”なぜ電通は社員を個人事業主にしたいのか?” | よくいうかいえ ( Cahier)

よくいうかいえ ( Cahier)

古布リメイク作家のつれづれ日記

今日も三橋貴明氏のブログで政治・経済を学びます。

 

なぜ電通は社員を個人事業主にしたいのか?

消費税中間納付の時期ですが、経営者の皆さん、払えていますかっ!(挨拶)


 やっと、本件を取り上げることができるのですが、消費税の「節税方法」をご紹介いたしましょう。(※違法ではありません)
 

 消費税は実際には「消費への税」ではなく、付加価値税です。
 

 消費税の金額は、課税対象の「売上」に消費税率を掛け、その金額から課税対象の「仕入れ(売上原価)」の税額分を控除して決定されます。
 式にすると、
◆課税売上x消費税率-課税仕入x消費税率=納税額
 となります。つまりは、
◆(課税売上-課税仕入)x消費税率=納税額
 です。売上や仕入れが全て課税対象と仮定すると、
◆(売上-仕入)x消費税率=付加価値(※粗利益)x消費税率=納税額
 になります。だからこそ、わたくしは(大雑把に)「消費税額は粗利益x税率」と説明しているのです。


 最後の式から、課税対象の「仕入れ」が多い場合、消費税が減ることが分かります。つまりは、消費税増税は企業に「課税仕入を膨らませたい」というインセンティブを与えてしまうのです。


 現在の税制では、正規社員の給与は「課税仕入」には入りません。ところが、派遣社員の派遣料や、フリーランス(個人事業主)に支払う業務委託料(外注費)は「課税仕入」に含めることが可能な仕組みになっているのです。結果的に、企業に正規社員の派遣社員化、フリーランス化のインセンティブが働きます。


 というわけで、企業が「人手は必要だが、消費税額は減らしたい」と考えた場合、
「ピコーンッ!ひらめいたっ! 正規社員を個人事業主にして、業務委託契約で働いてもらえばいいんだ!」
 と、なるわけです。


 年収500万円の社員を「独立」させ、個人事業主とし、業務委託契約にすれば、それまでの「人件費500万円」が課税仕入に入るため、粗利が減り、消費税を節税できます。
 

 さらには、個人事業主に対しては、企業は社会保険を負担する必要がありません。消費税を減らし、保険料負担が無くなり、一粒で二度美味しい!


 ちなみに、個人事業主となり、企業との業務委託契約で働く「元従業員」は免税業者(売上1000万円以下)であるため、消費税を支払っていません。つまりは、全体として普通に「節税」できています。


 ここからは、怖い話。

 

 会社から、
「新しい働き方だよ!」
「創造性を発揮し、懸命に働けばいくらでも稼げるよ」
 といった「あま~い話」をささやかれている人は、真剣に読みましょう。

 
 まずは、「正規社員の個人事業主化」は、いわゆるジョブ型雇用の一種と認識できます。すなわち、貴方が会社に提供している業務(仕事)の必要性が無くなれば、普通に契約打ち切りになります。

 
 これが、正規社員の場合はなかなか解雇できませんし、業務が無くなった場合は「配置転換」することになり、雇用は守られます。それに対し、個人事業主に対して業務委託契約を「更新しない」のは簡単です。配置転換などと面倒なことを考えずとも、すぐに費用を削減できます。


 さらに、こちらの方が怖いのですが、2023年にインボイス制が採用される予定になっています。細かい話は省きますが、インボイス制になると、売上1000万円以下の個人事業主も消費税を支払う必要に迫られます。
 

 となると、業務委託契約をしている会社に消費税分を上乗せし、(元々の年収が500万円なら)550万円で請求する必要が生じます。
「は? 何言ってんの? 10%も値上げって、正気? 契約切るよ」
 と、言われると、消費税分を「自分で飲む」ことにならざるを得ません。年収の10%近くが吹き飛びます。

 

『電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう


 電通は一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を始める。まずは2021年1月から全体の3%に相当する約230人を切り替える。電通では副業を禁止しているが、新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になる。他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう考えだ。(後略)』

 うんっ! こんなデフレが深刻化した国で、「新規事業の創出」なんて、スティーブ・ジョブスでも不可能だから。


 電通は、単に消費税節税や元・社員の社会保険料節約で利益を拡大したいだけです。さらには、「業務委託契約打ち切り」で、いざというときにはすぐに切れる。


 悪いけど、高々「他社での仕事を通じて得られたアイデア」程度で事業を起こせるほど、デフレ日本は甘くないから。というか、日本がデフレから脱却し、市場が拡大している時期ならば、別に社員として他社なり他産業のことを勉強し、「我が社」のために事業を起こすことは可能です。


 デフレでは、不可能。絶対に、やめなさい。市場が縮小している時期に「独立して、創業を目指す」など、狂気の沙汰でございます。


 繰り返しますが、電通は「利益捻出」と「いざというときに切れる労働力」を求めているだけです。


 それでもどうしても外に出たいというならば、業務委託契約の際に「消費税分」を上乗せした金額で契約しなさい。そうしなければ、2023年に首くくる羽目になるよ。(高めの金額で契約したところで、会社から「契約打ち切り」と言われれば、それまでなんですけどね。)

 

 でも、まあ、こんなことやっていると、企業から「人材」という最も重要な供給能力が消滅し、コア・コンピタンス(中核能力)は落ちていく一方なんですけどね(というか、落ちてきた)。
 

 などなど、「なぜ電通は社員を個人事業主にしたいのか?」についてお話ししてきましたが、いかがでした?


 消費税は、日本の雇用環境を明らかに「悪化」させる税制なのです。だからこそ、悪魔の税制と呼んでいるわけであり、日本国の繁栄を望むならば、消費税は「廃止」一択なのですよ。