こんにちは。

 

先日ハゼの捕獲と共に実施した江戸川放水路の干潟土壌の放射性核種の測定結果が出ました。

 

 測定結果をご連絡する前に、私達R.I.Laが仮説として想定している東京湾奥の海底土壌の状況について説明したいと思います。私達が想定している東京湾奥の状況は次の通りです。

 この仮説は海底土壌の汚染の状況の割にはその場所に生息する魚介類への放射性核種の移行が少ないこと、干潟の土壌を掘り下げると必ずと言ってよいほど嫌気性のヘドロの層に到達すること。河口付近の海底にはその表面に必ず流砂が存在すること。夏場に北風が吹くと起こる青潮は、流砂を浚渫をしている航路の周辺から起こることなどから推測されるものです。

 

■仮説1

東京湾奥の大規模河川河口域における放射性核種、特に放射性セシウムによる汚染に関しては、生体の生息する溶存酸素を含む流砂の層には放射性セシウムは定着しておらず、その下に堆積する嫌気性のゼオライトを含む汚泥の層(ヘドロ)に放射性セシウムは堆積しているのではないか?

■上記より導きだされる仮説2

仮説1より、東京湾奥の生息する魚介類は直接放射性セシウムにより汚染される機会が少ない状況で生息しており、その結果海底土壌が放射性核種により汚染が進んでいても、魚介類に放射性核種が接触することが少ない状況となっているのではないか? また浚渫作業などによって流砂が除去された箇所については、海底付近は貧酸素状態になっており、魚介類が生息できない環境となっているのではないか?

■上記より導き出される仮説3

更に放射性核種を定着させているゼオライトを含む汚泥の層には、嫌気性菌である光合成細菌などが大量に発生しており、放射性セシウムはこれら光合成細菌などの細菌類により、カリウムとの錯誤により菌類の体内に取り込まれることで、好気性の流砂の層に再度流出することが防がれているのではないか?

 

というものです。

実際には河口の海底の土壌については、採取することがかなり難しいので、

河口の海底に近いと思われる通常の潮回りでは水面下にあり、場所も河口付近に存在する干潟の土壌を調査して、本当に上記仮説の様に表土よりもその下に存在する嫌気性のヘドロの部分の方が放射性セシウムの含有量が多くでるのがどうかまず見てみたい、

ということで、今季より本格的な調査の前のフィジビリティ・スタディとして、

比較的簡単に上陸することが可能な干潟から、まず土壌を採取してみよう、ということになりました。

 

まず多摩川の河口干潟です。

場所は六郷橋の下流の川崎市側。

広大な干潟が広がっており、その多くは葦が群生しています。

今回はこの葦の間の土壌を採取したのですが、これがちょっと予想と異なりました。

深く掘り進んでみても、嫌気性のヘドロにたどり着かないのです。
おそらくは葦の群生により、ヘドロが浄化されてしまったか。

まずは、標準化した深度の表土と表土から15cmの深さで土壌を採取しました。

 

次に江戸川放水路です。

江戸川放水路は一見川の様ですが、まったくの塩水の水路です。
通常は淡水は全く流入してきません。

従って潮の満ち引きに忠実に干潟が現れます。

丁度この橋の下の部分。

この写真は満潮時のものです。干潮時にはセンターの杭の下の部分まで潮が引きます。

今回は多摩川河口と同様に表土と表土から15cmの深度で土壌を採取しました。

こちらの干潟では、15cmの深度でもかなり嫌気性に近い状況が見られました。

所謂ドブのにおいというか、ヘドロ臭がかなり強い土壌が出てきました。

 

測定結果です。

多摩川河口干潟が、表土がCs137が8.1Bq/kg、深度15cmが9.1Bq/kg、

Cs134は共に不検出。

江戸川放水路干潟が、表土でCs137で4.6Bq/kg、深度15cmで15Bq/kg、

Cs134が表土が不検出で、深度15cmは2.4Bq/kg。

 

どちらも仮説通りの結果となりました。

そしてやはり嫌気性のヘドロ部分が多く含まれるほど、放射性セシウムの量が多くなるという結果がでました。

 

但しまだまだ予備調査の段階。測定箇所もたった二か所ですし、

この先他の干潟や同じ干潟でもより河口に近い場所、更には沖合に存在する干潟ではどのような数値になるか測定を重ねてみないとわかりませんね。

でも、検体を採取していると、なんとなく状況が推測できるものです。
今の状況だと、仮説が正しい感じがしています。
 

今月中には、江戸川放水路の沖合に位置する三番瀬干潟にボートで上陸をする予定でいます。

こちらはまず操船のトレーニング。干潟にボートで近づくのは実は非常に危険な行為なのです。常に座礁と乗り上げ事故と背中合わせの操船になります。

更にこの時期は、干潟の周りには海苔ひびが立始めます。先日も富津の岬付近で乗り上げ事故があったとマリーナで注意喚起がありました。
まずは慎重に。安全第一で。