンバックのたくさんのオペレッタを指揮しているので、『ホフマン物語』もお手の物だろう。主役は残念だが、指揮はとても楽しみだった。


演出は、第2幕から第4幕までの話を、実際の恋の経験ではなく、映画の撮影現場に置き換えたものだった。

 

各幕とも映画?の撮影現場で、第1幕ではまずうらびれた壁が現れ、浮浪者のようなホフマンが出てくる。そのあとに撮影現場の食堂が合唱とともに現れる。第2幕から第4幕まではバックヤードの暗い雰囲気の装置から、一転して映画撮影現場の明るい雰囲気に変わる。第5幕は第1幕から連続しているというより、同じ場面、うらびれた壁、浮浪者のホフマン、撮影現場の食堂、が繰り返されて始まる。

 

そう、第1幕と第5幕は同じ演出で始まる。

 

第1幕から続く物語は、ホフマンはおそらく映画のプロデューサーで、オランピア、アントニア、ジュリエッタの映画で失敗し浮浪者となった。そういう過去を舞台に提示しているのだろう。

 

第5幕から続く物語は、最後は、ホフマンをミューズが奮い立たせて文筆家としての活躍を後押しする姿が提示される。

 

第1幕からは過去の後悔、第5幕では未来の希望。過去の後悔より未来の希望を考えることが重要ということがこの演出の趣旨なのかなと思った。

 

まあ、その場で考えたことではなく、感想を書きながら考えたものだけどね。違ったらごめんなさい。



歌手は、女性4役を歌ったKathryn Lewekが最高。オランピアの高度のコロラトゥーラもアントニアの深く重い声もジュリエッタの甘い声(コロラトゥーラまで出てくる)もしっかり歌う。演技もよくて、3役とも雰囲気が違っていた。同一歌手の3役とはとても思えない。第5幕の四重唱で出てくるステルラはよくわからなかったけど、全体的にとても素晴らしい。

それにしても、オランピアで白いブラウスに赤いチェックのミニスカの衣装って、ちょっとかわいそうかなと思った。

悪魔4役を歌ったクリスティアン・ヴァン・ホーンは声は出ていたがもう少し悪役らしい歌が欲しい。ミューズ役のKate Lindseyは終始美しく強い声と容姿で魅了してくれた。

ホフマン役のLÉO君はしっかりした歌を歌っていたが、何分周りの歌手が良すぎて声量で埋没した感じがした。声を張り上げて存在感をアピールする場面もあったが、最後は声が出なくなった。突然、これだけの大劇場で名歌手相手に主役を張ることになったのだから、可愛そうだとは思う。いいものは持っていると思うので、無理せずしっかり育ってほしい。これからに期待。


ミンコフスキの指揮はテンポよくこの曲の良さを存分に引き出し、オケをあおって、ウィーンフィルも存分に応える。大変すばらしい指揮と管弦楽だった。これには大変満足した。合唱もすばらしかった。このオペラで合唱が良くないと魅力が半減するよね。


ところで『ホフマン物語』には版の問題があって、今回は最新の研究結果を使って演奏するという話を聞いた。プロローグは第1幕、エピローグは第5幕。これまで聴いたものより第4幕、第5幕で大きな変更があったように思った。

ミンコフスキの指揮、ウィーンフィルの管弦楽、ヒロイン4役を歌ったLewekに酔った一夜だった。これで主役が良ければ最高だったのだが。こればかりは仕方がないな。次があれば是非ともベルナイムで聴きたい。








 

29日はオペラではなく、ウィーンフィルの演奏会。会場は祝祭大劇場。

 

この日はパンフ買ってないので、会場の客席の写真を。

 

指揮は、ヤニク・ネゼ=セガン
ピアノ独奏は、ダニール・トリフォノフ

曲目は
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番
ベルリオーズ:幻想交響曲


前半はベートーヴェン。

トリフォノフの指が動いて音が出た瞬間にビビッと来た。凄く美しい音。このピアノとウィーンフィルの演奏のなんと美しいことか。トリフォノフは弱音もいいが強音もすばらしい。リズム感も最高。ベートーヴェンが苦手な私でも楽しく聴けた。

ネゼ=セガンの指揮も、丁々発止でピアノ協奏曲ならではの楽しい演奏だった。ウィーンフィル?最高に決まっている。

ピアノのアンコールがあった。



後半は幻想交響曲。

ネゼ=セガンの指揮は、オケをあおって音をこれでもかと出させるもので、爽快で楽しいものだった。真摯な第1楽章、滑らかな第2楽章、静かな第3楽章、豪快な第4楽章、激しい第5楽章、どれもよかった。

でも迫力はすごくても、迫力で押す感じがして、弱音の美しさや、弱音と強音の対比がもう一つ感じられなかった。せっかくのウィーンフィルなのに、もったいない。でもウィーンフィルの弦が音が沸き上がるようで、大変美しいのは言うまでもない。


多分、ネゼ=セガンの指揮を実演で聴くのは初めてだが、派手に鳴らして聴衆受けは良さそう。だがもう少し、弱音を使いこなせばもっと良い指揮者になれるのかもと思った。

 

何はともあれ、ウィーンフィルの美しさを存分に味わえた。聴けて良かった演奏会だった。