ハネムーンは、あの頃やや定番だったアメリカ西海岸とハワイに行った。ハワイは仕事で何度か行ったが、アメリカ西海岸は初めてだったので嬉しかった。

出国の前日は都内に宿泊した。旦那は腹の調子が悪いらしく浮かない顔だった。きっと式の緊張からのストレスだろう。

翌朝になっても腹痛と下痢が収まらず、フロントに当番医を聞いて地図を見ながら歩いて医者を探した。程なくして看板が見えた。「○○クリニック肛門科」。

思わず吹き出した。「ピッタリじゃん!」

旅行を止められるかもしれないと覚悟をしたがそれには及ばず、丸一日絶食をするように言われ、薬を貰ってホテルに戻った。

チェックアウトを済ませ空港に向かい、私は軽くサンドイッチを食べたが、絶食開始の旦那は温かいお茶を飲んでいた。

旦那はかつて、機内食が楽しみの一つと言っていた。その機内食2回を全て放棄しなければいけない旦那の心情を思うと可哀想に思ったが、機内食が楽しみなのは私も同じであった。「ごめんね。ごめんね。」と言いながら全て平らげた。

医者の言った通り、薬も効いたのかサンフランシスコに着く頃はすっかり腹の調子が良くなった旦那は、空腹ではあったが気分良く米国の地に降り立った。


7日間の旅行は、最後のハワイで生理が始まり海に入れなくなったこと以外はそれなりに楽しく過ぎていった。


無事にハネムーンから帰り、職場や親戚への挨拶回りも済ませた頃、私は新鮮な気持ちだった。

苗字も変わり、新しい人生が始まるんだという少しワクワクした気持ちでもあった。

姑夫婦も明るい笑顔で、私に気を使っていろいろと話題を変えて話してくれ、和やかな雰囲気の日々だった。この頃までは…